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2024.11.07
アジア経済
アジア金融政策
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為替
マレーシア中銀、物価と景気のバランス重視で慎重姿勢を継続
~外部環境によるリンギ安は不可避も、慎重な姿勢が周辺国通貨との違いを生む一助に~
西濵 徹
- 要旨
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- マレーシア中銀は6日の定例会合で政策金利を9会合連続で3.00%に据え置いた。足下のインフレは落ち着きを取り戻すなか、景気も堅調な底入れが確認されている。他方、公的債務は法定上限に達するなど財政健全化が喫緊の課題となるなか、アンワル政権は補助金政策の見直しに動くとともに、来年2月には最低賃金の大幅引き上げを計画しており、先行きのインフレに上昇圧力が掛かることが予想される。リンギ相場は米ドル安の進行も追い風に底入れするも、足下では米ドル高が再燃する動きもみられるが、中銀が慎重な政策運営を志向するなかで周辺国通貨に対して落ち着いた推移が続く。こうした事情も中銀が金利据え置きを志向する一因になっている可能性がある。中銀は声明文でも従来からの考えをあらためて示す一方、外部環境に不透明要因がくすぶるなかで当面は慎重な政策運営を志向する展開が続くであろう。
マレーシア中銀は、6日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利を9会合連続で3.00%に据え置く決定を行った。マレーシアは人口規模がASEAN(東南アジア諸国連合)のなかでも比較的小さく、経済構造面では外需依存度が相対的に高い上、財輸出の約2割、外国人観光客の1割強を中国(含、香港・マカオ)が占めるなど中国経済への依存度が高い。さらに、財輸出に占める鉱物資源の割合も2割弱を占めるなど国際商品市況の動向に左右されやすい構造を有する。よって、このところの中国の景気減速は外需の足かせとなることが懸念されてきた。他方、ここ数年はコロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨リンギ安による輸入インフレも重なる形で物価が押し上げられたため、中銀は物価と為替の安定を目的に累計125bpの利上げに動くなど、物価高と金利高の共存が内需の足かせとなる状況に直面してきた。しかし、中銀の金融引き締めに加え、商品高の一巡も重なる形で一昨年末を境にインフレは頭打ちに転じており、物価は落ち着きを取り戻している。さらに、米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ実施を受けた米ドル安の動きを反映してリンギ相場は底入れの動きを強めて輸入インフレの懸念が大きく後退するなど物価を巡る状況は好転している様子がうかがえる。そして、先月公表された7-9月の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比ベースで+5.3%、前期比年率ベースでも+7.6%と足下の景気は底入れの動きが続いている様子が確認されている(注1)。他方、マレーシアではコロナ禍対応を目的とする財政出動を受けて公的債務残高のGDP比は法定上限(65%)をわずかに上回るなど財政状況は厳しさを増すなか、アンワル政権は補助金削減による財政健全化に向けた取り組みを前進させており、先行きについてはその影響が顕在化する形で物価に押し上げ圧力が掛かることが予想される。さらに、アンワル政権は来年2月から最低賃金を月1,700リンギと現行水準(同1,500リンギ)から引き上げる方針を示しており、こうした動きも足下で落ち着いた推移をみせるインフレの押し上げに繋がると見込まれる。こうしたことも中銀が慎重な政策運営を維持する一因になっているとみられるほか、足下の国際金融市場では7月以降の米ドル安の動きが一巡するとともに、米ドル高の動きが再燃していることを反映してリンギ相場は頭打ちに転じる動きもみられる。アジア新興国ではインフレ鈍化を理由に利下げに動く流れが広がりをみせるなか、リンギについては中銀が慎重姿勢を維持していることが周辺国通貨に比べて調整度合いが小幅に留まる一助となっているとみられ、そうした事情も中銀の今回の決定を後押ししている可能性がある。会合後に公表した声明文では、世界経済について「回復が続いており、良好な労働市場やインフレ緩和、金融緩和により下支えされる」としつつ、「地政学リスクの高まりや金融市場のボラティリティの高まり、主要国の成長モメンタムの鈍化による下振れリスクに晒されている」との見方を示している。一方、マレーシア経済について「内・外需をけん引役に持続的に堅調な推移が続き、先行きも外需や財政出動による下支えが期待される」としつつ、「外需を巡る状況や生産活動の動向に伴う下振れリスクの一方、技術移転に伴う波及効果の増大や観光関連の活発化、投資の進捗促進による上振れリスクもある」との認識を示している。また、物価動向について「来年にかけて世界的なコスト上昇圧力の緩和や内需を巡る動向を勘案すれば管理可能な水準に留まる」としつつ、「補助金政策や価格統制の影響や商品市況や金融市場の動向が上振れリスクになる」との見方を示している。そして、リンギ相場についても「主に外的環境の影響を受ける」として「米大統領選の行方がボラティリティを高める可能性はあるが、国内外の金利差縮小が追い風になる」としつつ、金利水準について「現行の金利水準は引き続き景気を下支えするとともに、物価と景気見通しと整合的」とした上で、「来年に向けて景気とインフレの安定を図るべく足下の動きを注視しつつ、物価安定と持続可能な経済成長を目指す」との従来からの考えをあらためて示した。当面のリンギ相場は不安定な動きが見込まれるほか、物価動向も補助金政策の行方が影響を与えると予想されるなか、中銀は引き続き慎重な政策運営を志向する展開が続くであろう。


注 10月21日付レポート「マレーシア・アンワル政権、景気と財政健全化の「二兎」を追えるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

