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2024.09.30
アジア経済
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市場は中国当局の一連の対応を好感、期待どおりとなるか?
~株価は大きく底入れも家計部門への効果は限定的、カギを握るのは不動産市況の動向に~
西濵 徹
- 要旨
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- このところの中国経済は、不動産不況が内需の足かせとなり、過剰生産能力を巡って欧米のみならず新興国の間でも追加関税を課す動きが広がるなど、外需にも不透明感が高まっている。こうしたなか、先週以降に人民銀は一段の金融緩和や不動産需要喚起策、株価下支え策を公表し、共産党も中央政治局会議を開催して財政出動に動く方針を明らかにした。こうした動きを受けて中国金融市場では株価が大きく底入れするなど好感しているが、財政出動の内容は不透明なところが多く、一過性のものとなる懸念は残る。
- 足下の企業マインドは当局が総合的な対応を示さざるを得なかった状況を示唆している。政府統計である9月の製造業PMIは49.8と好不況の分かれ目を下回る推移が続いているほか、非製造業PMIも50.0と21ヶ月ぶりの低水準となり、サービス業の悪化が足かせになっている。さらに、民間統計である財新製造業PMIも49.3と2ヶ月ぶりに好不況の分かれ目となる水準を下回っているほか、財新サービス業PMIも50.3と丸1年ぶりの低水準となるなど内需の弱さを示唆する様子がうかがえる。よって、足下の状況は一連の景気刺激策を必要としていることを示唆しており、内需喚起が喫緊の課題になっていることは間違いない。
- 株価底入れの動きは金融市場が当局の対応を好感している一方、本格的な景気回復には不動産市況の動向がカギを握る状況は変わらない。短期的には景気底打ちが期待されるが、それを持続可能なものとするためには、不動産市場を巡る諸課題に真正面から取り組むことが何よりも望まれることは間違いない。
このところの中国経済を巡っては、不動産不況が幅広い経済活動の足かせとなる展開が続いているほか、中国国内における過剰生産能力に対する警戒感などを理由に欧米のみならず、新興国の間にも中国製品への追加関税を課す動きが広がるなど、内・外需ともに不透明要因が山積している。こうした事態を受けて、当局は不動産不況の一因となってきた在庫解消を目的とする施策に加え、中国人民銀行(中銀)も需要喚起を目的に住宅ローン金利や頭金規制の引き下げのほか、最大で1兆元規模の貸付制度の創設に動いてきた。さらに、7月に開催された3中全会(第20期中央委員会第3回全体会議)の直後に全面的な金融緩和を発表するなど、不動産不況の解消に向けた取り組みが一段と進む動きをみせた。しかし、一連の対応発表にも拘らず、その後の不動産市況は若年層を中心とする雇用不安が需要の足かせになるとともに、不動産市況も下げ止まりの兆しがみられない展開が続くとともに、そのことが一周回って幅広く内需の重石となる動きが確認された。よって、このところは『当局関係者』の話として何らかの対策が打ち出されるとの『観測気球報道』が相次ぎ、今月20日の定例の政策金利の見直しでは一段の金融緩和に動くとの見方が強まったものの、人民銀は政策金利(LPR(最優遇貸出金利))を据え置いた(注1)。こうした予想外の動きを受けて、金融市場には失望の動きが広がったものの、24日に人民銀の潘功勝行長と国家金融監督管理局の李雲澤局長、証券監督管理委員会の呉慶委員長の3人が合同で記者会見を行い、預金準備率と7日物リバースレポ金利の引き下げに加え、既存の住宅ローン金利の引き下げ、住宅ローンの頭金規制緩和、株価下支え策などに動く方針を明らかにした(注2)。さらに、共産党は中央政治局会議を開催し、報道によると一連の金融緩和策に加え、財政出動を通じた総合的な対策により党が掲げる今年の経済成長率目標(5%前後)の実現を後押しする方針を決定した模様である。報道では、2兆元規模の特別国債を新規発行してうち1兆元を家計消費の刺激を目的に、1兆元は債務問題に直面する地方政府の支援に充てるほか、不動産不況を巡っても下落傾向に歯止めを掛ける必要があるとの認識を共有したとしている。こうした動きも追い風に、足下の中国金融市場においては一連の株価対策を好感する形で底入れの動きを強めるなど好感している様子がうかがえる。ただし、中国においては家計部門の資産に占める株式の割合は必ずしも高くないなか、足下の株価の急上昇の動きは企業部門や金融セクターを取り巻く環境を大きく好転させる可能性がある一方、不動産価格の低迷の動きに歯止めが掛からなければ一過性のものに留まる可能性は残る。近年の中国の経済成長は不動産をはじめとする固定資本投資に過度に依存する展開が続いてきたなか、一朝一夕にこうした構造の転換を進めることは極めて困難であることは間違いない。その意味では、当面の景気は財政出動の動きも追い風に底打ちする可能性が見込まれるものの、中国経済が抱える課題解決が進むとは見通しにくく、景気底入れの動きも一時的なものに留まることは避けられない。

こうしたなか、足下の企業マインドは景気を取り巻く環境が引き続き厳しい状況にあることを示唆しており、政府統計である9月の製造業PMI(購買担当者景況感)は49.8と前月(49.1%)から+0.7pt上昇するも、5ヶ月連続で好不況の分かれ目となる水準を下回る推移をみせている。なお、足下の生産動向を示す「生産(51.2)」は前月比+1.4pt上昇して2ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復するなど増産に向けた動きがみられるものの、先行きの生産に影響を与える「新規受注(49.9)」は同+1.0pt上昇するも5ヶ月連続で50を下回るとともに、「輸出向け新規受注(47.5)」は同▲1.2pt低下して7ヶ月ぶりの低水準となるなど、外需を巡る不透明感の高まりが足かせとなっている。さらに、足下の生産活動が活発化しているにも拘らず「購買量(47.6)」は前月比▲0.2pt、「輸入(46.1)」も同▲0.7ptとともに低下するなど原材料需要は活発化しておらず、企業が先行きに対する不透明感を強めている様子もうかがえる。そして、生産拡大の動きにも拘らず「雇用(48.2)」も前月比+0.1ptとわずかに上昇するも依然として50を大きく下回る水準に留まるなど雇用拡大に及び腰となっており、家計消費の活発化にはほど遠い状況なるものと捉えられる。こうした状況は対照的に堅調な動きをみせてきた非製造業PMIが9月は50.0と好不況の分かれ目となる水準となり、前月(50.3)から▲0.3pt低下して21ヶ月ぶりの低水準となるなど頭打ちの様相を強めている。分野別では「建設業(50.7)」は前月比+0.1ptとわずかに上昇して引き続き50を上回る水準を維持する一方、「サービス業(49.9)」は同▲0.3pt低下して9ヶ月ぶりに50を下回るなど、サービス業を取り巻く環境が悪化している。なお、サービス業において企業マインドの悪化が顕著になった理由について、国家統計局は夏場の観光シーズン終了による反動のほか、台風など異常気象の頻発を挙げており、鉄道輸送関連や海上輸送関連、娯楽・スポーツ関連で顕著な悪化が確認されている。先行きの経済活動に影響を与える「新規受注(44.2)」は前月比▲2.1pt低下して2年弱ぶりの低水準となっているほか、「輸出向け新規受注(47.0)」も同▲0.6pt低下しており、上述のように内・外需双方に不透明要因が山積している様子がうかがえる。さらに、こうした状況を反映して「雇用(44.7)」は前月比▲0.5pt低下するなど一段と雇用調整圧力が強まる動きが確認されるとともに、その水準も2年弱ぶりの低水準となるなど急速に厳しさが増している。


なお、政府統計とは対照的にS&Pグローバルが公表する財新PMIは堅調な動きをみせてきたものの、9月の財新製造業PMIは49.3と前月(50.4)から▲1.1pt低下して2ヶ月ぶりに好不況の分かれ目となる水準を下回るなど、製造業を取り巻く環境は大企業のみならず、中小・零細企業のほか、沿海部の輸出関連企業においてもマインドが急速に悪化している様子がうかがえる。足下の生産動向を示す「生産(50.2)」は50を上回る水準を維持するも前月比▲0.5pt低下するなど減産圧力が強まる動きがみられるほか、先行きの生産に影響を与える「新規受注(47.5)」は同▲2.8pt低下して2ヶ月ぶりに50を下回る水準になるとともに、「輸出向け新規受注(48.4)」も同▲1.0pt低下してともに50を下回るなど、内・外需ともに厳しさを増していると捉えられる。減産圧力が強まっていることを反映して「購買量(49.3)」は前月比+0.2pt上昇するも50を下回る水準で推移しており、原材料に対する需要が弱含んでいるほか、「完成品在庫(51.8)」は同+1.6pt上昇して約1年ぶりの水準となるなど在庫の積み上がりが確認されており、先行きについては一段と減産圧力が強まることは避けられない。そして、減産圧力が強まっていることを反映して「雇用(49.2)」は前月比▲0.8pt低下して2ヶ月ぶりに50を下回る水準となるなど雇用調整圧力が強まるなど、家計部門を取り巻く環境は厳しさを増している。同様に9月の財新サービス業PMIは50.3と好不況の分かれ目となる水準を維持するも、前月(51.6)から▲1.3pt低下して丸1年ぶりの低水準となっており、幅広く企業マインドが悪化していることは間違いないと捉えられる。なお、先行きの動向に影響を与える「新規受注(51.0)」は前月比▲1.6pt低下するなど内需を取り巻く環境は厳しさを増している一方、「輸出向け新規受注(53.5)」は同+1.7pt上昇するなど対照的な動きをみせており、外需が企業マインドを下支えしている様子がうかがえる。さらに、こうした状況を反映して、マインド悪化にも拘らず「雇用(50.3)」は前月比+0.6pt上昇して2ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復しており、緩やかに雇用が拡大する動きがみられるなど内需を下支えすることが期待される。しかし、先行きの経済活動に関する「将来活動期待(53.9)」は前月比▲2.6pt低下してコロナ禍の影響が最も深刻化した2020年3月以来の低水準となっており、表面的な数字とは対照的にマインドが急速に悪化していると考えられる。


こうした足下の企業マインドの動きをみると、上述のように当局が政策を総動員する姿勢を示したことは避けられなかったと捉えることができる。ただし、上述したように家計部門の資産に占める不動産の割合の高さを勘案すれば、不動産市況の下落の動きに歯止めが掛からなければ家計部門のマインドが大きく好転する展開は見通しにくい。さらに、不動産を需要するボリュームゾーンである若年層を中心とする雇用を取り巻く環境の好転という好循環がみられなければ、家計消費の拡大の動きが持続的なものとなる可能性も低いと見込まれる。その意味においては、足下の金融市場の好転の動きを一過性のものに留めないためにもある程度の財政出動に加え、不動産市場を巡る諸課題に真正面から対応することが求められるものの、そのタイミングと処方せんについては困難なものとなることは避けられないであろう。
注1 9月20日付レポート「中国人民銀が予想外の金利据え置き、その背景を考える」
注2 9月26日付レポート「中国人民銀は金融緩和と規制緩和に舵も、市場は早くも「次」を催促」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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