株高不況 株高不況

利上げの予告はなかったが、利上げの条件は満たされつつある

藤代 宏一

日銀は予想通り金融政策の現状維持を決定。政策金利は+0.25%で据え置かれた。展望レポートで示された物価見通しは2024年が+2.5%で7月から不変。2025年度は+1.9%へと0.2%pt下方修正、2026年度は+1.9%で不変であった。もっとも、2025年度の物価見通しについては「上振れリスクの方が大きい」とされており、必ずしも物価の基調が下振れる方向ではないことを示唆した。

今後の金融政策運営について、「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」との文言は維持された。総裁をはじめ日銀中枢メンバーは経済・物価が日銀の見通しに沿って推移することを「オントラック」と表現しており、それを事実上、追加利上げの条件としている。7月対比で物価見通しがさほど変化していないことは、オントラックそのものであり、「見通しが実現」していることを意味する。もっとも、足もとではUSD/JPYが再び153円まで水準を切り上げるなど、物価の上振れリスクはやや高まっていると判断される。幸いなことに原油価格が落ち着きをみせているため輸入物価が著しく上昇する事態は回避されそうだが、米大統領選でトランプ氏が勝利するなどしてドル高圧力が強まることも考えられ、上振れリスクは相応に高い。

また今回の展望レポートでは賃金に関する記述がやや強気化した。「経済の中心的見通し」および「物価の中心的な見通し」における賃金の記述は、これまで「基調的に高まる」とされていたものが「はっきりと増加」に書き換えられていた。毎月勤労統計など各種賃金統計の実績値が想定どおり上昇してきた中、2025年春闘が2024年と同等かそれ以上の要求となる見込みであることを踏まえたとみられる。

こうした見通しから判断すると、12月(もしくは2025年1月)の金融政策決定会合における利上げは順当な選択であるように思える。

最後に、先の衆院選の結果が今後の金融政策にどういった影響を与えるのか考えてみたい。与党が苦戦した理由として、金銭スキャンダルがあったことは否定しようのない事実であるが、国民(=消費者)が抱く不満の根底には物価高もあったと推察される。特にそれは高齢者層で強かったのではないか。与党が今回の選挙結果を分析した結果、「インフレのせい」との結論に至れば、日銀に円高を促すよう圧力をかける戦略に舵を切る可能性はあるだろう。現時点で石破総裁をはじめ政府が日銀に対して円安を食い止めるよう圧力をかける動きは限定的であるどころか、国民民主党の玉木代表が存在感を強めているため、日銀が緩和状態を長く保つとの見方もある。しかしながら今後、インフレ抑制を通じて支持率回復を狙う算段なら、株価を犠牲にしてでも円高、すなわち輸入物価の低下を求めるのではないか。「シルバー民主主義下における金融政策」では、株価よりも為替が重視されるだろう。

藤代 宏一


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