米国 通商合意、利下げが年後半の景気を下支え (25年1QGDP3次推計、予測)

~個人消費は急減速したが、暴風雪による一時的な動き~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年1-3月期の実質GDP成長率(3次推計)は、前期比年率▲0.5%と2次推計の同▲0.2%(1次推計同▲0.3%)から下方改定された。個人消費、住宅投資が下方改定されており、2次推計値よりも経済の実態は減速していたことが示された。設備投資が同+10.3%(2次推計同+10.3%、1次推計同+9.8%)と変わらずとなった一方、個人消費が同+0.5%(同+1.2%、同+1.8%)と下方修正された。基礎データの入手に時間のかかるサービス消費が大幅に下方改定された。また、住宅投資は、同▲1.3%(同▲0.6%、同+1.3%)と下方修正された。

  • 1-3月期の実質GDP成長率(3次推計)は、前期比年率▲0.5%(10-12月期同+2.4%)と22年1-3月期の同▲1.0%以降で初めてマイナス成長となった。もっとも、1-3月期のマイナス成長は、関税賦課前の駆け込みによる輸入の急増や、暴風雪による個人消費、住宅投資の下振れの影響で一時的な動きであり、米経済が急激に悪化したわけではない。

  • 1-3月期の個人消費は、同+0.5%(10-12月期同+4.0%)と1月の暴風雪による縮小や、昨年末に販促等によって高い伸びとなった影響で減速した。自動車などの耐久財が減少に転じた他、非耐久財、サービスが鈍化した。また、住宅投資は、悪天候や建設業者のマインドの悪化等によって同▲1.3%(同+5.5%)と減少に転じた。一方、設備投資は、情報化投資の拡大や民間航空機メーカーなどのストライキ終了による押上げで、前期比年率+10.3%(同▲2.9%)と増加に転じた。建設投資が同▲2.4%(同+2.9%)と減少に転じた一方、増産投資が同+4.7%(同▲1.0%)、情報化投資が同+38.9%(同▲1.8%)、輸送機器投資が同+6.8%(同▲17.2%)、知的財産投資が同+6.0%(同▲0.5%)と増加に転じた。以上より、民間国内最終需要は、一時的な要因もあり同+1.9%(同+2.9%)と減速した。実質国内最終需要は、政府支出が連邦政府の民間企業への発注の見送りなどの支出削減を背景に同▲0.7%(同+3.1%)と失速したことで、同+1.5%(同+3.0%)と減速幅が大きくなった。このような中、関税賦課に備えた在庫積み増しによって、在庫投資のGDP寄与が同+2.59%(同▲0.84%)とプラスとなったものの、関税賦課前の駆け込みによる輸入の急増を背景に、純輸出のGDP寄与が、同▲4.61%(同+0.26%)と大幅なマイナスとなったため、実質GDP成長率は同▲0.5%(同+2.4%)と失速した。

  • 今後の米国経済に関して、4-6期に不確実性の高まりで設備投資は鈍化すると予想される。一方、輸入はトランプ関税発動前の急増の反動によって減少に転じ、GDPを押し上げると見込まれる。また、個人消費は、価格上昇の影響を受け減速するものの、3月に高い伸びとなったことで、4-6月期に+2%台半ば程度に加速すると予想される。このため、4-6月期の実質GDPは前期比でプラス成長になると見込まれる。

  • 年後半には、通商合意による不確実性の弱まりを背景に、設備投資の緩やかな拡大が予想される。また、個人消費は、株や不動産などの資産残高の増加、借入コストの低下にもかかわらず、雇用・所得の伸び鈍化、価格上昇等を背景に伸びが抑制され、米経済は潜在成長率を下回る成長に減速する公算が大きい。

  • この間の金融政策について、パウエルFRB議長は、「夏の間に多くのことが明らかになる」との見方を示し、「今後数ヶ月でどの程度影響が出るかを見極め、それが私たちの考え方に影響を与える」と今後数カ月で不確実性が低下するとFRBは想定している。実際、米国と主要な貿易相手国との通商交渉は、夏の間に進展する可能性が高く、インフレへの影響が想定の範囲内となるような合意であれば、FRBは、景気減速や労働市場の軟化が続くもとで、不確実性の弱まりを背景に、9、12月にそれぞれ25bpの利下げを実施すると見込まれる。ただし、早期に景気が大幅に減速したり、労働市場が急激に軟化したりすれば、7月に利下げを前倒しし、利下げ幅も拡大することで、米景気後退の回避を目指すと見込まれる。

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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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