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2025.05.01
アジア経済
韓国経済
韓国大統領選へ残り1ヶ月、与野党ともに候補者に大きな動き
~世論調査で独走中の李氏に不透明要因浮上、与党も保守勢力再結集へ候補者統一の動き~
西濵 徹
- 要旨
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- 韓国では、憲法裁が尹錫悦前大統領を罷免し、次期大統領選に向けた動きが活発化している。来月3日に投開票予定の次期大統領選に向けては、最大野党・共に民主党の李在明氏が立候補を表明し、世論調査で優位に立っている。しかし、過去の公選法違反を巡る裁判を巡って、控訴審で一旦無罪判決を受けるも、最高裁が差し戻しを決定するなど、出馬資格に不透明感が出ている。仮に有罪となれば公民権停止となる。
- 一方、与党・国民の力では尹氏の弾劾の是非を巡る党内分裂で候補者選びが難航してきた。今月3日の予備選の決選投票に向け、金文洙氏と韓東勲氏の2名に絞られたが、両者ともに支持率では李氏に及ばない。こうしたなか、韓悳洙首相が出馬のため辞任しており、与党内で候補の一本化が模索されている。
- 尹氏が非常戒厳に動いた背景には、政権と国会の「ねじれ」による政治混乱が影響していた。大統領選を1ヶ月後に控え、李氏の出馬資格への疑念や与党の候補者調整など大きな動きが出ており、今後の選挙情勢は混戦の様相を強める可能性が高まっている。
韓国では4月、憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領に対する弾劾訴追に対して罷免を妥当とする判断を下し、尹氏は即日失職した(注 )。この決定を受け、次期大統領選に向けた動きが大きく前進するとともに、投開票日が来月3日に決定した。その後、世論調査において一貫して首位を走る展開をみせてきた最大野党・共に民主党前代表の李在明(イ・ジェミョン)氏が立候補を表明した。李氏は共に民主党の代表を辞任することで『中道路線』をアピールし、直近の世論調査においてもトップを走るなど優位に選挙戦を進めてきた。
李氏を巡っては、2022年に実施された前回大統領選において、城南市長時代の土地開発事業に関する不正疑惑に対して虚偽申告を行ったとして公職選挙法違反で起訴され、昨年の一審判決では懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けたため、次期大統領選出馬に向けた『ハードル』になるとみられた。しかし、ソウル高裁は3月末の控訴審判決において、一審判決を破棄した上で無罪判決を下したため、一転して李氏の次期大統領選への出馬に向けた道が大きく拓かれた。その後、検察が控訴審判決を不服として上告した結果、最高裁は1日に二審の無罪判決を破棄した上で、審理を高裁に差し戻す判断を下した。なお、最高裁は審理期間を設けず、通常は差し戻し審の審理に数ヶ月を要することを勘案すれば、約1ヶ月後に控える次期大統領選前に結論が出されるかは不透明である。また、李氏自身は本件以外にも多数の刑事裁判を抱えているが、大統領選への立候補資格を巡っては公職選挙法違反で実刑判決、ないし、100万ウォン以上の罰金刑が確定すれば少なくとも5年間は公民権が停止されるため、その行方に注目が集まっている。他方、李氏への支持率は、上述の無罪判決を受けて上昇したことを勘案すれば、一転して有罪判決を受ける可能性が出たことは、支持率の行方に影響を与えることが見込まれる。
他方、与党・国民の力では、尹氏に対する弾劾の是非を巡って党内が分裂したことも影響して、当初は多数の立候補予定者が乱立するなど、党内政局の混乱が露呈する動きがみられた。その後は党内で党員投票や世論調査などを元にした予備選が行われ、今月3日に実施予定の決選投票に向けて弾劾に反対した前雇用労働相の金文洙(キム・ムンス)氏と、弾劾に賛成した前代表の韓東勲(ハン・ドンフン)氏の2名に絞り込まれた。しかし、世論調査においては両者ともに支持率で李氏に大きく水をあけられており、仮にどちらが候補者となった場合においても『勝ち目は極めて薄い』状況にある。こうしたなか、大統領代行の韓悳洙(ハン・ドクス)首相の出馬が取り沙汰されるとともに、同党内では仮に韓氏が出馬意向を示せば与党候補との一本化を模索する動きが出ていた。この背景には、韓氏の元で米トランプ政権との貿易協議が進められるとともに、米韓双方から協議の進展が示唆されるなど一定の成果を挙げるとの期待が高まっていることも影響している。韓氏は元々外交官であり、米国留学経験がある上、韓米FTA(自由貿易協定)の交渉を担当した経緯があり、そうした点でも米トランプ政権との協議が比較的早く進む一因になっているとされる。そして、1日に韓氏は次期大統領選への立候補を念頭に首相を辞任したことを明らかにしており、仮に与党候補の一本化が図られれば、尹氏への弾劾を巡って分裂状態が続く保守勢力の再結集に向けた動きが本格化する可能性もある。
尹氏が非常戒厳という民主国家としての『禁じ手』に動いた背景には、政権と国会の『ねじれ状態』を理由に政局混乱が常態化してきたほか、結果的に政策運営が円滑に進められない状況が続いてきたことが影響している。仮に保守勢力の結集により与党候補が勝利したとしても、国会は野党勢力が多数派を占めている上、非常戒厳を経て国内は保守勢力と革新勢力の分断が進んだことに鑑みれば、政治情勢が大きく好転するかは見通しにくい。とはいえ、世論調査で一貫してトップを走る李氏の出馬資格に対する『疑念』が高まることが予想されるなか、大統領選まで残り1ヶ月となるなかで世論の行方は益々見通しにくくなっており、混戦の様相を強める可能性は高まっている。
注1 4月4日付レポート「韓国・尹大統領の罷免決定、政治混乱の収束は進むか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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