インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

トルコ中銀、現経済チーム下で初の利下げ、リラ相場はどうなる?

~中銀は慎重な利下げを志向の模様、リラ相場は米ドル高やシリア情勢が重石となる展開も~

西濵 徹

要旨
  • トルコ中銀は26日の定例会合で政策金利を250bp引き下げて47.5%とする決定を行った。同行の利下げは2023年2月以来であり、昨年の内閣改造を経て発足した経済チームの下で初めてとなる。トルコのインフレはここ数年上振れするも、現在の経済チームの下の断続利上げを受けて頭打ちしてきた。実質金利もプラスとなるなど引き締め度合いが強まり、景気もテクニカル・リセッションに陥るなど一段のインフレ鈍化に繋がることが期待される。中銀はインフレ抑制で苦戦を強いられる一方、11月の定例会合で将来的な利下げに含みを持たせる姿勢をみせた。こうしたなか、中銀は今回の会合で利下げに動くとともに、先行きもインフレ見通しを注視しつつ慎重な利下げに動く方針を示した。他方、エルドアン大統領は来年の最低賃金を30%引き上げる方針を示しており、インフレ鈍化の動きが後ろ倒しされる可能性はくすぶる。リラ相場も米ドル高圧力がくすぶるなかで上値が抑えられる展開が続く可能性に留意する必要があると見込まれる。

トルコ中銀は、26日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である1週間物レポ金利を250bp引き下げて47.5%とする決定を行った。同行による利下げ実施は2023年2月以来であるとともに、昨年の大統領選と総選挙後に行われた内閣改造を経て発足した経済チームの下で初めての利下げとなる。なお、ここ数年のトルコにおいてはインフレが中銀目標を上回る推移が続いたが、エルドアン大統領が主張する「高金利がインフレを招く」という因果が倒錯した理屈の下で中銀は低金利政策を迫られ、インフレ昂進や通貨リラ安に直面してきた。しかし、上述した昨年の内閣改造により誕生した経済チームの下、財政、金融政策の両面で引き締め姿勢が採られ、中銀は断続利上げに動くとともに、今年3月以降は政策金利を50%の高水準に維持した。結果、インフレは今年5月に直近のピークを迎えて頭打ちに転じ、足下では実質金利(政策金利-インフレ)が3年強ぶりにプラスとなるとともに、先月時点ではプラス幅が丸5年ぶりの水準となるなど引き締め度合いが強まっている。さらに、中銀による引き締め強化を受けて内需に下押し圧力が掛かるとともに、輸出の4割強を占めるEU(欧州連合)景気が減速感を強めるなど外需の不透明感が増していることも重なり、足下の景気は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど、一段の物価抑制に資することが期待される動きもみられる(注1)。他方、国際金融市場においては米ドル高が意識される展開が続いたことでリラの対ドル相場は調整が続いてきたほか、先月の米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高の動きが一段と強まっており、最安値を更新する展開が続いている。リラ安に伴う輸入インフレ圧力がくすぶる展開が続いていることを受けて、中銀は度々インフレ見通しの上方修正を迫られており、想定以上にインフレ抑制に苦戦を強いられている様子がうかがわれた。こうした状況ながら、中銀は先月の定例会合で政策金利を8会合連続で据え置く一方、将来的な利下げに含みを持たせる姿勢をみせたため(注2)、国際金融市場においては中銀が早晩利下げに動く可能性が高まっているとの見方が強まっていた。会合後に公表した声明文では、物価について「基調インフレはほぼ横這い」とした上で「先行指標は基調的な低下を示唆している」としつつ、「インフレ期待と価格設定行動は改善傾向にあるが、ディスインフレプロセスへのリスクは引き続き存在する」との見方を示している。また、政策運営について「断固とした引き締め姿勢が基調インフレの低下、内需の減速、リラ相場の実質的な上昇、インフレ期待の改善を通じてディスインフレプロセスを強化している」としつつ、「基調インフレの低下が顕著、かつ持続的に確認され、インフレ期待が想定範囲に収束するまで引き締めスタンスを維持する」との考えを示している。その上で、先行きについて「金利水準はインフレ動向の予想と現実を考慮しつつ、ディスインフレの実現に必要な引き締まりを確保する」として、「インフレ見通しに焦点を充てて会合ごとに慎重に決定する」としつつ「大幅、かつ持続的な悪化が予想される場合は政策手段を効果的に用いる」との姿勢を維持している。なお、エルドアン大統領は来年の月額の最低賃金について、ネットベースで2万2,104リラと今年に対して30%引き上げる方針を示し、今年(同+49%)や昨年(同+55%)に比べて引き上げ幅を抑えるとしているが、来年初めにかけてはインフレ率が最低で2pt程度押し上げられることにより、インフレ鈍化のペースが一段と遅れる可能性はくすぶる。中銀が今回利下げに動くとともに、抑制姿勢を維持しつつ慎重な利下げに動く方針を示したことに鑑みれば、実質金利をゼロ近傍に調整すべく緩やかな利下げに動く可能性は高まっていると捉えられる。こうした状況ながら、リラ相場は中東情勢、とりわけ隣国シリアを巡る不透明感が上値を抑える展開となる可能性が見込まれるとともに、日本円に対しては米ドル/円相場の動向に揺さぶられる動きが続くであろう。

図1 インフレ率の推移
図1 インフレ率の推移

図2 実質金利(政策金利-インフレ)の推移
図2 実質金利(政策金利-インフレ)の推移

図3 リラ相場(対ドル、円)の推移
図3 リラ相場(対ドル、円)の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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