インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

韓国景気は外需主導で底入れ続くも、先行きは国内・外双方に不透明要因山積

~今年の成長率は中銀見通し(+1.4%)の実現可能性は低く、来年も勢いの乏しい展開が続く見通し~

西濵 徹

要旨
  • 昨年の韓国経済は、物価高と金利高の共存が内需、中国をはじめとする世界経済の減速が外需の重石となる状況が続いた。年明け以降はインフレ鈍化に加え、中国のゼロコロナ終了が景気の追い風になることが期待された。インフレ鈍化を受けて中銀は利上げ休止に動く一方、世界経済を巡る不透明感は高まるなど好悪双方の材料が混在する。また、足下では商品市況の底入れの動きやウォン安によりインフレが底打ちしており、中銀は引き締めバイアスを維持する対応を迫られるなど、景気への不透明要因が増している。
  • 景気は昨年末を境に底入れする動きが確認されるなか、7-9月の実質GDP成長率も前期比年率+2.43%と底入れが続いている。世界経済の減速懸念にも拘らず輸出は底打ちする一方、インフレ鈍化にも拘らず内需は力強さを欠く展開が続いており、公的需要への依存度を強めている。さらに、内需の弱さを反映して輸入は輸出を下回るペースの拡大に留まり、純輸出の成長率寄与度はプラスで推移する展開が続いている。よって、足下の景気は公的需要や外需に対する依存度を一段と強めているものと捉えられる。
  • 中国は景気対策に舵を切るも、その規模や内容を勘案すれば不透明感を払しょくし得るかは見通しが立たない。さらに、インフレ再燃や利上げの累積効果が内需の重石となるなかで家計、企業ともにマインドは低下しており、当面の景気は下振れ圧力に晒されやすい。当研究所は8月に今年の経済成長率が+1.2%と中銀見通し(+1.4%)を下回ると予想したが、現時点においてはこの見通しを据え置くこととする。

韓国経済を巡っては、コロナ禍一服により経済活動の正常化が進む一方、昨年は物価高と金利高の共存が家計消費をはじめとする内需の重石となるとともに、最大の輸出相手である中国景気の減速が外需のみならず、金利高も重なり企業部門の設備投資の足かせとなるなど、内・外需双方で景気に下押し圧力が掛かる状況に直面した。なお、昨年末以降に中国がゼロコロナ戦略の終了に舵を切ったことを受けて、その後の中国景気は底入れが進むことが期待されたものの、長期化したゼロコロナや不動産市況の低迷などが足かせとなる形で勢いを欠く展開が続いている。さらに、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米をはじめとする主要国の景気も、物価高と金利高の共存状態が長期化するなかで頭打ちの兆候を強めており、外需を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。他方、昨年末以降はインフレを招いた商品高と米ドル高の動きが一巡したことを受けて、一時は24年ぶりの水準に高進したインフレ率は頭打ちに転じたため、中銀は今年2月に1年半に及んだ利上げ局面を休止させており、その後も金利を据え置く対応が続くなど景気に配慮する姿勢をみせている。しかし、中銀が政策金利を据え置くなかで、大都市部を中心とする不動産市場への資金流入の動きが進み、その背後で家計債務は再び膨張するなど金融リスクが高まる動きが顕在化しており、中銀は今月の定例会合において6会合連続の金利据え置きを決定する一方、家計債務と不動産市況を警戒する考えを示すなど難しい対応を迫られている(注1)。さらに、主要産油国による自主減産の延長に加え、足下では中東情勢を巡る不透明感が高まっているほか、異常気象の頻発に伴う農作物の生育不良が相次ぐなかで農産物などの輸出禁止や制限に動く国が広がりをみせており、商品市況は底入れの動きを強めるなど食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレ再燃に繋がる懸念が高まっている。そして、商品市況の底入れは世界的なインフレの長期化を促すとの懸念を反映して米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀による引き締め姿勢が長期化するとの見方が強まり、こうした見方を受けて国際金融市場においては米ドル高の動きが再燃している。結果、上述のように昨年末以降のインフレ率は頭打ちの動きを強めたものの、足下においては商品高や米ドル高の再燃を反映してインフレは一転して底打ちしており、中銀目標から再び乖離する動きをみせている。こうしたことは、中銀は今月の定例会合において再利上げに含みを持たせる姿勢をみせる一因となる一方、上述のように国内・外双方に景気の不透明要因が増大する動きがみられるなかでは再利上げのハードルは高く、中銀による政策運営は困難さが増していると捉えられる。

図 1 インフレ率の推移
図 1 インフレ率の推移

図 2 ウォン相場(対ドル)の推移
図 2 ウォン相場(対ドル)の推移

上述のように、年明け以降はインフレが鈍化して実質購買力の押し上げに繋がることで内需の底入れが促される一方、外需を取り巻く環境には好悪双方の材料が混在するなど不透明な状況が続いているものの、昨年末を境に景気は底入れの動きを強める展開が続いてきた。7-9月の実質GDP成長率(速報値)も前期比年率+2.43%と前期(同+2.46%)からわずかにペースこそ鈍化するも3四半期連続のプラス成長で推移している上、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+1.4%と前期(同+0.9%)から加速して3四半期ぶりに1%を上回る伸びとなるなど、景気底入れの動きが着実に進んでいる様子がうかがえる。中国景気をはじめとする世界経済に対する不透明感が強まっているものの、前期に輸出が減少した反動も重なり2四半期ぶりのプラスに転じるなど、景気底入れの動きを促す一助となっている。また、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、高齢層を中心とする雇用改善の動きも重なり家計消費も2四半期ぶりのプラスに転じるなど景気下支えを促しているものの、コロナ禍の一服を受けたペントアップ・ディマンド(繰り越し需要)の動きは一巡するなど力強さを欠く展開が続いている。さらに、上述のように外需は拡大しているものの、先行きに対する不透明感の高さや金利高が重石となる形で企業部門による設備投資は弱含む展開が続いており、幅広く内需は力強さに乏しい動きが続いている。他方、政府は今年度予算においてコロナ禍対応を目的とする財政刺激策の縮小に動く一方、隣国である北朝鮮を巡る脅威が高まっていることを受けて防衛関連予算を拡充する動きをみせており、こうした状況を反映して足下では公的部門を中心に固定資本投資が押し上げられるなど、景気は公的需要への依存度を強めている。なお、内需の弱さを反映して輸入の拡大ペースは輸出を下回る水準に留まり、これに伴い純輸出(輸出-輸入)の成長率寄与度は前期比年率ベースで+2.29ptと成長率(+2.43%)並みの水準となっており、前期に比べてプラス幅は縮小しているものの、足下の景気は外需への依存度を強める展開が続いている。

図 3 実質 GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移
図 3 実質 GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移

図 4 実質 GDP 成長率(前期比年率)の推移
図 4 実質 GDP 成長率(前期比年率)の推移

先行きについては、中国が財政出動による景気下支えに動く姿勢をみせているものの、新規国債の発行規模はGDP比で1%にも満たず、構造問題が景気の足かせとなる状況が続くなかで景気の本格回復を促すものとなり得るかは見通しが立たない。さらに、欧米など主要国景気も頭打ちの兆候をみせている上、先行きは一段の下押しに繋がる材料が山積していることを勘案すれば、総じて外需を取り巻く状況は厳しさを増すことは避けられなくなっている。他方、上述のように足下のインフレ率は底入れの動きを強めるなど実質購買力に下押し圧力が掛かる動きがみられる上、中銀の利上げ実施による累積効果も家計消費や企業部門の設備投資など内需の足かせとなり得る展開が続くことを勘案すれば、当面の景気は内・外需双方に下押し圧力が掛かりやすい状況が予想される。事実、こうした状況を反映して足下においては家計、企業ともにマインドに下押し圧力が掛かる動きが確認されており、当面の景気は一転して下振れの様相を強める可能性が高いと見込まれる。なお、中銀はGDP統計の公表に併せて、足下の景気動向について「輸出低迷の動きは徐々に和らいている」との見方を示す一方、「家計消費は借入コストの増大が足かせとなるなか、先行きは緩やかな回復に留まる」とするなど、内需の行方が景気のカギを握るとの見通しを示している。中銀は直近の経済見通しにおいて今年通年の経済成長率見通しを+1.4%としているものの、9月までの累計ベースの成長率は+1.1%に留まることから、見通し実現のハードルは極めて高いと判断出来る。当研究所は8月に今年の経済成長率が+1.2%となるとの見通しを示す一方(注2)、その前提となる7-9月は前期比年率+2.37%と速報値をやや下回る水準としていたものの、先行きに対する不透明感は8月時点に比べて高まっていることを勘案し、現時点においてはこの見通しを据え置くとともに、中銀見通しの実現は困難と判断する。さらに、来年の景気も力強さの乏しい展開が続く可能性が高まっている。

図 5 消費者信頼感と企業景況感(全産業)の推移
図 5 消費者信頼感と企業景況感(全産業)の推移

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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