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2023.03.09
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中国景気は底入れするも、その持続力に自信が持てない材料が続く
~家計消費の回復の遅れがディスインフレを招くなか、経済の安定、なかでも雇用環境の動きが重要に~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の中国経済は、ゼロコロナ終了を受けて企業マインドが改善するなど景気底入れを示唆する動きがみられる。全人代では経済の安定を重視する姿勢が強調される一方、1-2月の貿易統計は輸出入ともに前年を下回る伸びが続いている。ただし、営業日を考慮すると1月は下振れする一方で2月は一転して底入れするなど底入れしていると捉えられる。1-2月をまとめたことで景気実態が把握し難くなっている可能性がある。
- 1月のインフレ率は春節の時期が影響して上振れしたが、2月は一転下振れしている。コアインフレ率も鈍化するなど、ゼロコロナ終了にも拘らず家計消費の回復が遅れるなかでディスインフレ基調が続いている。川上の物価動向を巡っては、昨年当局が製品価格への転嫁を事実上禁止した反動で、商品市況の調整にも拘らず製品価格が下落しにくくなっている可能性がある。他方、家計消費の回復が遅れるなかで商品市況が再び底入れしても製品価格に転嫁しにくい状況も予想され、経済の安定、雇用回復が何より重要になっている。
- 国際金融市場では米ドル高の一服に伴い人民元相場は底入れしたが、足下では景気の不透明感や米ドル高の再燃が重石となっている。景気回復の持続力に自信が持てない展開は相場の足かせになるであろう。
足下の中国経済を巡っては、景気の足かせとなってきた当局の『ゼロコロナ』戦略への拘泥の動きが終わったことに加え、感染動向も落ち着いて経済活動の正常化が図られていることも追い風に、幅広く企業マインドは改善するなど底入れの動きを強めていると捉えられる。さらに、今月5日に開幕した全人代(第14期全国人民代表大会第1回全体会議)の初日に公表された「政府活動報告」では、今年の経済成長率の目標を5%前後と昨年(5.5%前後)から引き下げる一方、同報告のなかで『安全』という言葉が繰り返し用いられるなど、経済の安定を重視する政策運営を志向する姿勢が示された(注1)。具体的には、財政、及び金融政策を通じて景気を下支えするとともに、コロナ禍を経て極めて厳しい状況に置かれている若年層の支援に向けて雇用政策を一段と強化して家計消費など内需の喚起を図る一方、不動産関連や地方財政を巡るリスク抑制に向けて監督管理を強化することを目指している。こうした動きは、ここ数年の米中摩擦に加え、ウクライナ問題を契機に欧州諸国との関係にもすきま風が吹いている上、足下の世界経済を巡っては欧米など主要国の頭打ちが懸念されるなど外需を取り巻く環境が厳しさを増していることも影響している。なお、中国の貿易統計を巡っては、コロナ禍の影響が最初に深刻化した2020年に突如春節(旧正月)連休の影響を考慮する形で1-2月を合算して公表する変更が行われたが、今年の1-2月の輸出額は前年比▲6.8%と昨年12月(同▲9.9%)からマイナス幅は縮小するも前年を下回る推移が続いている。ただし、当研究所が営業日を勘案した上で月次の季節調整値を試算すると、1月は大きく下振れする一方で2月はその反動も影響して上振れして底入れの動きを強めており、ゼロコロナの終了によるサプライチェーンの回復の動きが輸出を押し上げている様子がうかがえる。一方、1-2月の輸入額も前年比▲10.2%昨年(同▲9.9%)からマイナス幅も拡大するなど一段と輸出を上回るペースで下振れしている様子がうかがえる。しかし、月次の輸入額については商品市況の調整の動きも重なり1月に大きく下押し圧力が掛かる一方、2月は一転して底入れの動きを強める様子がうかがえるなど、外需の底入れ期待や内需の回復期待を反映していると捉えられる。ここ数年は春節の時期のズレによる悪影響や景気実態をみえにくくする観点から1-2月をまとめて公表したと捉えられるものの、今年については想定以上に悪くみえている可能性がある点に要注意と言える。


他方、今年は春節連休の時期のズレが影響する形で1月のインフレ率は加速しているものの、この動きを以ってインフレが加速していると判断することは早計とみられたが(注2)、事実として2月のインフレ率は前年比+1.0%と前月(同+2.1%)から鈍化して丸1年ぶりの伸びとなるなど、足下は依然としてインフレにほど遠い状況にあることが確認されている。前月比も▲0.5%と前月(同+0.8%)から3ヶ月ぶりの下落に転じており、春節連休における外食需要の一巡の動きを反映して食料品の価格が下振れするなど生活必需品のインフレ圧力が後退したことが影響している。食料品のうち豚肉(前月比▲11.4%)をはじめとする肉類のほか、野菜(同▲4.4%)、卵(同▲3.6%)、水産品(同▲1.5%)、果物(同▲1.2%)など生鮮品を中心に物価に下押し圧力が掛かっている。また、年明け以降の国際原油価格は中国のゼロコロナ終了による景気回復期待を追い風に底堅い動きをみせているほか、中国が輸入を拡大させているロシア産原油(エスポ原油)も堅調に推移しており、こうした動きを反映してガソリンをはじめとするエネルギー価格も緩やかに底入れしている。一方、2月の食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も前年比+0.6%と前月(同+1.0%)から鈍化しており、前月比も▲0.2%と前月(同+0.4%)から3ヶ月ぶりの下落に転じるなどインフレ圧力が後退している。春節連休に伴い前月に上振れした反動で観光(前月比▲6.5%)をはじめとするサービス物価に下押し圧力が掛かっているほか、食料品以外の消費財価格にも下押し圧力が掛かる動きがみられる。こうした状況は、ゼロコロナの終了により期待されるペントアップ・ディマンドの発現の動きのすそ野が充分に広がっていないことを反映していると考えられる。また、川上の物価動向を示唆する生産者物価(出荷価格)は前年比▲1.4%と前月(同▲0.8%)からマイナス幅は拡大するも、前月比は+0.0%と前月(同▲0.4%)から3ヶ月ぶりにマイナスを脱するなど、物価下落の動きに一服感が出ている。なお、企業部門が直面する生産者物価(調達価格)は前年比▲0.5%と前月(同+0.1%)から3ヶ月ぶりの下落に転じている上、前月比も▲0.2%と前月(同▲0.7%)から3ヶ月連続で下落するなど物価上昇圧力が後退している様子がうかがえる。しかし、昨年の商品高による物価上昇圧力に直面するなか、当局は企業部門に対して製品価格への転嫁を事実上禁止するなど収益が圧迫されたため、足下の調達価格の下落にも拘らず製品価格は下落しにくくなっている可能性がある。とはいえ、上述のように家計消費の弱さが確認されるなかでは仮に商品市況が再び底入れの動きを強めた場合も製品価格への転嫁は難しい展開が続く可能性も予想され、経済の安定、なかでも若年層を中心とする雇用環境の改善を図ることが何よりも重要になっていると捉えられる。


国際金融市場においては、昨年末以降は米ドル高の動きに一服感が出ていることを反映して人民元相場は底入れするとともに、ゼロコロナ終了による景気回復期待の動きも人民元相場を押し上げることに繋がったと考えられる。しかし、上述のように年明け以降の企業マインドは幅広く改善するなど景気の底打ちを示唆する動きが確認される一方、景気回復の動きの持続力に不透明感がくすぶる状況が続くなかで底入れの動きが一巡している。さらに、足下では米ドル高の動きが再燃していることを反映して人民元相場は頭打ちの動きを強めており、輸入インフレの動きが企業部門におけるインフレ圧力を増幅させる可能性もくすぶる。足下の中国経済は底打ちしていると捉えられるものの、その持続力への自信に繋がる材料が見出せないことが市場心理の重石となっており、先行きについても当面は一進一退の展開が続くことは避けられそうにないであろう。

注1 3月6日付レポート「習政権3期目・ゼロコロナ終了後初の全人代を経て中国経済は?」
注2 2月10日付レポート「中国、ゼロコロナ終了による景気回復は道半ばも、期待先行は続く」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

