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2024.07.23
アジア経済
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米ドル高一服にも拘らず台湾ドル安圧力が強まるのはなぜか?
~米大統領選の動きに加え、半導体産業や台湾情勢を巡る不透明感など外部環境に不安要素が山積~
西濵 徹
- 要旨
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- このところの国際金融市場では、米国のインフレ鈍化を受けた米FRBの利下げ期待を反映して米ドル高の動きに一服感が出ている。こうした動きを反映して多くの新興国通貨で調整圧力が後退しているものの、台湾ドルについてはジリ安の展開が続く対照的な動きをみせる。米大統領選を巡って対中強硬姿勢が強まることによる台湾情勢への影響、トランプ前大統領が台湾を念頭にディールを示唆する動き、対中半導体規制強化の懸念も重なり、金融市場で半導体関連産業を巡る状況が厳しさを増していることが影響している。米大統領選を巡る動きに変化の兆しはあるが、米中摩擦は早々に解消する見通しは立たず、台湾情勢の複雑化も懸念されるなか、当面の台湾ドル相場は不透明感がくすぶる展開となる可能性は高まっている。
このところの国際金融市場においては、米国におけるインフレ鈍化の動きが確認されるとともに、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施が意識される状況を反映して米ドル高の動きに一服感が出ている。ここ数年の多くの新興国では、商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化の動きに加え、米ドル高による自国通貨安が輸入インフレ圧力を増幅させる形でインフレが上振れする状況に直面してきた。よって、多くの新興国は物価と為替の安定を目的とする断続利上げを余儀なくされるとともに、その後も長期に亘って引き締め策を維持する必要に迫られた結果、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる懸念に直面している。他方、世界的なインフレを招いた商品高は一昨年末以降に一巡する動きがみられたほか、こうした動きを反映して多くの国で上振れしたインフレも頭打ちに転じるなど物価を取り巻く環境は変化している。しかし、その後も国際金融市場における米ドル高を受けた自国通貨安が輸入インフレ圧力を招く懸念がくすぶるとともに、アジア新興国においては異常気象を理由とする食料インフレ圧力が強まっており、食料品を輸入に依存する国々にとっては自国通貨安の悪影響が色濃く現われやすい状況が続いている。こうしたなか、食料品やエネルギーなど生活必需品を海外からの輸入に依存している台湾では、中銀が台湾ドル安によるインフレの再燃を警戒して3月の定例会合において4会合ぶりの利上げに動く一方(注1)、先月の定例会合では政策金利を据え置くも、このところの不動産価格の上昇に対応して預金準備率を引き上げるなど金融引き締めの動きを維持する対応をみせている(注2)。インフレ率は一昨年半ばを境に頭打ちの動きを強めてきたものの、足下では食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力がくすぶる展開が続いており、台湾ドル相場や住宅価格の動向に応じた政策調整を迫られる展開が続いている。こうしたなか、上述のように足下では米ドル高の動きに一服感が出ており、多くの新興国通貨は上昇に転じて輸入インフレ圧力の後退に繋がる動きがみられるものの、台湾ドルについてはジリ安の展開が続くなど他の新興国通貨と異なる動きをみせており、輸入インフレの懸念がくすぶる展開となっている。この背景には、11月の米大統領選の行方が米国の対中政策に影響を与えるとともに、台湾情勢に少なからず影響を与えることが警戒されている。さらに、共和党候補のトランプ前大統領は台湾の半導体産業を念頭に、米国の対アジア戦略への『ただ乗り』を批判する姿勢をみせるなど何らかのディール(取引)を示唆する発言を行っている。また、米国による対中姿勢の硬化を受けて仮に両国が台湾周辺における軍事活動を活発化させることにより偶発的な衝突に繋がるリスクが意識される懸念も高まっている。そして、米国が中国に対する半導体規制を強化するとの警戒感が広がっており、金融市場においては半導体関連銘柄などで株価に下押し圧力が掛かる動きがみられるなか、世界的に半導体関連産業の集積度合いが高い台湾に対しても売り圧力が掛かりやすい地合いとなっていると捉えられる。こうした外部環境も影響して、台湾は株式、通貨(台湾ドル)、債券のすべてに売り圧力が掛かるトリプル安に直面に直面している。なお、民主党候補であった現職のバイデン大統領は大統領選からの撤退と、ハリス副大統領を大統領候補として支持する方針を明らかにしており、今後の大統領選を巡る動きが変化する可能性は高まっている。しかし、いずれの候補が勝利した場合も米中摩擦が早々に解消する見通しは立ちにくい上、台湾問題が複雑化することも予想されるなかで台湾ドルを巡る状況に不透明感がくすぶる展開が続く可能性は高まっている。


注1 3月21日付レポート「台湾中銀、インフレ再燃を警戒して4会合ぶりとなる再利上げに動く」
注2 6月14日付レポート「台湾中銀は金利据え置きも、不動産を警戒して預金準備率を引き上げ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

