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2024.09.26
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中国人民銀は金融緩和と規制緩和に舵も、市場は早くも「次」を催促
~効果は不透明ななかで財政出動に期待も、当局の慎重姿勢や財政余力が足かせとなる展開~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の中国経済は内・外需双方に不透明要因が山積して頭打ちが意識される展開をみせる。当局は昨年末以降に金融緩和や不動産対策に動いたものの、足下の不動産市況は底のみえない状況が続く。金融市場では観測気球記事も追い風に金融緩和への期待を高めたが、人民銀は20日に金利を据え置いた。当局内では政策対応の必要性が認識される上、米ドル安により資金逃避の懸念も後退するなど金融緩和への環境も整うなか、金融市場では早晩何らかの政策対応に動く可能性は高いとの見方が強まっていた。
- 24日に人民銀の潘行長などが共同会見を行い、不動産市況の下支えを目的に預金準備率や7日物リバースレポ金利の引き下げに加え、住宅ローン規制の緩和に動く方針を明らかにした。また、逆資産効果の解消を目的に株価下支えに向けた取り組みを強化する方針も示している。株式市場では一連の対応を好感する向きもみられるが、一連の政策の実施時期は不明な上、不動産対策も必要額を下回るなかで早くも財政出動を期待する向きも出ている。先行きも金融市場では追加対策を催促する展開が続くと見込まれる。
足下の中国経済を巡っては、不動産不況が底のみえない様相を強めるなかで幅広く内需の足かせとなる展開をみせるとともに、過剰生産能力への警戒や経済安全保障などの観点から欧米のみならず、新興国でも中国製品に対する追加関税を課す動きが広がりをみせるなど外需を巡る環境も厳しさを増すなど、景気は一段の頭打ちが懸念される状況に直面している。こうしたなか、当局は不動産不況の一因となっている在庫解消を目的に地方政府による不動産在庫の買い上げや買い戻しを認めるとともに、中国人民銀行(中銀)も需要喚起に向けて住宅ローン金利や頭金規制の引き下げ、最大で1兆元規模の貸付制度の創設を発表した。さらに、人民銀は7月に開催された3中全会(第20期中央委員会第3回全体会議)の直後には7日物リバースレポ金利のほか、新規、および既存融資全般の動向に影響を与える1年物LPR(最優遇貸出金利)と住宅ローン金利に影響を与える5年物LPRをすべて引き下げる全面的な金融緩和に動いた。他方、中国金融市場では国債への資金流入が活発化して長期金利が低下する国債バブルとも呼べる状況にあるなか、折しも国際金融市場では米ドル高圧力がくすぶり、人民銀は長期金利の低下が海外への資金逃避を通じて人民元安を加速させることを警戒してきた。よって、人民銀は長期金利を高水準に誘導するとともに、MLF(中期貸出制度)融資の担保要件引き下げを通じて金融市場における国債の流通量を拡大させるなど、金融緩和の効果を相殺させる動きをみせてきた。こうしたことから、上述した需要喚起策や金融緩和にも拘らず、その後も不動産不況に歯止めが掛かる兆しがみえない展開が続くとともに、そのことが幅広く内需の足かせとなる動きが確認されてきた。当局関係者による『観測気球』が相次いで報道されたこともあり、国際金融市場では当局が一段の対応に動くとの観測が強まったものの、人民銀は今月20日に公表した定例の政策金利の見直しに際して、1年物LPRと5年物LPRをともに据え置く予想外の動きをみせた(注1)。予想外とみられた背景には、一連の観測気球記事のなかには不動産市況の安定に向けた一段の対応の必要性に加え、具体的な方策などが示されていたことが影響している。さらに、足下の国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げを受けた米ドル安の動きを反映して人民元相場は底入れの動きを強めており、海外への資金逃避の警戒感も大きく後退している。こうした状況ではあるものの、このところの長期金利の低下を受けて銀行セクターの収益性が低下する動きが顕在化しており、仮に一段の金融緩和を受けて収益性が毀損される事態となれば幅広い経済活動に悪影響が広がることを警戒した可能性が考えられる。ただし、不動産不況の深刻化の動きはそれ以上に幅広い経済活動の足かせとなる展開が続いており、これに歯止めを掛ける観点からは預金準備率の引き下げを通じた流動性拡大のほか、規制緩和に動く可能性は高いと見込まれた。

こうしたなか、24日に人民銀の潘功勝行長(総裁)と国家金融監督管理局の李雲澤局長、証券監督管理委員会の呉慶委員長の3人が合同で記者会見を行うことが明らかになり、何らかの政策対応が示されることへの期待が高まった。会見において、潘氏は金融緩和を行う方針を明らかにし、具体的には預金準備率を50bp引き下げて金融市場に約1兆元(GDP比0.79%)規模の流動性供給を図るほか、7日物リバースレポ金利を20bp引き下げる(1.7%→1.5%)とともに、商業銀行による貸付金利と預金金利を連動して引き下げるよう誘導して収益性の安定化を図るとしている。なお、潘氏は金融市場の流動性を巡る環境に応じて、年内にも預金準備率を追加で25~50bp程度引き下げる可能性に言及するなど一段の緩和に含みを持たせている。さらに、既存の住宅ローン金利の引き下げに加え、住宅ローンに関わる頭金規制の統一(2軒目の住宅ローン金利の頭金比率を25%から15%に引き下げ)、上述した貸付制度の促進を目的に借り換えに伴う資金支援比率を60%から100%に引き上げるとしている。なお、既存の住宅ローン金利の引き下げ幅について、潘氏は平均で50bp程度に留まるとともに利ざやに与える影響は中立的との認識を示しており、家計部門の利払いの軽減額は年間で1,500億元(GDP比0.01%)程度になる見通しである。これら以外にも、不動産市況の下支えを目的として特別目的債券を活用した遊休地の購入を可能にするほか、信用力の高い企業を対象に不動産開発業者からの土地取得を目的とする融資を可能にする方針を検討するとしている。また、不動産市況の低迷に加え、このところの株式相場の動きも逆資産効果を通じて家計消費の足かせとなっていることに対応して、金融機関(証券、ファンド、保険会社)による株式保有拡大に向けたスワッププログラム(5,000億元)のほか、企業による自社株買いを促すことを目的とする低利融資(最大3,000億元)を提供するとしている。ただし、一連の措置についてはその実施時期について明示していないことに加え、昨年末時点における不動産在庫は少なく見積もっても18兆元弱に達していると試算されるなど必要額に比べて小規模に留まる感は否めない。さらに、金融市場においてはさらなる財政措置を期待する向きがみられるものの、昨年末時点で地方政府は40.7兆元規模の債務を抱えるとともに、傘下の融資平台(LGFV)も相当額の債務を抱えるなど財政余力は乏しいなかで過度な期待を抱くことは難しい。不動産市況の底入れに目途が立たない状況が続けば、地方政府にとって財政面での『虎の子』である売却収入の見通しも立たず、結果的に財政出動も掛け声倒れとなる可能性もくすぶる。金融市場においては上述した株価対策などを好感して低調な推移が続いた中国本土株の底入れを期待する向きもみられるものの、不動産開発業者を取り巻く状況が好転している訳ではないほか、家計消費をはじめとする内需の押し上げ効果も限定的なものに留まることを勘案すれば、一過性の動きとなる可能性も考えられる。金融市場は早くも追加対策を催促する展開となることも充分に予想される。


注1 9月20日付レポート「中国人民銀が予想外の金利据え置き、その背景を考える」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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