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2023.10.12
アジア経済
韓国経済
韓国・首都ソウルの区長補選で野党大勝、次期総選挙への影響必至
~中道層が多い同区で野党候補が大差で勝利、総選挙に向けて様々な影響が出る可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- 韓国では来年4月に総選挙が予定されている。昨年発足した尹政権への「中間評価」となる一方、大統領と国会のねじれ状態が続くなかで如何なる構図となるか注目される。ただし、尹政権の支持率は低空飛行状態が続くなか、野党・共に民主党の李在明代表に対する逮捕状請求が最終的に棄却されたことを受け、与野党間の対立が一段と激化している。こうしたなか、総選挙の前哨戦として注目された首都ソウル特別市の江西区長選(補選)が11日に実施された。結果は共に民主党の候補が圧勝し、中道層が多い同区を含むソウルでの野党優位が示された。今後は与党内で執行部批判が強まる可能性が高まろう。他方、尹政権下で改善が進む日韓関係を巡っても、次期総選挙の行方如何では状況が変化する可能性にも要注意である。
韓国では、来年4月10日に国会(一院制:総議席数300)の総選挙の実施が予定されており、残り半年を切るとともに、その結果は昨年の大統領選を経て発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に対する『中間評価』となることも含め、その行方に注目が集まっている。2020年に実施された前回総選挙においては、当時の文在寅(ムン・ジェイン)前政権によるコロナ禍対応を追い風に、同政権を支える革新政党・共に民主党が圧勝を果たしたことにより、大統領と国会のねじれ状態が解消された(注1)。ただし、上述のように昨年の大統領選では保守政党・国民の力から出馬した尹錫悦氏が勝利して政権交代となるとともに、再びねじれ状態が生じており(注2)、次期総選挙の行方に注目が集まった。尹政権に対する支持率は発足直後こそ50%程度あったものの、与党内におけるスキャンダル発覚や与党、政府内の人事を巡る問題をきっかけに早々に急落したほか、その後も低空飛行状態が続いている。こうした状況ながら、尹政権は懸案であった日韓関係の改善に向けた意欲をみせるとともに、北朝鮮問題を巡って米韓同盟を軸に、米国や日本との関係を重視する姿勢をみせるなど、前政権から大きく方向性を転換する動きをみせてきた。さらに、福島第1原子力発電所における処理水の海洋放出処理を巡っては、同国政府は自国海域に及ぼす影響はほとんどない旨の独自の検証結果を公表する一方、最大野党の共に民主党は李在明(イ・ジェミョン)代表を中心に抗議するなど対立姿勢をみせた。ただし、この背景には検察が李氏の背任容疑や北朝鮮への不正送金容疑を巡る捜査を展開したことを受けて、その妨害を目指したものとの見方も示されるなか、最終的に検察が逮捕状を請求した。国会会期中の現職議員の逮捕には国会の同意が必要となるなか、先月国会に上程された逮捕同意案の審議では共に民主党からの造反者が相次いで可決される異例の事態となった。しかし、その後にソウル地裁は検察が請求した逮捕状発布の有無に関する審査において、検察が主張する証拠隠滅の恐れを立証する根拠が不充分であることを理由に請求を棄却し、李氏は逮捕を免れるとともにその政治生命を巡っても『起死回生』が図られた。なお、李氏を巡ってはすでに今回逮捕状請求が棄却された容疑とは別の背任容疑、及び公職選挙法違反容疑で在宅起訴されており、本日(12日)付で今回の容疑に関しても追加で在宅起訴されている。仮に李氏が逮捕される事態となれば、共に民主党にとって大打撃となるとともに、国会に上程された同意案での造反者発生の動きも相俟って党内対立が表面化するなど混乱激化が予想されたものの、収束が図られたとみられる。他方、国民の力にとっては、地裁による逮捕状の請求棄却決定を受けて李氏、そして共に民主党が息を吹き返すとともに、次期総選挙に向けて一転して攻勢を強めることが予想されるなど、対立の激化は避けられなくなっている。こうしたなか、11日に首都ソウル特別市の江西(カンソ)区の区長選(補欠選挙)が実施され、共に民主党から出馬した元警察庁次長の陳校薫(チン・ギョフン)氏が勝利した、今回の選挙を巡っては、前区長であった国民の力所属の金泰佑(キム・テウ)氏が、青瓦台特別監察班に勤務していた当時の文前政権による監察隠ぺいの暴露を理由に今年5月に有罪(公務上の秘匿を漏洩した罪)が確定して一旦失職するも、8月に尹政権が特別赦免したことで返り咲きを果たすべく出馬した経緯がある。よって、選挙結果は次期総選挙の『前哨戦』としてのみならず、中道層が多く近年の選挙では左右双方が拮抗する展開が続く同区を含む首都ソウル市民の判断を見定める上で重要視された。投票率は48.7%と昨年6月の前回選挙時から微減となったものの、期日前投票は過去最高となるなど関心が高まったことが示されるとともに、陳氏の得票率は56.52%となる一方で金氏の得票率は39.37%に留まるなど17.15ptの大差を付けて陳氏が勝利しており、次期総選挙に向けて共に民主党は勢い付く結果となった。なお、今回の結果を巡っては、凶悪事件が相次ぐなど治安に対する懸念が高まるなかで警察出身者を候補者にした共に民主党の戦略が奏功する一方、今回の補欠選挙が実施される元凶となった金氏を国民の力が推したことが裏目に出たとの見方があるものの、中道層が多い地域で予想外の大敗を喫したことを受けて国民の力内で執行部に対する批判が高まることも予想される。その意味では、尹政権の下で改善が図られている日韓関係を巡っても、次期総選挙の行方如何では再び揺れ動く可能性に注意する必要があるものと捉えられる。
注1 2020年4月16日付レポート「韓国・総選挙、新型肺炎対策が奏功して与党が圧勝」
注2 2022年3月10日付レポート「韓国大統領選は尹氏勝利で政権交代も、期待値を上げない対応が肝要」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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