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- 欧州議会で右派の合従連携
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- ハンガリーのオルバン首相は、欧州議会内に新たな右派会派を結成する。オーストリア、イタリア、フランスの極右政党に加えて、無所属の新興右派政党が合流する可能性がある。イタリアのメローニ首相が率いる保守会派とともに、EUに懐疑的な勢力が欧州議会内での影響力を増している。フランスの極右政権誕生は予断を許さないが、2日にオランダで極右が主導する連立政権が誕生し、オーストリアでも9月の総選挙後に極右が主導する連立政権が誕生する可能性がある。EUに懐疑的な政党が率いる政権が増えており、EUの意見集約が困難になることが予想される。
親EU派が過半数を確保した欧州議会で、EUに懐疑的な右派政党間の合従連携の動きがある(図表1・2)。ハンガリーのオルバン首相は、自身が率いる右派ナショナリスト政党「フィデス」と、チェコの前政権与党「不満のある市民の行動(ANO)」、9月の総選挙で政権奪取の可能性があるオーストリアの極右政党「自由党(FPO)」とともに、新たな右派会派を結成する。
同会派には、欧州議会選挙で会派に所属していなかった中東欧の新興右派政党や、イタリアで連立政権に加わる極右政党「同盟(Lega)」などが合流する可能性が高い。また、フランスで7日の下院・決選投票で政権奪取の機会を窺う極右政党「国民連合(RN)」も、選挙後に現在所属する極右会派「アイデンティティと民主主義(ID)」を解体し、新たな右派会派に合流する可能性が取り沙汰されている。その場合、統一右派内の主導権争いをオルバン氏に譲ることにつながるが、支持基盤の更なる拡大に向けて極右のイメージを和らげる狙いもある。


フィデス、ANO、FPOの新会派結成の動きに、現在IDに所属する右派政党の全てが合流した場合、イタリアのメローニ首相が率いる保守会派「欧州保守改革(ECR)」や、親EUのリベラル会派「欧州刷新(リニュー・ヨーロッパ)」と匹敵する勢力となる(図表3)。さらに無所属右派のうち、ナチスを巡る不適切発言でIDを追放されたドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を除いた全政党が合流した場合、中道右派「欧州人民党(EPP)」、中道左派「社会民主進歩同盟(S&D)」に次ぐ第三勢力の地位を固める。穏健化による支持拡大を目指す右派勢力はAfDと距離を置いており、AfDが新会派に合流する可能性は今のところ低い。AfDも合流すると中道左派と第二会派の座を争うことになる。

欧州議会選挙での親EU会派の過半数保持を受け、6月末の欧州首脳会議では、中道右派出身のフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の続投と、中道左派出身のポルトガルのコスタ前首相を欧州理事会常任議長(EU大統領)に、リベラル会派出身のエストニアのカラス首相を外交・安全保障上級代表に充てる人事案が合意された。親EU会派によるポスト独占に不満を持つ保守会派を率いるイタリアのメローニ首相は、フォン・デア・ライエン氏の続投を巡る投票を棄権し、コスタ氏とカラス氏の新任投票に反対票を投じたとされる。フォン・デア・ライエン氏の委員長就任を決めた欧州議会での前回の承認投票は、親EU会派内からも造反が相次いだ。7月18日頃を予定する欧州議会での承認投票に不安を抱える。今のところ保守会派と新興右派会派間の協力模索を伝える報道は見当たらない。両会派が連携する場合、中道左派を抜き、第二勢力となる可能性がある。欧州議会運営やEUの高官人事を通じて、EUの政策運営への影響力強化を目指すだろう。
かつてのEU懐疑政党の多くはEUやユーロからの離脱を主張したが、最近はEUの中にとどまって変革を促すことを目指している。フランスで極右政権が誕生するかどうかは予断を許さないが、昨年11月の総選挙で極右政党が第一党となったオランダでは2日、非政治家の元情報機関トップで法務省高官のスホーフ氏を首相とする極右政党、リベラル政党、中道政党、新興右派政党の保守系4党による連立政権が発足した。9月のオーストリア総選挙でも極右政党が首位を守り、政権を率いる可能性がある。欧州各国でEUに懐疑的な政党が率いる政権が増えており、欧州理事会での意見集約が困難になることが予想される。
田中 理
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