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スリランカ総選挙は与党が地滑り的大勝利、経済再建の行方は?

~政局安定の一方、人材不足の懸念やIMFとの交渉も不透明、経済再建の行方は見通せず~

西濵 徹

要旨
  • スリランカでは14日に総選挙が行われた。9月の大統領選では、左派NPPを率いるディサナヤカ氏が勝利したが、NPPは議会内で3議席と少数派に留まるため、政権運営の安定化を図るべく議会の解散に踏み切った。現地報道では大統領選での勝利した勢いでNPPが議席数を大きく増やすと見込まれ、どれほど圧勝できるか否かに注目が集まった。開票結果に拠れば、NPPは159議席と憲法改正に必要な3分の2を上回る地滑り的な大勝利を収めた。議院内閣制への移行が現実味を帯びるほか、政権公約に掲げるIMFからの支援の「微調整」の行方も注目される。しかし、人材不足に加え、減税や現金給付により経済の再建計画は見直しを余儀なくされ、底入れしてきたルピー相場が再び動揺する可能性に要注意と言える。

スリランカでは14日、議会(一院制:定数225)の総選挙が実施された。同国では今年9月に実施された大統領選挙において、左派勢力の人民の力(NPP)を率いるディサナヤカ氏がウィクラマシンハ前政権の主導するIMF(国際通貨基金)の支援計画を前提とした経済再建策の見直しのほか、貧困層を対象とする減税や現金支給、汚職の根絶などを主張し、事前の世論調査で終始トップを走った勢いを追い風に勝利した(注1)。しかし、ディサナヤカ氏が率いるNPPの議席数は3議席と議会内で少数派に留まり、安定的な政権運営が困難であることを理由に、同氏は大統領に就任した翌日に議会を解散して政権基盤の安定化を目指す姿勢をみせた。現地報道などに拠れば、ディサナヤカ氏が大統領選での勝利した勢いに加え、NPPが多数の候補者を擁立することに成功したことも追い風に優勢に選挙戦を進める一方、大統領選で次点となったプレダマサ氏が率いる統一人民戦線(SJB)やウィクラマシンハ前大統領が率いる新民主戦線(NDF)、改選前に議会で多数派を形成したラジャパクサ元大統領が率いるスリランカ人民戦線(SLPP)が追う展開をみせてきた。また、ディサナヤカ大統領は総選挙を前にした先月、すべての年金受給者を対象に月3,000ルピーを支給する方針を明らかにするなど、国民負担の軽減を通じて選挙戦を有利に進める動きをみせたため、NPPの勝利は既定路線となっていた。こうしたなか、NPPが法案や予算の議決に必要となる過半数(113議席)、ないし、憲法改正に必要な3分の2(150議席)を上回る議席を獲得するなど圧勝できるか否かに注目が集まった。スリランカの選挙制度では、定数225議席のうち196議席を22の選挙区で、29議席を全国区でそれぞれ比例代表制に基づく形で選出される。開票結果に拠れば、NPPが選挙区で141議席、全国区で18議席の計159議席を獲得して憲法改正に必要な3分の2を上回るなど『地滑り的』な大勝利を収めた。他方、SJBは40議席と改選前(54議席)から14議席減らしたほか、改選前に145議席を有したSLPPの獲得議席数は3議席に留まるなど、既存政党の退潮が一段と鮮明になった格好である。さらに、ディサナヤカ氏は選挙公約に、2020年にラジャパクサ元政権下の実施された憲法改正により大統領に権限が集中する形となった現行制度から、2015年にシリセナ元政権下で実施された憲法改正に基づく形で議院内閣制が規定された状況に戻すとの方針を掲げており、今回の選挙結果を受けてその実現性が高まっていると判断できる。また、ディサナヤカ政権を支える与党が圧倒的多数を形成することで政局や政権運営の安定化が進むことが期待される一方、選挙公約にIMFからの支援プログラムの『微調整』を掲げており、9月に予備的合意に漕ぎ付けた債務再編協議に影響を与えることが懸念されている。IMFは先月、スリランカにミッションを派遣するとともに、ディサナヤカ大統領をはじめとする政権幹部と『建設的な協議』を行ったことを明らかにしているが、総選挙での勝利を受けて政権が強気な姿勢でIMFによる支援条件の見直しを要求すれば、今後の支援の行方に影響を与えることも予想される。そして、NPPはマルクス主義の流れを汲むとともに、減税や貧困削減を公約に掲げている一方、党内には政治経験の豊富な人材が乏しく、政権運営に当たっては人材不足を懸念する向きも少なくない。IMFの支援計画においては、来年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字幅をGDP比2.3%とする目標を掲げているが、ディサナヤカ氏が主張する減税や現金給付などによりそのハードルが高まることも予想される。2022年のデフォルト(債務不履行)危機をきっかけに大幅に調整した通貨ルピー相場は、その後のIMFによる支援実施や債務再編協議の前進などを追い風に緩やかに底入れしてきたものの、今後の政権運営の行方如何では再び厳しい状況に直面するリスクを孕んでいると捉えられる。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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