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2024.06.14
アジア経済
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台湾中銀は金利据え置きも、不動産を警戒して預金準備率を引き上げ
~追加利上げの可能性は後退の一方、預金準備率の変更など小刻みなスタンス強化の可能性は残る~
西濵 徹
- 要旨
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- 台湾中銀は13日の定例会合で政策金利を2会合ぶりに2.000%に据え置いた。台湾では昨年後半以降に生活必需品を中心とする物価上昇に加え、台湾ドル安による輸入インフレが警戒され、中銀は3月の定例会合で再利上げに動いた。その後のインフレは一進一退の動きをみせる一方、台湾ドル安圧力がくすぶるものの、中銀は再利上げの効果を見定めるべく今回は様子見姿勢に転じた。他方、昨年後半以降の不動産価格の急上昇に対応すべく、LTV規制の強化と預金準備率の引き上げに動いている。物価動向を勘案すれば先行きは利上げに動く可能性は後退している一方、不動産市況の動向に応じて預金準備率の引き上げなど小刻みな政策変更を通じて引き締め姿勢を強化する余地は残されていると判断できる。
台湾中央銀行は13日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利を2会合ぶりに2.000%に据え置く決定を行った。ここ数年の台湾では、商品高と国際金融市場における米ドル高を反映した通貨台湾ドル安による輸入インフレ、コロナ禍一巡による経済活動の正常化の動きも重なりインフレが上振れしてきた。中銀は一昨年3月に10年半ぶりの利上げに動いたほか、その後も物価と為替の安定を目的に断続利上げを迫られる一方、一昨年半ばにはインフレが一時14年ぶりの高水準となるもその後は頭打ちに転じるなど落ち着きを取り戻す動きがみられた。しかし、昨年後半以降は異常気象による農作物の生育不良をきっかけに多くのアジア諸国が食料インフレに直面するとともに、中東情勢を巡る不透明感の高まりを受けた国際原油価格の底入れも重なり、台湾も食料品やエネルギーなど生活必需品で物価上昇圧力が強まる事態に直面した。さらに、今年1月に行われた総統選では与党・民進党の頼清徳氏が勝利する一方、同時に実施された立法委員(立法院議員)総選挙では最大野党・国民党が議席を増やすとともに、第3極を目指す民衆党と多数派を形成した結果、立法院長に国民党の韓国瑜氏が就任するなど議会と政府は『ねじれ状態』となった。こうした政策運営を巡る不透明感に加え、中国本土との緊張状態が意識されたことで通貨台湾ドル安圧力が強まるなど輸入インフレが再び懸念される事態となったため中銀は3月の定例会合において再利上げに動いた(注1)。その後のインフレは一進一退の動きをみせるとともに、台湾ドル相場は一段と調整の動きを強めるなど輸入インフレが警戒される事態に直面してきた。足下の台湾ドル相場は調整の動きが一服する動きをみせているものの、3月会合時点に比べて台湾ドル安水準で推移しているにも拘らず、今回の定例会合では前回会合での利上げ実施の効果を見定めるべく様子見姿勢に転じている。会合後に公表した声明文では、同国経済について「人工知能(AI)など新興技術に関連する需要の旺盛さを反映して輸出が押し上げられる」とともに「内需も総じて堅調な動きをみせている」として、「今年の経済成長率見通しは+3.77%になる」と3月時点(+3.22%)から上方修正している。また、物価動向について「食料品や家賃、サービス関連で物価上昇圧力がくすぶる」ものの、「年後半にはサービス物価の鈍化が進む」として「今年通年のインフレ率見通しは+2.12%になる」と3月時点(+2.16%)から下方修正している。一方、昨年後半以降に住宅取引が活発化していることを受けて、特定地域を対象に住宅ローンに対するLTV(総資産有利子負債比率)規制の上限を本日(6月14日)付で70%から60%に引き下げる規制強化に動くとともに、来月1日付で預金準備率を25bp引き上げるなど引き締め姿勢を強めている。会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は今回の決定について「金融市場の安定と経済成長に資するもの」とした上で、預金準備率の引き上げについて「銀行の貸出態度が慎重になり、不動産市場への資金流入が抑制される」との見方を示している。その上で、足下のスタンスについて「政策のトーンはさらなる引き締めである」としつつ、先行きの政策運営について「政策変更は段階的で小刻みになる」、「金融引き締めはインフレ期待の抑制に繋がる」との考えを示している。こうした状況を勘案すれば、先行きの政策運営を巡っては利上げなど全面的な金融引き締めに動く可能性は低いと見込まれる一方、住宅価格の動向に応じて預金準備率の引き上げなど小刻みなスタンス変更を行う余地は残されていると判断できる。



注1 3月21日付レポート「台湾中銀、インフレ再燃を警戒して4会合ぶりとなる再利上げに動く」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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阿原 健一郎

