インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

韓国、金融市場で進行するウォン安に「打つ手」はあるか

~単独介入も効果は疑問、外準減少は金融市場の動揺への耐性を失わせるなど「手詰まり」懸念も~

西濵 徹

要旨
  • 国際金融市場では、米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜により経済のファンダメンタルズが脆弱な新興国で資金流出圧力が強まっている。韓国では過去数年の経常収支は黒字基調で推移したが、商品高を理由に経常赤字に転じており、インフレも顕在化している。中銀は昨年8月以降断続的に利上げを実施し、7月には大幅利上げに動いたが、景気の不透明感が強まるなかで8月には利上げ幅を縮小させた。中銀は利上げを維持したが、タカ派度合いの違いを理由にウォン安が進んだため、為替介入に動いている模様である。ただ、単独介入の効果は不透明な上、外貨準備の減少を招くなど金融市場の動揺への耐性を低下させる懸念もある。当面のウォン相場は当局の「手詰まり感」が意識される形で一段と調整の動きを強める可能性もある。

足下の国際金融市場においては、幅広い商品市況の上振れによる世界的にインフレが強まる動きが続くなか、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀を中心に物価抑制を目的にタカ派傾斜を強めており、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国を中心に資金流出圧力が強まる動きがみられる(注1)。韓国は、1990年代末に発生したアジア通貨危機に際して、その余波を受ける形で危機的状況に陥った経緯があるものの、その後の経済改革なども追い風にここ数年の経常収支は黒字基調で推移するなど、経済のファンダメンタルズは改善してきた。しかし、このところの商品高により輸入が押し上げられる一方、最大の輸出相手である中国の景気減速懸念は輸出の足かせとなるなか、8月の貿易収支は月次ベースの赤字幅が過去最大となっている。こうした動きを反映して、黒字基調で推移してきた経常収支は赤字に転じているほか、先行きは貿易赤字の拡大を理由に経常赤字も一段と拡大することが懸念されるなど、対外収支を巡る状況は急速に悪化している。さらに、商品高やコロナ禍の一巡も追い風に足下のインフレ率は約24年ぶりの水準に加速して中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続いており、同国経済のファンダメンタルズは総じて脆弱さを増している。なお、中銀はインフレが顕在化している上、金融緩和の長期化によるカネ余りが不動産市況の高騰を招くとともに、その背後で家計債務が急拡大するなど金融セクターのリスクが高まっていることに対応して、昨年8月以降断続的な利上げに動いてきた。さらに、国際金融市場において米ドル高を反映してウォン安が加速するなど、輸入物価を通じてインフレが一段と昂進する懸念が高まったことを受けて、7月にはアジア通貨危機以降で初の大幅利上げ(50bp)に動くなどタカ派姿勢を強めた(注2)しかし、その後は断続的な利上げ実施を受けて上昇基調が続いた不動産市況が頭打ちに転じているほか、物価高と金利高の共存が家計消費など内需の重石となる懸念が高まっている上、中国経済に加え、足下では欧米など主要国においても景気の頭打ちが意識されるなど、国内外で景気に対する不透明要因が高まっている。よって、中銀は先月の定例会合において物価安定を重視して追加利上げを決定するも、利上げ幅を再び25bpに縮小させるなどタカ派度合いを後退させる動きをみせた(注3)。ただし、足下においては米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜が強く意識される形で米ドル高圧力が強まっており、『タカ派度合い』の違いを理由にウォン相場が調整の動きを強めるなど、物価への悪影響が増幅される可能性が高まっている。このところの急激なウォン安を受けて、中銀は金融市場の安定を維持する方針を示しているほか、同国金融市場において米ドル売りの為替介入によるウォン安阻止に動いている模様である。足下のウォン安の背景には米FRBなどのタカ派傾斜による米ドル高が影響していることを勘案すれば、韓国当局による単独介入によってウォン安圧力が抑えられるかは極めて懐疑的にならざるを得ない。また、同国の外貨準備はここ数年増加傾向が続いてきたものの、昨年後半以降は一転して減少している上、足下では減少ペースが加速する動きが確認出来る。IMF(国際通貨基金)が示す国際金融市場の動揺への耐性の有無を表す適正水準評価(ARA:Assessing Reserve Adequacy)は8月末時点で『適正水準』の下限近傍にあると試算出来るものの、その後におけるウォン安の加速や為替介入を受けて外貨準備の減少が進んでいることを勘案すれば、金融市場の動揺への耐性は低下している可能性がある。当面は当局の対応に『手詰まり感』が強まることは避けられず、結果的にウォン安圧力が一段と強まる可能性がくすぶる展開が続くと予想される。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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