インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド中銀、物価抑制を重視して予想を上回る大幅利上げ継続

~米ドル高一服でNZドル相場は底入れするも、当面は上下双方に方向感に乏しい展開が続くと予想~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランド中銀は5日の定例会合において、11会合連続の利上げに加え、利上げ幅を2会合連続で50bpとする決定を行った。同国経済はコロナ禍の克服が進む一方、物価高と金利高の共存に加え、世界経済の減速懸念も重なり、景気は頭打ちの様相を強めている。年明け以降もサイクロン被害に見舞われるも、今後は復興需要による景気押し上げが期待される。他方、足下のインフレ率は依然中銀目標を大きく上回る推移が続くなか、中銀は復興需要がインフレリスクとなる可能性を懸念している。また、今回の利上げは25bpと50bpで検討されたが予想外の大幅利上げが選択された。政策委員の間では先行きの政策運営で見解が割れている模様だが、一段の利上げに含みを持たせる姿勢も示された。昨年末以降の米ドル高一服によりNZドル相場は底入れしているが、先行きについては上下双方に方向感の乏しい展開が続くと予想される。

ニュージーランド経済を巡っては、感染一服による経済活動の正常化に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復の動きも追い風に、内・外需双方で底入れの動きを強めるなどコロナ禍による悪影響の克服が進んできた。他方、昨年来の商品高による食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレに加え、景気回復を追い風とする雇用改善の動きは賃金上昇を通じてサービス物価を押し上げるとともに、国際金融市場における米ドル高に伴う通貨NZドル安は輸入インフレを招くなど、全般的にインフレ圧力が強まる展開が続いている。中銀(NZ準備銀行)はコロナ禍対応を目的に利下げや量的緩和など異例の金融緩和に動いたものの、上述のように幅広くインフレ圧力が強まるとともに、コロナ禍を受けた生活様式の変化や景気回復を追い風に不動産市況は急上昇するなどバブルを招く懸念が強まった。よって、中銀は一昨年後半から金融政策の正常化に舵を切り、一昨年10月には7年強ぶりの利上げに動いたほか、その後も物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げを繰り返し実施する対応を迫られてきた。こうした状況にも拘らず、インフレ率は昨年4-6月をピークに頭打ちするも10-12月時点においても前年比+7.22%と高止まりしており、コアインフレ率は同+6.68%と引き続き加速している上、インフレ率もコアインフレ率もともに中銀目標(1~3%)を大きく上回る推移が続いている。このように物価高と金利高の共存が長期化している上、金融引き締めの影響で急上昇した不動産市況は一転頭打ちの動きを強めており、家計部門においては実質購買力の下押しに加え、逆資産効果が財布の紐を固くするなど景気に冷や水を浴びせることが懸念されている。事実、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率2.46%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じている上、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+2.2%と伸びが鈍化するなど頭打ちの動きを強めている(注1)。さらに、年明け以降も1月には最大都市オークランドにおいて記録的豪雨により多数の浸水被害や土砂崩れのほか、停電や断水が発生する事態に発展したほか、翌2月にもサイクロンが同国北島に接近して幅広い範囲で洪水や土砂崩れ、高波などに見舞われており、同国政府は被害額が2011年の同国南島クライストチャーチで発生した大地震(135億NZドル(GDP比3.6%))を上回る可能性を示唆している。こうした状況ではあるものの、中銀はサイクロン被害の直後に実施した2月の定例会合において10会合連続の利上げを決定するとともに、利上げ幅は50bpに縮小しつつも会合においては75bpの大幅利上げも検討されたほか、先行きの追加利上げに含みを持たせるなどタカ派姿勢を堅持する姿勢を示した(注2)。さらに、中銀は5日の定例会合においても11会合連続の利上げに加え、利上げ幅を50bpに維持しており、この決定に伴い政策金利(OCR)は5.25%と世界金融危機直後以来の水準となる。会合後に公表した声明文では、今回の決定について「インフレ率を目標域に回帰させるべく一段の金利引き上げが必要と同意した」とした上で「インフレ率は依然高すぎる上に根強く、雇用も持続可能な水準の上限を上回っている」との認識を示した。その上で、サイクロン被害の影響について「一部の財・サービス価格が上振れしており、インフレ期待が目標を大きく上回る水準で持続するリスクを高めている」との見方を示す一方、中期的には「復興需要により景気は下支えされる上、想定以上のインフレ圧力になり得る」との見通しを示している。なお、同国経済については「世界経済の減速が財輸出の重石となる一方、観光関連を中心とするサービス輸出の継続的な拡大は影響を相殺する」としつつ、「世界経済の減速、住宅需要の鈍化、これまでの利上げの影響により景気鈍化は避けられない」とした上で、「インフレ抑制に不可欠」との認識を改めて示した。その上で、「インフレ抑制には金利上昇が必要」としつつ「金融システムは景気鈍化を乗り切るのに十分な体力を有する」として、改めて金融引き締めの必要性を強調した格好である。同時に公表された議事要旨では、米国での銀行破たんをきっかけに国際金融市場の不透明感が高まっていることへの耐性が協議されたほか、サイクロン被害の実体経済や物価への影響についても協議されたことが明らかにされている。さらに、利上げ幅について「25bpか50bp」の検討がなされるも、「インフレ期待の抑制を確実にすべく」50bpの大幅利上げが維持されたとしている。他方、「金融引き締めの影響が未だ完全に具現化していない」とした上で「インフレ率が目標域に回帰すると確信出来る水準にする必要がある」との見解が示される一方、この結果を受けて「これまでの金融引き締めにより景気収縮的になったことが示唆される」など、先行きの政策運営について政策委員の間で意見が割れつつある様子がうかがえる。昨年末にかけての国際金融市場では米ドル高の動きに一服感が出ているほか、米FRB(連邦準備制度理事会)との『タカ派』度合いの違いを理由に調整局面が続いたNZドル相場は底入れしている。先行きについては、中銀が一段の利上げに含みを持たせたことがNZドル相場を下支えする一方、景気に不透明感が強まる懸念に加え、米FRBの動向に揺さぶられる形で上下双方に方向感の乏しい推移が続く可能性が高待っていると判断出来る。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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