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2023.02.24
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韓国中銀、1年半に及ぶ利上げ局面の一時休止決定も不確実性に留意
~李総裁は「一時休止」を強調、利上げ余地を残しつつ物価動向を見定めるべく立ち止まった模様~
西濵 徹
- 要旨
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- 23日、韓国銀行は政策金利を据え置き、1年半に及んだ利上げ局面の一時終了を決定した。昨年末にかけての同国経済は内・外需幅広く下振れする一方、中国のゼロコロナ終了が追い風になると期待される。しかし、足下のインフレは高止まりするなか、昨年末以降底入れしたウォン相場は一転頭打ちしており、景気と物価双方に不透明感がくすぶる。これまでの利上げを受けて住宅価格は下振れするなか、中銀は物価を巡るリスクに留意して再利上げに含みを持たせるなど難しい対応を迫られている。今回の決定について利上げ余地を残しつつ、物価が見通しに沿った動きをみせるか否かを判断すべく立ち止まったとの考えを示しており、商品市況が底打ちに転じれば再び利上げに動く可能性も予想されるなど、困難な対応が続くであろう。
昨年の韓国経済を巡っては、通年の経済成長率が+2.6%と前年(+4.1%)から鈍化するとともに、年末にかけては中国による唐突なゼロコロナ終了に伴う中国経済の混乱に加え、物価高と金利高の共存による家計消費など内需の低迷も重なり、10-12月は2年半ぶりとなるマイナス成長に転じるなど景気に急ブレーキが掛かる動きが顕在化した(注 )。他方、ゼロコロナ終了を受けてその後の中国においては企業マインドが幅広く改善するなど景気の底入れを示唆する動きが確認されているほか、中国景気の回復期待を追い風に商品市況が底入れする動きもみられる。中国によるゼロコロナ終了は、財輸出のみならず観光面でも中国への依存度が高い韓国経済の追い風になることが期待されるものの、韓国政府は中国国内における感染動向の急激な悪化を理由に、中国からの渡航者に対する短期ビザの発給を停止するとともに、入国者に対する検査実施などの水際対策を強化したため、中国が報復措置に動くなど足かせとなることが懸念された。なお、今月11日には短期ビザの発給を再開しているほか、来月からは水際対策も撤廃するなど、中国も報復措置を取り下げることにより状況が改善することが期待される。しかし、2月上中旬の輸出額は前年比▲2.3%と1月(同▲16.6%)からマイナス幅は縮小するも引き続き前年を下回る推移が続いており、今年は春節(旧正月)の時期が前年に比べて大幅に前倒しされて2月上中旬の営業日数は大きく拡大していることを勘案すれば、財輸出の回復は道半ばの状況にあると捉えることが出来る。他方、一昨年以降のインフレ率は商品高に伴う食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇を追い風に中銀の定めるインフレ目標を上回るとともに、一段と伸びが上振れする展開が続いたため、中銀は一昨年8月に2年9ヶ月ぶりの利上げに動くとともに、その後は物価、及び為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げの実施に追い込まれるなど難しい対応が続いてきた。なお、昨年末以降の国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出たことに加え、中国のゼロコロナ終了による景気底入れ期待も重なり、ウォン相場は一転して底入れの動きを強めるなど輸入インフレ懸念は後退してきた。しかし、上述のように財輸出は依然として力強さを欠くなど外需を巡る不透明感がくすぶるとともに、隣国北朝鮮による相次ぐ挑発行動により地政学リスクが意識されていることを受けて、足下のウォン相場は再び頭打ちの様相を強めている。さらに、昨年7月をピークにインフレ率は頭打ちしてきたものの、依然としてインフレ率は目標を上回る推移が続いている上、直近の1月は再び伸びが加速に転じるなどインフレ収束にはほど遠い状況にある。他方、中銀は1月の定例会合において7会合連続の利上げ実施を決定するとともに、利上げ局面の終了を示唆する姿勢をみせたなか(注 )、23日の定例会合では8会合ぶりに政策金利を据え置き、1年半に及んだ利上げ局面の一時休止を決定した。会合後に公表した声明文では、同国経済について「内・外需幅広く下振れしているが、先行きは中国景気の回復を受けて年後半から徐々に回復が見込まれる」としつつ、「今年の経済成長率は+1.6%に留まる」として昨年11月時点の見通し(+1.7%)から下方修正している。一方、物価動向について「先行きは鈍化が見込まれるが、公共料金引き上げの影響でそのペースは緩やかなものに留まる」として、「今年のインフレ率は+3.5%になる」と昨年11月時点の見通し(+3.6%)からわずかに下方修正するも「不確実性は高い」との見方を示している。ウォン相場については「昨年11月以降は底入れしてきたものの、今月に入って以降は再び調整の動きを強めている」としつつ、家計債務の頭打ちの動きに歩を併せる形で住宅価格は「全国的に下落が続いている」との認識を示しており、逆資産効果が家計消費の足かせとなる可能性に留意する姿勢をみせている。先行きの政策運営については「金融市場の安定や景気動向を注視しつつ、中期的な物価安定の実現が重要」との従来姿勢を維持する一方で「インフレが高止まりするなかで不確実性が高い」との見方を示した上で、「物価安定を目的に抑制的なスタンスを相当期間に亘って維持しつつ、追加利上げの必要性の有無を判断する必要がある」と追加利上げに含みを持たせつつ、その判断については「物価動向や景気を巡るリスク、金融市場を巡るリスク、利上げの影響、主要国の金融政策の動向を見極める」との考えを示した。会合後に記者会見に臨んだ李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、今回の決定について「趙潤濟(チョ・ユンジェ)委員が反対票を投じた」とした上で「利上げ局面の終了を示唆するものではない」との考えを示しつつ、「5人の政策委員がターミナルレートである3.75%への余地を残す観点で据え置きを決定した」ことを明らかにしている。その上で、足下におけるウォン相場の調整について「国内問題とは余り関係がない」とした上で「短期金融市場は落ち着きを取り戻している」との認識を示しつつ、「今後の対応についてはノーコメント」とした。また、インフレ見通しの下方修正について「原油価格の変動でほぼ説明が付く」として「今回の決定はインフレ期待が低下するとの前提に立ったもの」とした上で、「インフレ率が見通し通りの経路を歩むか否かを判断すべく現時点では立ち止まる判断を下した」としている。




注1 1月26日付レポート「中国のゼロコロナ、物価高と金利高で韓国は2年半ぶりのマイナス成長に」
注2 1月13日付レポート「韓国、7会合連続の利上げで「ターミナルレート」に到達した可能性」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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