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2024.08.01
アジア経済
アジア金融政策
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為替
オーストラリア物価は四半期と月次で異なる動き、豪ドルへの影響は
~利上げ観測後退、中国を巡る不透明感や商品市況が相場の重石に、米ドル/円相場の動きも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリアでは長らく物価統計が四半期ベースで公表されてきたが、物価対応で後手を踏んだとの見方が広がり、昨年半ばから月次ベースでの公表が始まった。ただし、中銀は依然四半期ベースの物価動向を注視しているとみられる一方、足下の物価動向は四半期と月次の間で動きに違いが生じている。4-6月のインフレ率は前年比+3.8%と前期(同+3.6%)から加速したが、これは4~5月の物価上昇が影響している。6月のインフレ率は前年比+3.8%と前月(同+4.0%)から鈍化しており、インフレ懸念は後退したと捉えられる。中銀が6月にタカ派姿勢を堅持した上、その後のインフレ加速を受けて金融市場では利上げ観測が高まる兆しがみられたが、先行きは一服すると見込まれる。他方、豪ドル相場は中国経済を巡る不透明感や商品市況の調整の動きが重石となる動きがみられ、米ドルに対して上値が抑えられる展開が見込まれる。日本円に対しては円高が調整の動きを加速させており、米ドル/円の動向に注意する必要があろう。
オセアニア諸国(オーストラリア、ニュージーランド)の物価統計を巡っては、長らく四半期ベースで公表されてきたことで物価動向を適時適切に把握することが難しく、金融政策の判断にも少なからず影響を与えてきたと捉えられる。ここ数年の両国は、商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化の動きに加え、国際金融市場における米ドル高を受けた自国通貨安による輸入インフレも重なり、インフレが大きく上振れして中銀目標を大きく上回る事態に直面してきた。これを受けて中銀は物価と為替の安定を目的とする大幅利上げに動いたものの、その後もインフレ率は中銀目標を上回る推移が続いたため、中銀は物価対応で『後手を踏んだ』との見方が強まった。こうしたことから、オーストラリアでは一昨年半ばから月次ベースの物価統計の公表を開始するなど、適時適切な動向把握と政策運営への反映を目指す取り組みがみられる。他方、オーストラリア準備銀行(RBA)が金融政策の方向性を巡って公表する資料においては、依然として四半期ベースの物価動向を注視している様子がうかがえるなど、具体的な政策決定においてはいずれの物価動向を重視しているかは見方が分かれている。こうしたなか、31日に公表された4-6月のインフレ率は前年同期比+3.8%と中銀目標(2~3%)の上限を上回る推移が続いている上、前期(同+3.6%)から伸びが加速しており、一昨年末を境に頭打ちの動きを強めてきた流れが変化している様子が確認されている。前期比の伸びも+1.02%と前期(同+0.96%)から上昇ペースがわずかに加速しており、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心に幅広く財価格が押し上げられているほか、雇用環境の堅調さを追い風にサービス物価も上昇の動きが続くなど、全般的にインフレ圧力が強まっていることが影響している。オーストラリアでは、物価変動の大きい分野を除いたトリム平均値(刈り込み平均値)ベースのインフレ率をコアインフレ率としており、4-6月は前年同期比+3.9%と前期(同+4.0%)から伸びは鈍化するも、中銀目標のみならずインフレ率をも上回る伸びが続いている。前期比ベースの伸びも+0.8%と前期(同+1.0%)から上昇ペースは鈍化しているものの、サービス物価の上昇が続いているほか、財物価のなかでも非貿易財を中心に上昇圧力がくすぶる動きが確認されるなど、インフレ鎮静化にはほど遠い状況にあると捉えられる。他方、一昨年半ばから公表が始まった月次ベースのインフレ動向では異なる姿がみえることに留意する必要がある。6月単月のインフレ率は前年同月比+3.8%と中銀目標を上回る推移が続くも前月(同+4.0%)から伸びが鈍化しており、過去数ヶ月に亘って底入れの動きをみせてきた流れに一服感が出ている。前月比は+0.49%と前月(同▲0.08%)から2ヶ月ぶりの上昇に転じているものの、生活必需品の物価上昇圧力は後退する一方、サービス物価が大きく上振れしており、なかでも観光関連の物価が大きく上振れしていることが影響している。よって、トリム平均値ベースのコアインフレ率も7月は前年同月比+4.1%と前月(同+4.4%)から伸びが鈍化している。さらに、上述のように観光関連の物価が月ごとに振れる傾向があるなかで中銀は物価変動の大きい財と観光関連を除いたベースの物価動向を注視しているなか、7月は前年同月比+4.0%と前月(同+4.0%)から横這いで推移している。よって、上述した四半期ベースの物価動向は4月や5月における上昇の動きが影響して加速しているものの、6月単月でみれば底入れの動きに一服感が出るなどインフレ懸念が後退していると捉えられる。なお、RBAは6月の定例会合において政策金利を据え置くも利上げの検討を明らかにして『タカ派』姿勢を堅持しており(注1)、その後は月次ベースのインフレ加速が確認されたことで金融市場では利上げが意識される動きがみられた。しかし、足下の実体経済は物価高と金利高の共存状態が長期化するとともに、最大の輸出相手である中国経済を巡る不透明感も重なり頭打ちの動きを強めるなど追加利上げのハードルは高いなか、インフレ鈍化が確認されたことで利上げ観測の後退が予想される。他方、このところの国際金融市場では米ドル高の動きに一服感が出ているにも拘らず、豪ドルの対米ドル相場は中国経済を巡る不透明感やそうした見方を反映した商品市況の調整の動きが重石となっているほか、日本円に対してはこのところの円高の動きも追い風に急速に調整の動きが進んでいる。RBAによる追加利上げの可能性が後退している上、商品市況の低迷が長引く可能性が高まるなかで豪ドルの対米ドル相場は上値が抑えられやすい展開が続くと見込まれる上、日本円に対しては米ドル/日本円相場の動向にも揺さぶられやすくなっていることに留意する必要性が高まっている。



注1 6月18日付レポート「オーストラリア中銀はタカ派姿勢堅持、豪ドルの底堅さを促すか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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