インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBNZによる「大幅利下げ」を後押ししそうな雇用悪化の動き

~当面のNZドル相場は金融政策の方向性が影響する形で上値の重い展開が続くと見込まれる~

西濵 徹

要旨
  • このところのニュージーランド経済は内・外需双方に下押し圧力が掛かる形でリセッションに陥っている。他方、商品高の一巡に加えて景気低迷の動きも重なる形でインフレは鈍化し、昨年後半はRBNZが定めるインフレ目標の域内で推移している。RBNZは昨年8月にコロナ禍後初の利下げに舵を切り、その後も断続、且つ大幅利下げに動くなどハト派姿勢を強めている。利下げにも拘らず足下の不動産価格は底這いで推移するなど物価上昇圧力が高まりにくい動きをみせているほか、雇用を取り巻く環境も悪化の度合いを強めている様子が確認されている。よって、RBNZが今月19日に開催予定の次回会合でも「大幅利下げ」に動く余地は拡大していると予想される。当面は金融政策の方向性の違いがNZドルの対米ドル相場の重石となる展開が見込まれるとともに、日本円に対しても同様に上値が抑えられる局面が続く可能性があろう。

このところのニュージーランド経済は、物価高と金利高の共存状態が長期化したことで家計消費をはじめとする内需に下押し圧力が掛かるとともに、最大の輸出相手である中国の景気減速を受けた外需の低迷も重なり、昨年半ば以降は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッション(景気後退局面)に陥るなど逆風に見舞われている(注1)。ただし、物価高を招いた商品高の動きが一巡するとともに、景気低迷の動きも重なる形で一時は30年ぶりの水準に高進したインフレは頭打ちの動きを強めており、昨年後半以降は中銀(RBNZ)が定めるインフレ目標(2~3%)に収束するなど落ち着きを取り戻している。直近の昨年10-12月のインフレ率は前年同期比+2.22%と2四半期連続で目標域に収まる一方、コアインフレ率は同+3.05%と目標域をわずかに上回る推移が続いているものの、頭打ちしており、サービス物価に上昇圧力がくすぶるも、幅広く財価格が下振れする動きが確認されている(注2)。このように景気は頭打ちの動きを強めるとともに、物価も鈍化していることを受けて、RBNZは昨年8月にコロナ禍後初の利下げに動き、昨年11月まで3会合連続の利下げに動くとともに、過去2回については利下げ幅を拡大させる動きをみせてきた。さらに、昨年11月の定例会合の際に公表した先行きの政策金利の見通しにおいては、ターミナルレートの水準はわずかに上方修正される一方、短期的には利下げ幅を拡大させるなど、当面は『ハト派』姿勢を強めるとの見方を示している(注3)。他方、上述したように足下のインフレ率はRBNZが定めるインフレ目標の域内で推移する一方、昨年11月時点の見通しをわずかに上回る伸びとなっており、観光関連や娯楽関連をはじめとするサービス物価に上昇圧力がくすぶることが影響していると捉えられる。なお、上述のようにRBNZは利下げペースを加速させるなど、景気下支えに向けた動きを強めているものの、不動産価格は底這いの展開が続いており、依然として2021年末のピークを2割近く下回る推移をみせるなど物価上昇圧力が高まりにくい状況にある。こうした背景には、このところの景気が頭打ちの動きを強めるなかで雇用を取り巻く環境が急速に悪化していることも影響しており、10-12月の失業率は5.1%と前期(4.8%)から0.3pt悪化して4年強ぶりの水準に悪化している。丸2年以上に亘って失業者数が拡大する動きが続いているほか、雇用者数も減少が続くとともに、そのペースが加速するなど雇用環境が一段と悪化している様子がうかがえる。雇用形態別でも正規雇用を中心に調整の動きが続いているほか、年代別でも若年層を中心に幅広い年代で調整の動き確認されるなど、賃金上昇圧力が一段と鈍化する兆しがうかがえる。さらに、労働参加率の水準は依然として高水準で推移するも、雇用環境の悪化を受けて労働力人口も減少しており、労働市場への参入意欲が後退する動きもみられるなど雇用を巡る実態は数字以上に悪化している可能性に留意する必要がある。こうした状況を勘案すれば、RBNZが今月19日に開催予定の次回の定例会合において4会合、且つ大幅利下げに動く可能性は高まっていると予想される。足下のNZドル相場を巡っては、米トランプ政権の政策運営が米国の物価高を招くとの懸念から米FRB(連邦準備制度理事会)が高金利政策を維持するとの見方がくすぶるなか、金融政策の方向性の違いが対米ドル相場の重石となる展開が続いている。当面のNZドル相場は上値の重い推移が続く可能性が高まっているとみられるほか、日本円に対しても上値が抑えられる局面が続く可能性に留意する必要があると見込まれる。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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