インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

台湾中銀、追加利上げも引き締め度合い後退、先行きの利上げ打ち止めも示唆

~外需に不透明感が高まるなか、物価や通貨の安定を追い風に利上げ打ち止めの可能性が高まる~

西濵 徹

要旨
  • 15日、台湾中銀は定例会合において4会合連続の利上げ、利上げ幅も3会合連続で12.5bpとする一方、預金準備率を3会合ぶりに据え置く決定を行い、引き締め姿勢を後退させる決定を行った。足下の台湾経済は外需に不透明感がくすぶる一方、米ドル高の一服を受けて台湾ドル相場は底打ちしており、インフレ率も頭打ちするなどインフレ圧力の後退を示唆する動きがみられる。中銀は景気見通しを下方修正しつつ、物価は落ち着きを取り戻すとの見方を示しており、利上げ打ち止めの可能性を示唆している。先行きの政策運営を巡っては、長期間に亘って政策金利を現行水準で据え置く可能性が高まっていると判断出来る。

台湾経済を巡っては、中国本土における『動態ゼロコロナ』戦略への拘泥による影響に加え、米国のペロシ下院議長による訪台を受けて中国本土が台湾に対する経済制裁を課すなど米中摩擦の余波を受けているほか、世界経済の減速懸念が高まるなど外需を取り巻く環境に不透明感が高まっている。また、商品高による世界的なインフレの動きは台湾でも食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招くなか、国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)のタカ派傾斜を受けた米ドル高を反映して通貨台湾ドル相場は調整しており、輸入物価を通じた一段のインフレ昂進が懸念される状況に直面している。こうしたなか、中銀は今年3月に10年半ぶりとなる利上げ実施に動くとともに、中銀は通常12.5bpという小刻みの調整を行う傾向があるものの、その2倍に当たる25bpもの大幅利上げに舵を切る動きをみせた(注1)。なお、その後はコロナ禍の当初こそ『優等生』と呼ばれた台湾において感染拡大の動きが広がったほか、行動制限の強化により景気に悪影響が出ることが懸念されたものの、インフレ率は一段と加速する動きをみせたことに加え、米ドル高に伴う台湾ドル安の動きも進んだことを受けて、中銀は6月の定例会合で追加利上げを決定するも利上げ幅を従来からの12.5bpに縮小させた(注2)。その後は感染動向が改善する一方、上述のように外需を取り巻く環境は厳しさを増すなど景気の不透明要因が山積しているにも拘らず、中銀は9月の定例会合において物価及び為替の安定を目的に3会合連続の利上げ実施を決定するなど、難しい対応を迫られる状況に直面してきた(注3)。一方、その後は米国のインフレ鈍化を理由にタカ派傾斜を強めてきた米FRBがタカ派姿勢を後退させるとの見方が強まっており、こうした見方を反映して国際金融市場では米ドル高が一服するなど、調整局面が続いた台湾ドル相場も底入れしている。さらに、足下においては中国本土におけるコロナ政策の転換を受けた景気の底打ち期待の高まりを受けて、中国本土経済との連動性が高い台湾への資金回帰の動きが促されているとみられる。そして、原油をはじめとする商品市況の上振れに一服感が出ていることを反映して、11月のインフレ率は前年比+2.35%と前月(同+2.74%)から伸びが鈍化しており、コアインフレ率も同+2.86%とインフレ率を上回るも前月(同+2.97%)から伸びが鈍化するなど、ともに頭打ちする動きがうかがえる。こうしたなか、中銀は15日に開催した定例会合において4会合連続の利上げ実施とともに、利上げ幅も6月及び9月と同じ12.5bpとして政策金利を1.750%とする決定を行った。なお、6月及び9月の定例会合では預金準備率を25bp引き上げる決定を行ったものの、今回は預金準備率を据え置くなど引き締め度合いを緩めている。会合後に公表した声明文では、世界経済について「著しく経済成長が弱まっている」との認識を示すとともに、台湾経済についても「頭打ちの様相を強めており、今年の経済成長率を+2.91%(←+3.51%)に下方修正する」とした上で、「来年はコロナ禍からの回復が期待される一方で外需を取り巻く環境は厳しさが増し、経済成長率は+2.53%(←+2.90%)に留まる」と下方修正した。一方、物価動向については「商品市況の調整を受けて今年のインフレ率は+2.93%(←+2.95%)、来年は+1.88%になる」と今年のインフレ見通しをわずかに下方修正した。また、会合後に記者会見に臨んだ同行の楊金龍総裁は、先行きの金融政策について「インフレ率が確実に2%を下回れば利上げ中止を考えているが、依然として不透明要因は多い」として利上げ打ち止めの可能性に言及した。一方、景気動向を巡っては「世界経済の減速による下振れリスクの増大が懸念されるなど景気の足かせになる」との見方を示しつつ、今回の決定を「マイルドなものになった」との見方を示す一方、来年の政策運営について「物価安定を重視する」との考えを示すなど金融市場で高まる利下げ期待に釘を刺す姿勢をみせた。先行きについては長期間に亘り足下の水準で政策金利を維持する可能性が高まっていると見込まれる。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ