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2022.11.03
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FRBは4会合連続の75bp利上げでも引締め不十分と判断 (22年11月1、2日FOMC)
~議長は利上げ幅縮小が近づく一方、最終的な金利水準が想定より高くなったことを指摘~
桂畑 誠治
22年11月1、2日に開催されたFOMCで、FRBは、政策金利であるFFレート誘導目標レンジを予想通り3.75~4.00%に引き上げることを全会一致で決定した。消費や生産活動の鈍化が示されたものの、労働市場の過熱、インフレの上振れが続いたことを受け、異例の75bpの大幅利上げを4会合連続(6、7、9、11月)で決定した。今回の大幅利上げでFFレート誘導目標レンジは3.75~4.00%となったが、「委員会はインフレ率を徐々に2%に戻すのに十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、目標レンジの引き上げを継続することが適切だとみている」と利上げ継続が必要であるとの認識を示した。また、パウエル議長は、「インフレが鈍化しているとの感触は全くない」との認識を示した。
一方、声明文に利上げペースの決定に関する文言が加えられた。「将来の目標レンジの引き上げペースを決定する際に、委員会は累積した金融引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす効果の遅行性、経済・金融の動向を考慮する」とインフレが低下していなくても、これまでの大幅利上げの累積的な効果、経済活動やインフレに遅れて顕在化する影響、景気動向や金融環境の引き締まりなどを考慮して利上げ幅の縮小を決定する可能性のあることを示した。同様に議長は、「インフレ率を2%目標に下げるために十分に引き締まった金利水準に近づけば、利上げペースを減速させることが適切になるだろう」と利上げ幅縮小の可能性を指摘した。タイミングは決まっていないが、早ければ12月、2月の会合で利上げ幅縮小を決定する可能性もあると指摘した。そのうえで、議長は、「現時点において、利上げペースをいつ緩めるかということは、政策金利をどこまで引き上げ、政策金利をどの程度の期間抑制的な水準に維持するかということと比較して、はるかに重要性が低い」と金融市場の焦点を利上げペースではなくターミナルレートと抑制的な政策金利水準の継続期間に移させ、利上げ幅縮小のハードル引き下げを狙った。
そのうえで、議長は「いかなる利上げペースの鈍化もFRBによる利上げ打ち止めのシグナルと捉えるべきではない」と説明した。議長は「われわれはまだ道半ばだと考えており、政策金利についてやるべき仕事が残っている」と、労働市場の逼迫やインフレ高進を背景に、FRBは金融引締めを継続、強化していく必要があるとの見方を示し、「時期尚早な引き締め停止の過ちは何としても避ける」と強い決意を示した。さらに、ターミナルレートについて「前回の会合以降に入ってきたデータをみれば、最終的な金利水準は以前の予想より高いことを示唆している」と、9月のドットチャート(ドットプロット)で示されたFFレート誘導目標の適切な水準の予想中央値(22年末4.4%、23年末4.6%)が既に上方シフトしていることを示唆した。これらの発言で、インフレが高止まりを続ける中で、金融引き締め効果を過度に弱めることなく、利上げ幅縮小を実現し易い市場環境の醸成を目指した。
バランスシートの縮小策について、5月に公表した計画通り保有証券の圧縮を月間上限額950億ドルで継続する方針が確認された。内訳は、米国債の上限が600億ドル、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限が350億ドル。
今回のFOMCを受けての金融市場の反応は声明文に利上げペースの判断材料が加えられたことで、声明文公表後に株価上昇、金利低下、ドル安が進んだ。しかし、30分後に行われたパウエル議長の記者会見でターミナルレートが上昇したとの発言を受け、FF金利先物市場では金利水準が上方シフトした。長短金利が上昇、株価は下落、ドル高となった。
FOMC声明文の景気判断は、前回同様「最近の経済指標は消費や生産の緩やかな伸びを示している」と、米経済の緩やかな成長を指摘した。雇用情勢についての判断は前回同様「ここ数カ月の雇用の伸びは堅調で、失業率は低水準にとどまっている」と労働市場が逼迫しているとの認識を維持した。同様に、パウエル議長も労働市場が逼迫したままであるとの認識を示した。
インフレについて声明文で前回同様「パンデミックに絡む需給の不均衡、食品とエネルギー価格の上昇、幅広い物価圧力を反映し、インフレ率は高止まりしている」と多くの分野でインフレが高進しているとの判断を示した。
ロシアのウクライナ侵略戦争の影響に関して、声明文で前回同様「ロシアの対ウクライナ戦争は甚大な人的・経済的な苦しみをもたらしている」としたうえで、「侵攻と関連事象がインフレのさらなる押し上げ圧力を生み出し、世界の経済活動の重しになる可能性が高い」と世界経済に悪影響を与える可能性が高いとの認識を示した。
リスクとして、前回同様「委員会はインフレリスクを注意深く観察している」とFRBがインフレ動向を注視していることを強調した。
声明文で「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と金融政策を柔軟に運営する方針であることを強調した。
【FOMC参加者による経済・金利予測:22年9月】
FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、22年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+0.2%と前回6月の+1.7%から大幅に下方修正された。さらに、23年+1.2%(前回+1.7%)、24年+1.7%(前回+1.9%)と引き下げられた。ただし、四半期でもマイナス成長は予想されていない。
失業率の予測(10-12月期の平均値)は、22年が3.8%(前回3.7%)と小幅の修正となったが、23年4.4%(前回3.9%)、24年4.4%(前回4.1%)、25年4.3%と23年以降労働市場の悪化が続くことを予想している。
インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)では、PCEデフレーターが22年+5.4%(前回+5.2%)、23年+2.8%(前回+2.6%)、24年+2.3%(前回+2.2%)と上方修正された。25年が+2.0%とFRBの目標を達成すると予想されている。一方、PCEコアデフレーターは22年+4.5%(前回+4.3%)、23年+3.1%(前回+2.7%)と上方修正された。24年は+2.3%(前回+2.3%)と変更されず、25年は+2.1%とインフレが低下すると予想された。
ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、22年4.375%(前回3.375%)、23年4.625%(前回3.75%)、24年3.875%(前回3.375%)と予測期間を通じて大幅に上方シフトした。23年にかけて利上げを継続。24、25年に大幅な利下げが適切になると予想された。ただし、25年でも2.875%と中立金利(2.5%)を上回る金融引締め水準が適切とされた。また、長期は2.5%(前回2.5%)と中立金利の見方に変化はなかった。


桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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