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2023.07.25
アジア経済
アジア金融政策
インドネシア経済
為替
インドネシア中銀、6会合連続で金利据え置き、引き続き外部環境に要注意
~インフレ鈍化を好感の一方、ルピア相場安定策の背後で国際金融市場の動揺への耐性は低下~
西濵 徹
- 要旨
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- インドネシア経済はコロナ禍からの景気回復が進む一方、昨年は商品高やルピア安に伴う輸入インフレも重なり、インフレ率が大きく上振れする事態に直面した。中銀は昨年8月に利上げに動き、その後も物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを迫られた。しかし、昨年末以降は商品高が一服し、米ドル高も一巡するなかでインフレ率は鈍化しており、中銀は今年2月に利上げ局面を休止させた。その後もインフレは鈍化の動きを強める一方、外需を取り巻く環境は厳しさを増しているなか、中銀は25日の定例会合でも6会合連続で政策金利を据え置いている。中銀は景気と物価の安定に自信をみせる一方、ルピア相場の安定に向けた為替介入に伴い外貨準備高は減少しており、国際金融市場の動揺への耐性は低下している。外部環境の状況如何では政策対応を巡る困難さが増すなど、その動向に注意を払う必要性は高い。
インドネシア経済を巡っては、コロナ禍からの景気回復が進む一方、昨年は商品高による生活必需品を中心とする物価上昇、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ルピア安に伴う輸入インフレが重なり、インフレ率は中銀の定めるインフレ目標を上回るとともに、一時は約7年ぶりの水準に加速する事態に直面した。中銀は昨年8月に利上げに舵を切るとともに、その後もインフレが高止まりしたことを受けて、物価と為替の安定を目的に断続、且つ大幅利上げを余儀なくされるなど難しい対応を迫られた。なお、インフレ率は昨年9月をピークに頭打ちに転じたものの、その後もインフレ目標を上回る水準で推移するなど物価高と金利高の共存状態が続いており、景気に冷や水を浴びせる懸念が高まった。しかし、昨年末以降は商品高の動きが一巡するとともに、国際金融市場における米ドル高の動きも一服するなどインフレ要因が後退しており、結果的にインフレ率は鈍化のペースを強めている。このように物価を取り巻く状況が変化したことを受けて、中銀は今年2月に半年ほどに及んだ利上げ局面の休止に動き、その後も商品市況は調整するとともに、米ドル高の動きが後退していることも重なり、中銀は政策金利を据え置く対応を続けている。また、その後もインフレ率は鈍化のペースを強めており、足下ではインフレ目標の域内に回復するなど落ち着きを取り戻している。同国経済を巡っては、家計消費をはじめとする内需がけん引役となってきたなか、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げは景気の追い風となることが期待される。一方、中国経済の頭打ちに加え、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国の景気にも不透明感が強まるなど、外需を取り巻く環境は厳しさを増しているほか、商品市況の調整の動きは交易条件の悪化が国民所得を下押しして景気の足を引っ張る懸念が高まっている。さらに、こうした外部環境を巡る不透明感や商品市況の調整の動きは通貨ルピア相場の重石となっているほか、国際金融市場における米ドル相場の動向も相俟って物価動向に影響を与える懸念はくすぶる。こうしたなか、中銀は25日に開催した定例会合において政策金利である7日物リバースレポ金利を6会合連続で5.75%に据え置く決定を行うなど、利上げ局面の休止状態を維持している。会合後に公表した声明文では、世界経済について「不確実性は高い」との認識を示す一方、同国経済について「4-6月の景気は想定を上回る見通しとなっている」としつつ「今年通年の経済成長率は+4.5~5.3%になる」との従来見通しを据え置いている。一方、ルピア相場を巡っては「世界経済を巡る不透明感が重石になっている」としつつ、「不透明感が後退するとともに上昇が期待される上、輸出業者に対する資金移動制限措置(輸出代金の3割を3ヶ月間に亘り国内で保有することを義務付けた規制)も追い風になる」との見方を示している。また、物価動向についても「想定以上の鈍化が続くと見込まれ、年内はインフレ目標の域内で推移する」ほか、来年についても「目標(1.5~3.5%)域内での推移が続く」との見通しを示している。なお、足下のルピア相場は比較的落ち着いた推移をみせているものの、その背後では外貨準備高は減少している。6月末時点における外貨準備高はIMF(国際通貨基金)が示す国際金融市場の動揺への耐性の有無を判断する適正水準評価(ARA(Assessing Reserve Adequacy))に照らして『適正水準』とされる100~150%の下限をわずかに下回ると試算されるなど、国際金融市場への耐性は着実に低下している。よって、仮に外部環境に再び不透明感が強まれば、ルピア安圧力が再燃するとともに、為替介入の原資である外貨準備高が充分とは言えないなかで対応に苦慮する事態も予想される。当面の金融政策を巡っては過度に楽観出来ない状況に直面する可能性に要注意と捉えられる。



西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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