FRBのターミナルレート予想は5.1%に上昇、早期の利下げは否定 (22年12月13、14日FOMC)

~データ次第ながら23年は25bpの利上げペースでターミナルレートを探る展開~

桂畑 誠治

22年12月13、14日に開催されたFOMCで、FRBは、政策金利であるFFレート誘導目標レンジを予想通り4.25~4.50%に引き上げることを全会一致で決定した。FRBは、政策金利水準が大幅に上昇したことや、消費、生産活動の鈍化が示されたことで利上げ幅を縮小したものの、労働市場の過熱、高いインフレが続いているため、50bpの大幅利上げを決定した。利上げペースの鈍化に関して、パウエルFRB議長は、「今年前半は迅速な利上げが重要だったが、現時点では利上げペースの速さはそれほど重要ではない」としたうえで、「最終的な金利水準がより重要」との認識を改めて示した。インフレが高止まりを続ける中で、金融引き締め効果を過度に弱めることなく、利上げ幅縮小を実現し易い市場環境の醸成を目指す発言を繰り返した。

声明文の利上げペースの決定に関する文言は、前回同様「将来の目標レンジの引き上げペースを決定する際に、委員会は累積した金融引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす効果の遅行性、経済・金融の動向を考慮する」とインフレが目標に向かって明確に低下していない中で、これまでの大幅利上げの累積的な効果、経済活動やインフレに遅れて顕在化する影響、景気動向や金融環境の引き締まりなどを考慮してさらに利上げ幅を縮小することを示唆した。

FFレート誘導目標レンジは4.25~4.50%となったが、声明文では前回同様「委員会はインフレ率を徐々に2%に戻すのに十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、目標レンジの引き上げを継続することが適切だとみている」と利上げ継続が必要であるとの認識を維持した。パウエル議長は、「CPI統計が2カ月連続で鈍化したことは歓迎されるが、インフレの低下基調が定着したという確信を得るには、かなり多くの証拠が必要となる」とインフレについて慎重な見方を示した。議長は「2%の物価目標に回帰するまで依然として長い道のりが残っていることは、引き締め的な金融政策が持続する可能性を示している」と、労働市場の逼迫やインフレ高進を背景に、FRBは金融引締めを継続、強化していく必要があるとの見方を示した。

FOMC参加者のターミナルレート予想は、11月のFOMC後の記者会見でパウエル議長が指摘していたように、5.125%と前回の4.625%から上方シフトした。さらに、パウエル議長は「今後、ターミナルレート予想を引き上げないと確証持って言えない」と、22年に3、6、9、12月のすべてでターミナルレート予想が引き上げられたこともあり、23年にさらに引き上げられる可能性のあることを示唆した。ただし、ターミナルレートについて議長は「どの程度まで金利を引き上げるかは、インフレの進展、金融情勢のほか、政策をどの程度引締め的にする必要があるかとの判断に基づく」としたうえで、「データが悪ければ引き上げられるが、インフレが低下すれば引き下げられる」とインフレ統計次第との認識を示した。データ次第ながら23年は25bpの利上げペースでターミナルレートを探る方針とみられる。

利下げの可能性に関して、「インフレが目標の2%に向かって持続的に鈍化していると当局者が確信するまで、検討することはない」との認識を示した。「当面は引き締め的な政策スタンスを維持する必要がある」としたうえで、「過去の事例は、早計な金融緩和に踏み切らないよう強く戒めている」と強調し、金融市場での早期利下げ観測を否定した。

バランスシートの縮小策について、5月に公表した計画通り保有証券の圧縮を月間上限額950億ドルで継続する方針が確認された。内訳は、米国債の上限が600億ドル、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限が350億ドル。

今回のFOMCを受けての金融市場の反応は、声明文、FOMC参加者の経済・金利予想の公表後に、株価は下落、2年債、10年債は上昇、ドル高が進んだ。その後、株価は持ち直したが前日終値を下回る水準にとどまった。金利は低下に転じたが、前日との比較では政策金利見通しの影響を受け易い2年債利回りは水準を切り上げた一方、景気への懸念から10年債利回りは低下した。ドルは小幅下げたものの上昇した。

図表1
図表1

図表2
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今回声明文は、前回からほとんど変更されなかった。FOMC声明文の景気判断は、前回同様「最近の経済指標は消費や生産の緩やかな伸びを示している」と、米経済の緩やかな成長を指摘した。雇用情勢についての判断は前回同様「ここ数カ月の雇用の伸びは堅調で、失業率は低水準にとどまっている」と労働市場が逼迫しているとの認識を維持した。同様に、パウエル議長も労働市場が逼迫したままであるとの認識を示した。

インフレについて声明文で前回同様「パンデミックに絡む需給の不均衡、食品とエネルギー価格の上昇、幅広い物価圧力を反映し、インフレ率は高止まりしている」と多くの分野でインフレが高進しているとの判断を示した。

ロシアのウクライナ侵略戦争の影響に関して、声明文で前回同様「ロシアの対ウクライナ戦争は甚大な人的・経済的な苦しみをもたらしている」としたうえで、「侵攻と関連事象がインフレ押し上げの一因となっており、世界の経済活動の重しになる可能性が高い」と前回の「侵攻と関連事象がインフレのさらなる押し上げ圧力を生み出し、世界の経済活動の重しになる可能性が高い」とインフレへの影響が若干弱まったとの認識を示したが、世界経済に悪影響を与える可能性が高いとの見方は維持された。

リスクとして、前回同様「委員会はインフレリスクを注意深く観察している」とFRBがインフレ動向を注視していることを強調した。

声明文で「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と金融政策を柔軟に運営する方針であることを強調した。

【FOMC参加者による経済・金利予測:22年12月】

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、22年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+0.5%と前回9月の+0.2%から上方修正された。一方、23年+0.5%(前回+1.2%)、24年+1.6%(前回+1.7%)と引き下げられた。ただし、四半期でマイナス成長が予想されていないように、パウエル議長は「GDP予測はリセッションにあたらない」との考えを強調した。

失業率の予測(10-12月期の平均値)は、22年が3.7%(前回3.8%)と小幅下方修正されたが、23年以降では、23年4.6%(前回4.4%)、24年4.6%(前回4.4%)、25年4.5%(前回4.3%)と労働市場の若干の悪化を予想している。

インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)では、PCEデフレーターが22年+5.6%(前回+5.4%)、23年+3.1%(前回+2.8%)、24年+2.5%(前回+2.3%)、25年+2.1%(前回+2.0%)と上方修正され、25年まで目標の+2%を上回り続けると予想されている。PCEコアデフレーターは22年+4.8%(前回+4.5%)、23年+3.5%(前回+3.1%)、24年は+2.5%(前回+2.3%)と上方修正された。25年は+2.1%(前回+2.1%)と変更されなかった。ともに、インフレの緩やかな低下が予想されている。

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、23年5.125%(前回4.625%)、24年4.125%(前回3.875%)、25年3.125%(前回2.875%)と予測期間を通じて上方シフトした。23年にかけて利上げを継続した後、24、25年に利下げが適切になると予想された。ただし、25年でも3.125%と中立金利(2.5%)を上回る金融引締め水準が適切とされた。また、長期は2.5%(前回2.5%)と中立金利の見方に変化はなかった。

図表4
図表4

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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