インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

台湾中銀、景気に不透明感も5会合連続となる一段の利上げを決定

~景気減速懸念がくすぶるも、中銀は物価安定を重視する姿勢を改めて示すなど難しい対応が続く~

西濵 徹

要旨
  • 23日、台湾中銀は5会合連続の利上げに加え、利上げ幅を4会合連続で12.5bpとする決定を行った。昨年の同国経済を巡っては、コロナ禍の再燃を受けた行動制限の再開に加え、中国本土でのゼロコロナや世界経済の減速懸念が景気の足を引っ張った。一方、商品高や米ドル高を受けた台湾ドル安がインフレを招くなか、中銀は昨年3月以降断続利上げに動いており、物価高と金利高の共存が内需の足かせとなる懸念もくすぶる。中国のゼロコロナ終了に期待の一方、米中摩擦や世界経済の減速懸念がくすぶり、上振れしたインフレ率は頭打ちに転じているが、中銀は一段の金融引き締めによる物価安定を重視する姿勢をみせた。当面は不透明感がくすぶる国際金融市場の動向を注視しつつ、物価と市場の安定に注力する考えをみせる。景気減速懸念がくすぶるなか、中銀には物価・市場の安定に向けて難しいかじ取りが迫られるであろう。

台湾を巡っては、コロナ禍の当初こそ徹底した検査実施と隔離などの措置を実施したことで感染対策の『優等生』と呼ばれたものの、昨年については感染動向の急激な悪化を受けて幅広く行動制限が課されたため、景気の足を引っ張る事態に直面した。さらに、ウクライナ情勢の悪化を受けた商品高は、多くの消費財を海外からの輸入に依存する台湾にとって食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招くとともに、コロナ禍対策を目的とする行動制限は労働需給のひっ迫を通じて幅広くインフレ圧力が強まり、インフレ率は一時14年強ぶりの水準に加速した。よって、中銀は昨年3月に10年半ぶりの利上げ実施を決定したほか、通常は12.5bpという小刻みな調整を行う傾向があるにも拘らず、25bpの大幅利上げに舵を切った。また、その後もインフレが昂進したことに加え、国際金融市場での米ドル高を反映した台湾ドル安が輸入インフレを招くことが懸念される一方、感染動向の急激な悪化が景気の足かせとなることを警戒して中銀は昨年12月の定例会合まで4会合連続の利上げに動くも、利上げ幅を12.5bpに留めるなど慎重な金融引き締めを維持した(注1)。こうしたことから、物価高と金利高が共存することで実質購買力に下押し圧力が掛かるなど、家計消費をはじめとする内需に悪影響を与えることが懸念された。他方、昨年末にかけては最大の輸出相手である中国本土が当局による『ゼロコロナ』への拘泥を受けて景気が頭打ちの様相を強めるとともに、米中摩擦の余波を受ける形で中国本土が台湾を対象に経済制裁を課す動きをみせたことで、外需の足が引っ張られた。よって、外需を巡る不透明感と金利高を受けて企業部門による設備投資需要も後退するなど内・外需双方に下押し圧力が掛かり、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲1.46%と2四半期ぶりのマイナス成長に転じるとともに、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも▲0.4%と7年弱ぶりのマイナス成長となるなど頭打ちの動きを強めている。一方、足下では感染動向の一服により経済活動の正常化が進んでいるほか、中国本土によるゼロコロナ終了など景気の追い風となる動きがみられる一方、米中摩擦に加えて欧米など主要国景気に不透明感が強まるなど、好悪双方の材料が混在する状況にある。さらに、昨年末以降の国際金融市場においては米ドル高の動きが一服したことを反映して台湾ドル相場は底入れしており、輸入インフレ圧力は幾分後退しているほか、加速の動きを強めたインフレ率も頭打ちに転じている。こうした状況ながら、中銀は23日に開催した定例会合において5会合連続の利上げ実施に加え、利上げ幅を過去3会合同様に12.5bpとして政策金利を1.875%とする決定を行った。会合後に公表した声明文では、今回の決定は全会一致であったことを明らかにする一方で、世界経済について「鈍化が予想される」とした上で「国際金融市場におけるボラティリティ拡大の影響を注視している」との見方を示している。一方、同国経済については「行動制限の緩和により内需を巡る状況は改善する一方で世界経済の減速懸念が企業活動の足かせになっている」として「今年の経済成長率は+2.21%になる」と昨年12月(+2.53%)から下方修正する一方、物価動向について「足下で上昇圧力が掛かるも、先行きは商品市況の調整やサプライチェーンの混乱解消に伴い落ち着きを取り戻す」としつつ「今年のインフレ率は+2.09%になる」と昨年12月(+1.88%)から上方修正した。なお、先行きの政策運営を巡っては「当面は米国や欧州での銀行危機の影響を注視する」としつつ、「物価や金融市場の安定の実現に向けて適時適切に調節を行う」としており、現時点においては物価安定の実現に向けて一段の金融引き締めに動いたと捉えられる。足下の景気には不透明感がくすぶるなか、中銀は物価と市場の安定に向けた難しい対応を迫られる局面が続くと予想される。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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