インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

韓国中銀、貿易戦争長期化によるウォン相場の混乱を警戒

~政府の機能不全に加え、外貨準備高を巡る状況が混乱を増幅させる可能性も~

西濵 徹

要旨
  • 韓国経済はアジア新興国のなかでも外需依存度が高い上、中国経済を巡る不透明感が足かせとなる展開が続いている。さらに、ここ数年は対米貿易黒字を急拡大させるなかで「トランプ2.0」の脅威に晒される懸念も高まっている。他方、家計債務はアジア太平洋地域のなかで相対的に大きいなか、中銀による金融引き締めやそれに伴う不動産市況の低迷は家計消費の足かせとなってきた。昨年後半以降のインフレは落ち着きを取り戻すなか、中銀は利下げに動くなど景気下支えに舵を切っている。ただし、足下の景気は頭打ちの動きを強めている上、先行きは内・外需双方に不透明要因が山積するなど厳しい状況に直面している。
  • 中銀は先月の定例会合で景気下支えを重視して今次利下げ局面で3度目の利下げに動いたが、ウォン安懸念がくすぶるなど金融市場の動向に揺さぶられる状況が続いている。こうしたなか、中銀は13日に最新の金融政策報告書を公表し、貿易戦争の長期化によりウォン相場のボラティリティが高まる可能性を警戒する考えをみせている。この背景には、中銀による断続的な為替介入の背後で外貨準備高が金融市場の動揺への耐性に乏しいと見做される水準にあることも影響している。政治混乱により政府も機能不全に陥る状況が続くなか、当面の実体経済は一段と厳しい状況に追い込まれる可能性に留意する必要がある。

韓国経済を巡っては、アジア新興国の中でも構造面で外需依存度が相対的に高い上、財輸出のみならず、外国人観光客もともに中国(含、香港・マカオ)向け比率が高いなか、中国経済を取り巻く不透明感が景気の足かせとなる展開が続いている。さらに、米中摩擦が激化する背後では、ここ数年は主力の輸出財である半導体のほか、自動車や船舶といった輸送用機械、鉄鋼製品などの対米輸出を拡大させており、昨年の対米貿易黒字額は第1次トランプ政権末期の2016年対比で2.4倍近くとなっている(図1)。結果、同国は米国の国別貿易赤字額で8番目となるとともに、第2次トランプ政権が通商政策による貿易戦争を辞さない姿勢を示すなかでその影響が出ることが懸念されている。

図表
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他方、同国経済は家計部門が抱える債務残高がGDP比で9割超とアジア太平洋地域のなかでも突出している上(図2)、その背後で家計部門は不動産投資を活発化させてきた経緯がある。ただし、ここ数年のインフレや通貨ウォン安を受けて、中銀は物価と為替の安定を目的とする金融引き締めを進めた結果、バブルが懸念された不動産市況は一転して頭打ちを強めてきた。よって、家計部門にとっては金利高に伴う債務負担の増大に加え、不動産市況の調整によるバランスシート調整圧力も重なり、家計消費の足かせとなる状況に直面している。このように、内・外需双方に不透明感が高まるとともに、昨年後半以降のインフレは中銀目標を下回るなど落ち着きを取り戻したことを受け、中銀は昨年10月にコロナ禍の影響一巡後初の利下げに舵を切り、その後も漸進的な利下げに動いてきた。

図表
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韓国では、昨年通年の経済成長率は+2.0%と前年(+1.4%)から加速したものの、国内・外双方に不透明要因が山積するなかで10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+0.27%と前期(同+0.40%)からペースは鈍化しており、足下の景気は頭打ちの動きを強める動きが確認されている。さらに、先行きについても上述のように内・外需双方に不透明要因が山積しており、中銀は先月の定例会合において昨年10月以降の利下げ局面で3回目の利下げを決定するなど、景気下支えを重視する姿勢をみせている(注1)。他方、米トランプ政権の通商政策を受けた貿易戦争が世界経済に悪影響を与えるとともに、世界的な物価上昇を招くとの懸念も高まるなか、国際金融市場に動揺が広がる事態を警戒する向きがみられる。通貨ウォン相場を巡っては、尹大統領による非常戒厳の発令をきっかけとする政治混乱を理由に大きく調整したものの、足下では対ドルでの調整圧力は後退する兆しがみられる一方(図3)、金融市場の動向に揺さぶられやすい状況は変わっていない。

図表
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こうしたなか、中銀は13日に公表した最新の金融政策報告書において、ウォン相場について米中間をはじめとする貿易戦争激化の動きが想定以上に長期化するとともに、資本流出リスクが高まることによりボラティリティが高まる可能性を注意喚起する考えをみせている。具体的には「米ドルだけでなく、人民元の変動にも大きく影響されることを考慮すれば、ドル/ウォン相場のボラティリティが大幅に上昇する可能性がある」と指摘するとともに、外国人投資家の動きを巡って「投資資金と為替動向を注視する」とするなど警戒感を強めている様子がうかがえる。この背景には、金融市場における米ドル高に伴うウォン安を受けて当局は断続的な為替介入に動いているとされるなか、足下の外貨準備高はIMF(国際通貨基金)が市場の動揺への耐性の有無を示す基準(ARA;適正水準評価)に照らして「適正水準(100~150%)」を下回ると試算されるなど(図4)、耐性が乏しいと見做される状況にあることも影響している。政治混乱を巡っては、現職大統領として初めて逮捕された尹氏が今月初めに釈放されるなど混乱状態が一段と長期化する可能性も懸念されるなど見通しが立ちにくい状況にある。実体経済も視界不良状態にあるなかで政府は機能不全状態に陥っており、金融市場の混乱に揺さぶられやすい事態も予想されるとともに、中銀などは対応の手足を縛られるなど厳しい状況に直面する可能性にも注意を払う必要がある。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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