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- ドイツで存在感を増す非主流派政党
- 要旨
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- 22日に行われたドイツ・ブランデンブルク州議会選挙は、連邦政府を率いる社会民主党が州議会の第一党の座を死守したが、1日に行われた旧東ドイツ2州の州議会選挙と同様に、反移民を掲げる極右政党と新興左派政党の2党が躍進した。非主流派2党の合計得票率は、旧東ドイツ地域で40%を超え、連邦レベルでも30%に迫り、両党抜きでの政権発足が難しくなりつつある。
9月1日のチューリンゲン州とザクセン州に続き、22日にブランデンブルク州で今年3つめの旧東ドイツ地域の州議会選挙が行われた。2州同様に反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と新興左派政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」がどの程度の支持を集めるかとともに、ブランデンブルク州政府を率いる中道左派政党で、連邦レベルでも政権与党の「社会民主党(SPD)」が州議会の最大勢力の座を守れるかが注目を集めた。結果は、SPDが30.9%の票を集め、29.2%まで支持を伸ばしたAfDに競り勝った(図表1)。来年秋の連邦議会選挙で政権奪還を目指す最大野党で中道右派の「キリスト教民主同盟(CDU)」は12.1%に得票率を落とし、13.5%を獲得したBSWに第三党の座を明け渡した。連邦レベルで連立政権に加わる環境政党「緑の党」が4.1%、同じく連立パートナーのリベラル政党「自由民主党(FDP)」が0.8%、旧東ドイツの支配政党の流れを汲む左派政党「左翼党(Linke)」が3.0%と、何れも議席獲得に必要な5%に届かなかった。

今回の旧東ドイツ3州の州議会選挙でAfDの得票率は、チューリンゲン州で32.8%、ザクセン州で30.6%、ブランデンブルク州で29.2%に達し、連邦レベルでの各種の世論調査でも20%前後の支持を集めている(図表2)。旧左翼党の有力政治家が今年1月に旗揚げしたばかりのBSWも、チューリンゲン州で15.8%、ザクセン州で11.8%、ブランデンブルク州で13.5%の票を集め、連邦レベルの世論調査で10%近い支持を集める。非主流派2党の合計得票率は、旧東ドイツで40%を超え、連邦レベルでも30%に迫り、最早その存在感を無視することができない。
支持率低迷に喘ぐショルツ首相は、今回、自身が率いるSPDがブランデンブルク州議会で第一党の座を守ったことで、来年秋の連邦議会選挙での同氏の首相候補としての適性を疑問視する党内の声や、早期の連立解消観測を封じ込めることに、ひとまず成功しよう。来年度の予算案を巡る連立政権内の不協和音に加えて、エネルギー調達費用の高止まりなどでドイツ経済の停滞が続くとみられ、連立政権の支持率回復が見通せない状況にある。連立解消や前倒し解散・総選挙の機運も高まらないとみられる。

政権奪還を目指すCDUとバイエルン州の姉妹政党「キリスト教社会同盟(CSU)」は最近、CDUのメルツ党首を同会派の首相候補とすることを決めた。現職のショルツ首相と、メルケル首相退任後のCDUを率いるメルツ氏が次期首相の座を争うことになる。メルツ氏が率いるCDU・CSUは各種の世論調査で30%台前半の支持を安定的に集めるが、連立与党の支持率が低迷していることを考えれば、伸び悩んでいる。長年ドイツ政界を率いてきた二大政党がドイツ国民の利益代表として十分な役割を演じることが出来なくなりつつあり、AfDやBSWといった非主流派政党の躍進を招いている。こうした流れは来年の連邦議会選挙でも確認されよう。 今回、州議会選挙が行われた旧東ドイツの3州では、AfDとBSWを揃って排除した形での安定政権の樹立が困難となりつつある。両党の連邦レベルでの支持率は旧東ドイツ地域と比べて低く、複数の主流派政党が協力すれば辛うじて政権を発足できる状況にある。だが、AfDとBSWの勢いがこのまま続けば、いずれ両党の協力なしに政権を発足するのが難しい時代がやってくる。ドイツの政治安定は曲がり角を迎えている。

田中 理
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