インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

オーストラリア中銀、景気に不透明感もタカ派姿勢崩さず、豪ドルは?

~再度の利上げ検討発言、市場の利下げ織り込みをけん制も、上値の重い展開が続く可能性は残る~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア中銀は6日の定例会合で政策金利を6会合連続で4.35%に据え置いた。インフレは3年以上に亘って中銀目標を上回り、年明け以降は底打ちする一方、6月には頭打ちの動きが確認された。他方、政府の移民抑制策にも拘らず不動産市況は上昇が続いて過去最高を更新する展開が続いている。ただし、不動産市況を巡る状況は地域ごとに跛行色が強まる兆しも出ている。こうしたなか、足下の実体経済は一段の頭打ちが意識される動きがみられるなかで6月の定例会合でタカ派姿勢を強調する姿勢をみせた中銀の見方に注目が集まった。しかし、中銀は四半期ベースのインフレ高止まりを警戒するとともに、インフレ鈍化に時間を要するとの見方を示す。そして、先行きの政策も引き続き引き締め姿勢を維持する考えを強調した。ブロック総裁も前回会合同様に「利上げを検討した」と述べた上で、「向こう6ヶ月の利下げはない」と金融市場における早期の利下げ織り込みの動きを諫める姿勢をみせた。豪ドル相場は米ドル高の一服にも拘らず商品市況の低迷や実体経済の不透明感が米ドルに対する重石となり、円に対しては円高の動きを加速させており、当面は同様の展開が続く可能性に要注意と言えよう。

オーストラリア準備銀行(RBA)は6日に開催した定例会合において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を6会合連続で4.35%に据え置いた。ここ数年の同国においては、商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた豪ドル安による輸入インフレも重なり、インフレが大きく上振れする事態に直面した。よって、RBAは物価と為替の安定を目的に累計425bpもの利上げを実施する金融引き締めに動いたほか、商品高の一巡の動きも相俟ってインフレは一昨年末を境に頭打ちに転じる動きをみせた。しかし、インフレ率は過去3年以上に亘ってRBAの定めるインフレ目標を上回る推移が続いている上、年明け以降は底打ちに転じているほか、金利高の長期化も相俟って家計消費をはじめとする内需の足かせとなる懸念が高まっている。さらに、外需についても最大の輸出相手である中国との関係改善による期待の一方、中国経済そのものを巡る不透明感が重石となっているほか、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引した欧米など主要国経済も勢いを欠くなど足かせとなる材料は山積している。こうした状況を反映して足下の企業マインドは製造業を中心に弱含む動きをみせているほか、比較的堅調な推移をみせてきたサービス業も頭打ちの動きを強めるなど、全般的に景気は一段と勢いを失いつつあると捉えられる。そして、こうした実体経済を巡る動きを受けて、直近6月のインフレ率は伸びが鈍化するとともに、コアインフレ率もともに伸びが鈍化するなど、年明け以降底入れの動きを強めてきた流れに変化の兆しがうかがえる(注1)。一方、金利高の長期化を受けて不動産供給が細るなか、移民をはじめとする外国人来訪者数の堅調な流入を追い風に不動産市況は大都市部を中心に上昇の動きが続いている。なお、昨年以降にアルバニージー政権は不動産需要を抑えるべく移民政策の転換を図っている上、先月からは学生向けビザの申請手数料を2倍(710豪ドル→1600豪ドル)に大幅に引き上げるなどの強硬策に動いている。こうした状況ながら7月の不動産価格も全土平均で前月比+0.5%と17ヶ月連続で上昇するとともに、市況そのものも過去最高値を更新する展開をみせている。ただし、8つある州、及び特別区の州都のうちメルボルン(ビクトリア州)、ダーウィン(ノーザンテリトリー)、ホバート(タスマニア州)の3都市では下落に転じるなど不動産市況を取り巻く環境は変化しつつある。こうしたなか、RBAは6月の定例会合で政策金利を据え置く一方、会合後の記者会見で同行のブロック総裁が利上げを検討したことを明らかにするなど『タカ派』姿勢を示したものの(注2)、上述のようにその後の実体経済を巡る環境には不透明感が高まるなかで姿勢が変化するかが注目された。しかし、会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について「インフレは目標を上回り、その持続性も証明されている。四半期ベースの基調インフレ率は過去1年間ほぼ低下していない」との認識を示しており、上述のように月次ベースのインフレは頭打ちの兆しをみせるも、四半期ベースのインフレ動向を意識していることが確認された。その上で、実体経済について「見通しは依然として非常に不透明」としつつ「インフレを目標域に回帰させるプロセスは遅く、困難を極めている」との見方を示している。そして、インフレ見通しを「コアインフレ率は今年末に+3.5%、来年末に+2.9%」と来年末時点でようやく目標域に回帰するとした上で、先行きの政策金利の見通しを巡っても来年前半に利下げに転じるとの見通しを示している。また、先行きの政策運営について引き続き「インフレを目標域に戻すことが最優先事項」とした上で、「長期的なインフレ期待はインフレ目標と一致している」としつつ「基調インフレが依然高過ぎるなかでインフレが持続的に目標域内で推移するには時間を要する」、「引き続き上振れリスクを警戒する必要があり、如何なる状況も容認も否定もせず、インフレ抑制が確信されるまで十分に引き締めたものとする必要がある」とこれまで同様にタカ派姿勢を堅持する考えをみせた。政策運営についてもこれまで同様に「データとリスク次第」としつつ「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」という従来からの考えをあらためて示した。会合後に記者会見に臨んだブロック総裁も「インフレ目標の実現が長期化するリスクがある」との認識を示した上で、「金融市場の動揺を注視する必要性を議論した」としつつ「政策金利は長期に亘って高止まりする必要があるかもしれない」、「近い将来の利下げは理事会の考えと一致せず、利下げは当面の議題ではない」、「利上げを検討しており必要に応じて利上げの用意がある」と述べるなど、6月の前回会合同様にタカ派姿勢を堅持した格好である。その上で、「今後6ヶ月以内に利下げを実施するとの金融市場の見方は理事会の考えとは一致しない」と述べるなど、これまでも金融市場における早期の利下げ織り込みの動きを諫める姿勢をみせてきたものの、そうした考えを具体的な期間を示しつつ表明した格好である。なお、足下の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出ているにも拘らず、豪ドルの対米ドル相場は中国経済の不透明感を反映した商品市況の調整の動きに加え、実体経済を巡る不透明感も相俟って上値が抑えられる展開が続いてきたが、ブロック総裁の発言はそうした動きに対するけん制の意味が強いと捉えられる。さらに、日本円に対しては豪ドルの対米ドル相場が調整の動きを強めてきたことに加え、日本円が米ドルに対して強含みする動きをみせたことも重なり急速に頭打ちの動きを強めてきた。実体経済を取り巻く状況を勘案すればRBAが利上げに動くことは難しいと見込まれる一方、商品市況の低迷が長引く可能性が高まるなかで豪ドルの対米ドル相場は上値が抑えられやすい展開が続くと見込まれる上、日本円に対しては米ドル/日本円相場の動向にも引き続き揺さぶられやすい展開が続く可能性に留意する必要性がある。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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