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2025.08.01
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トランプ関税が翻弄も、足下のメキシコ景気はプラス成長で推移
~輸出の駆け込みが景気を下支えも不透明要因山積、メキシコペソの行方にも慎重な見方が必要に~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ経済は、輸出の8割を米国向けが占めるなか、トランプ米政権の経済政策に翻弄されている。米国はメキシコに対して追加関税の発動と延期を繰り返すとともに、メキシコとの協議を進めている。現状はUSMCAに準拠した品目は追加関税の対象外であり、追加関税の発動も延期されている。結果、足下では輸出の「駆け込み」も追い風に4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+2.72%とプラス成長で推移している。ただし、来年のUSMCA再協議の行方次第では関税の対象が広がるリスクがあり、不透明感は強い。金融市場では、米ドル安や実質金利のプラス幅の大きさも追い風にメキシコペソ相場は底堅く推移するが、先行きについては不透明要因が山積するなかで慎重な見方が求められることになろう。
メキシコ経済を巡っては、トランプ米政権による関税政策に翻弄される状況が続いている。米国は、安全保障上の脅威への対応や貿易赤字の縮小を目的に、関税政策を駆使して相手国との個別協議による『ディール(取引)』を仕掛けている。メキシコは米国にとって2番目に貿易赤字が大きく(地域としてはEU(欧州連合)が2番目)、トランプ氏は就任直後の2月に同国からのすべての輸入品に25%の追加関税を課す大統領令を発令するも、直後に両首脳による電話協議を経て発動は延期された。一方、4月には自動車や自動車部品、鉄鋼製品、アルミ製品に対する追加関税を発動した上で、すべての国に一律10%、一部の国や地域に非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。相互関税は上乗せ分も含め一旦発動されるも、直後に上乗せ分は90日間延期されるとともに各国との個別協議が行われたほか、メキシコについては上述した追加関税を巡って協議が進められた。その結果、メキシコからの輸入品についてUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠した財に対する関税は対象外とされる一方、個別の財への追加関税は課されている。そして、米国は先月、同国への追加関税を25%から30%に引き上げ、本日(8月1日)付で発動させる旨の書簡を送付して協議が進められた。なお、発動期限の直前に米国はメキシコとの新協定締結に向けて追加関税の発動を90日間延期することで合意し、最長で10月末まで現行の枠組みの下で米国への輸出が可能となる。メキシコにとって米国向けは輸出全体の8割を占める上、名目GDP比で3割弱に達するため、関税が大幅に引き上げられれば実体経済への悪影響が必至である。よって、足下においては最悪の事態を回避できている。
こうした状況を反映して、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+2.72%と2四半期連続のプラス成長で推移しており、前期(同+0.82%)から伸びが加速するなど底堅い動きが確認されている。分野ごとの生産動向は、農林漁業など第1次産業の生産が下振れしたものの、トランプ関税を巡って最悪の状況が回避されていることによる対米輸出の『駆け込み』を反映して製造業など第2次産業の生産が拡大しており、サービス業など第3次産業も生産が拡大して景気を押し上げている。なお、上述したようにメキシコと米国の協議が継続的に行われているものの、その行方については依然として不透明なところが少なくない。しかし、最長で90日間にわたって追加関税の発動が延期されていることを勘案すれば、その期間中に当たる7-9月も対米輸出に駆け込みの動きが続き、景気を下支えすることが見込まれる。よって、当面の景気については米国経済が堅調さを維持することが前提ではあるものの、大きく下振れする状況は見込みにくいと捉えられる。その一方、現状においてはUSMCAに準拠した財は関税の対象外とされているものの、来年にはUSMCAの再協議が予定されており、その行方によっては関税の対象が大幅に広がる可能性はくすぶる。年末にかけては再交渉を前にUSMCAに準拠した財の輸出に駆け込みが出る可能性がある一方、その後に反動が出ることも考えられるなど、来年以降の同国経済は不透明要因が山積する。よって、引き続きトランプ氏の一挙一動に揺さぶられる展開となることは避けられないであろう。

なお、金融市場においてはトランプ米政権の政策運営を巡る不透明感、FRB(連邦準備制度理事会)の人事介入による金融政策の独立性への懸念を受けて、米ドル安が進む動きがみられる。その一方、足下のメキシコ経済はプラス成長が続くも勢いを欠く推移をみせているほか、足下の実質金利(政策金利-インフレ率)は以前に比べてプラス幅は縮小するも、依然として4%弱と高水準で推移しており、投資妙味は比較的高い状況にある。こうしたなか、金融市場においてはトランプ氏を巡る『TACO(腰砕け)』を期待する向きも影響して、メキシコ経済が最悪な状況を回避することが可能との期待も重なり、通貨ペソの対ドル相場は底堅い動きをみせている。しかし、実体経済を巡る不透明感の高さを勘案すれば、先行きの行方については見通しにくい展開が見込まれる。その一方、日本円に対しては米ドル/円相場の行方に左右される動きが続くであろう。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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