株高不況 株高不況

円安はいつ終わるのか

12月FOMCに向けてそれが起こる可能性

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは年内に125bpの追加利上げを実施。利下げは早くても23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+1.9%、S&P500は+2.6%、NASDAQは+3.4%で引け。VIXは31.4へと低下。
  • 米金利カーブはツイスト・スティープ化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.466%(+5.8bp)へと上昇。実質金利は1.539%(▲6.6bp)へと低下。
  • 為替(G10)はJPYが最弱。USD/JPYは149に到達。コモディティはWTI原油が85.5㌦(▲0.2㌦)へと低下。銅は7562.5㌦(+24.0㌦)へと上昇。金は1657.0㌦(+15.3㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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経済指標

  • 10月NY連銀製造業景況指数は▲9.1へと悪化し3ヶ月連続でマイナス圏推移。ISM製造業景況感指数のウェイトを用いてISM換算した数値は51.5と前月から2.9pt低下。内訳は生産(+19.6→▲0.3)がマイナス転化、新規受注(+3.7→+3.7)は低水準横ばいであった。

図表6
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注目点

  • USD/JPYは150到達が目前に迫っている。報道によると政府は13日に1兆円程度の覆面介入を実施した模様だが、14日に発表されたミシガン大学消費者信頼感調査において消費者の予想インフレ率が上昇したこと等をきっかけに米長期金利に上昇圧力がかかるとUSD/JPYは再び上昇した。

  • USD/JPYはいつ下落に転じるのか。結論を先取りすると、それはFedが利上げ幅縮小の地均しを開始する時であろう。ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の予想がある程度固まってくると、米長期金利はそれに先んじて低下、日米金利差の拡大観測は一巡し、USD/JPYに下落圧力が生じると見込まれる。むろん為替は日米金利差だけで説明できないが、少なくとも今年のUSD/JPYが日米金利差との連動性を有してきた経緯を踏まえると、米長期金利の低下がUSD/JPY下落を促す可能性は高いと判断される。現在のところ利上げのコンセンサスは11月FOMCに75bp、12月FOMCに50bpとなっている。12月FOMCの50bpはやや怪しくなっているものの、仮にその通りになるならばFed高官は12月FOMCに向けて利上げ幅縮小の妥当性やその根拠について説明するはずであり、その時にUSD/JPYが反転すると見込む。

  • Fedの政策態度を軟化させるのはもちろんインフレ指標である。その点、10月ミシガン大学消費者信頼感調査はやや失望的であった。中長期的な予想インフレ率の高止まりを嫌うFedは、人々の予想インフレ率を計測するにあたってミシガン大学消費者信頼調査を重視しており、特に「5-10年予想インフレ率」を注視しているとみられる。5-10年予想インフレ率は6月に+3.1%を付けた後、9月は+2.7%まで低下しFedを安堵させたとみられるが、10月は+2.9%とぶり返しの症状が確認された。水準そのものは長期的にみて決して高いわけではないが、この間、人々の予想インフレ率に大きな影響を与えるガソリン価格が低下していたことを踏まえると、それ以外の要素が予想インフレ率に影響を与えた可能性があり、インフレの粘着性を印象付ける結果であった。

  • 他方、パンデミック下に特有のインフレ要因は徐々に弱まっており、Fedは安堵していると推察される。9月CPIではコア財価格の上昇鈍化が鮮明になった。サプライチェーンの修復が進み新車の供給制約が解消する下で、中古車価格が下落したこと等を背景にコア財は前年比+6.6%までプラス幅が縮小している。2020年はサービスから財に需要が一気にシフトしたことで財価格に著しい上昇圧力が生じたが、そうした特殊要因が剥落していく下で、コア財価格は今後更なる鈍化が見込まれる。自動車以外の耐久消費財(家具、家電等)は需要の先食いが一部にあったとみられるため、需要そのものが落ち着くことで価格低下圧力が生じやすいだろう。

図表7
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図表8
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図表9
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  • 筆者は、コア財価格の低下が12月FOMCにおける利上げ幅縮小の一つの理由になり得ると判断している。また25日発表の8月ケース・シラー住宅価格指数が7月に続いて伸び率鈍化となれば、それも利上げ幅縮小の理由になり得ると考えられる。CPIにおいて約3割の比重を占める家賃が低下すればそのインパクトはかなり大きい。その他ではPMIの調査項目である販売価格の低下も注目される。筆者の知る限りFedが注視しているかは公になっていないため、政策態度に与える影響は測りかねるが、9月総合PMIの販売価格は59.1へと低下しており、これも潜在的に利上げ幅縮小の理由になり得るだろう。Fedは12月FOMCに向けて、これらインフレ指標の落ち着きに言及し利上げ幅縮小の地均しを始めるのではないか。その際のUSD/JPY反転を見込む。

図表10
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藤代 宏一


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