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2024.09.20
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台湾中銀、不動産高騰を警戒して2会合連続の預金準備率引き上げ
~不動産バブルに規制強化と預金準備率引き上げで対応も、台湾ドル相場は外部環境如何の展開~
西濵 徹
- 要旨
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- 台湾中銀は、19日の定例会合で政策金利を2会合連続で2.000%に据え置く決定を行った。ここ数年の台湾はインフレに直面したため、中銀は物価と為替の安定に向けて断続利上げに動き、その後のインフレは頭打ちに転じている。他方、台湾ドル安懸念に対応して3月の定例会合では通貨防衛を目的とする利上げを迫られた。6月の前回会合では政策金利を据え置く一方、不動産価格の急騰に対応して預金準備率を引き上げる引き締めに動いた。足下では米ドル安を受けて台湾ドル相場は底打ちするも、不動産価格は一段と上昇している。よって、中銀は政策金利を据え置く一方、住宅ローン規制の強化と2会合連続の預金準備率の引き上げを決定した。当面は不動産価格の動向をみながらの小刻みな対応を続けると見込まれるほか、台湾ドル相場については外部環境に左右される展開が続くものと予想される。
台湾中央銀行は、19日に開催した定例の金融政策委員会で政策金利を2会合連続で2.000%に据え置く決定を行った。ここ数年の台湾は、コロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨台湾ドル安による輸入インフレも重なる形でインフレ昂進に直面してきた。中銀は一昨年3月以降、物価と為替の安定を目的に断続利上げに動いたほか、商品高の動きが一巡したこともあり、インフレは一昨年半ばに一時14年ぶりの高水準となるも、その後は頭打ちに転じている。しかし、昨年後半以降はアジアでの異常気象を理由とする農作物の生育不良に加え、中東情勢の不安定化を受けた国際原油価格の上振れも重なり、食料品やエネルギーなど生活必需品を輸入に依存する台湾ではインフレが再燃する事態に直面した。さらに、今年1月に実施された総統選では与党・民進党の頼清徳氏が勝利する一方、同時に実施された立法院総選挙では最大野党・国民党と第3極を目指す民衆党が多数派を形成したことで、政権と議会の『ねじれ状態』となった。よって、政策運営を巡る不透明感が高まったことに加え、中国本土との緊張感が意識されるなかで折からの米ドル高の動きも重なり台湾ドル相場が調整の動きを強めたため、中銀は3月の定例会合で通貨防衛を目的とする利上げを迫られた(注1)。ただし、その後は台湾ドル安の動きに一服感が出る一方、金融引き締めの長期化にも拘らず不動産取引が活発化するとともに、台北周辺を中心に不動産価格が高止まりするなど新たなインフレ要因となる懸念が高まった。こうしたことから、中銀は6月の定例会合で政策金利を据え置く一方で特定の地域を対象に住宅ローン規制の強化に加え、預金準備率を25bp引き上げる一段の金融引き締めを決定した(注2)。なお、その後の台湾ドル相場は米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げを織り込んだ米ドル安の動きを受けて底入れするなど輸入インフレの懸念は後退しているほか、インフレ率も緩やかに鈍化している。他方、6月会合で中銀が警戒感を示した台北地域の不動産価格はその後も上昇が続いており、足下では過去最高値を更新する動きをみせている。また、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.16%と底入れの動きが続くとともに、その内容についてもインフレ鈍化により家計消費をはじめとする内需が押し上げられる動きが確認されるなど、数字以上に堅調な動きをみせている様子がうかがえる。アジア新興国のなかには米FRBによる利下げを織り込む形でこれに追随する向きもみられるが、台湾については足下の景気の堅調さと不動産市況の動向がこうした動きを止まらせたとみられる。



会合後に公表した声明文では、今回の決定について全会一致で決定した旨を明らかにしている。その上で、世界経済について「インフレ鈍化が見込まれるが、主要国中銀の政策運営や米大統領選の行方、中国本土の景気低迷、気候変動などに伴う多くの不確実性に直面する」との見方を示している。その一方、同国経済について「内・外需の堅調さを追い風に今年通年の経済成長率は+3.82%」と従来見通し(+3.77%)から上方修正するも「来年の経済成長率は+3.08%」と鈍化する見通しを示している。物価動向についても「生活必需品を中心とする物価上昇の影響を加味して今年通年のインフレ率は+2.16%」と従来見通し(+2.12%)から上方修正する一方、「来年のインフレ率は+1.89%」と鈍化するとしている。一方、足下の不動産価格の急騰に対応するため、投機を抑制する一方で持ち家向けローンに優先的に資金供給を図るべく、住宅ローンに関連した規制強化に動くとともに、10月1日付で預金準備率を25bp引き上げる一段の金融引き締めに舵を切る方針を明らかにしている。会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は、足下の金融政策のスタンスについて「世界的には緩和の方向に動いているが、我々の金利水準は16年ぶりの高水準ながら世界的にみれば極めて高い水準ではない」、「足下のスタンスは引き締め的とは言いがたく、トーンは幾分中立的である」との認識を示している。その上で、当面の政策運営については「米大統領選の結果が国際金融市場に与える影響を注視している」として、とりわけ台湾ドル相場に与える影響を警戒している様子がうかがえる。よって、先行きの政策運営を巡っては一段の金融引き締めに動く可能性は低いものの、不動産価格の動向をみながら小刻みな対応を続けるものと予想されるほか、台湾ドル相場についても外部環境に揺さぶられやすい展開が続くであろう。
注1 3月21日付レポート「台湾中銀、インフレ再燃を警戒して4会合ぶりとなる再利上げに動く」
注2 6月14日付レポート「台湾中銀は金利据え置きも、不動産を警戒して預金準備率を引き上げ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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