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2022.08.17
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ニュージーランド中銀、金融引き締め継続に加え利上げの加速を示唆
~不動産市況の頭打ちなど不安材料はあるが、中銀は政策目標実現へタカ派傾斜を強めている模様~
西濵 徹
- 要旨
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- NZ準備銀行は、17日の定例会合で7会合連続の利上げ実施、利上げ幅も4会合連続の50bpとして政策金利は7年ぶりの3.00%となった。商品高による世界的なインフレを受けて米FRBなど主要国中銀はタカ派傾斜を強めるなど世界的なマネーフローは大きく変化してきた。他方、世界経済の頭打ちを受けて商品市況も頭打ちしており、米ドル高圧力が後退する動きもみられる。ニュージーランドでは、足下のインフレ率が32年ぶりの水準に加速している一方、過去の金融引き締めなどを受けて不動産市況は頭打ちするなど不透明感が高まる動きもみられる。こうした状況ながら、中銀は大幅利上げを維持するとともに、先行きは利上げペースの加速を示唆するなどタカ派傾斜を強める姿勢をみせた。よって、当面のNZドル相場は米ドル高圧力の後退も影響して底堅さが見込まれるほか、日本円に対しては堅調な推移が続くと予想される。
足下の世界経済を巡っては、欧米など主要国を中心にコロナ禍からの回復が続く一方、中国は当局による『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥が経済活動の足を引っ張るなど、好悪双方の材料が混在する状況が続いている。他方、世界経済の回復による需要底入れが進むなか、年明け以降はウクライナ情勢の悪化による供給懸念も重なり、幅広く国際商品市況は上振れするなど世界的にインフレ懸念が強まった。こうした動きを受け、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀はタカ派傾斜を強めるなど、コロナ禍対応を目的とする全世界的な金融緩和を追い風とする『カネ余り』の手仕舞いが進んできた。結果、国際金融市場においては世界的なマネーフローが変化しており、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国を中心に資金流出の動きが強まる動きがみられる。ニュージーランドでは、コロナ禍当初は感染動向が抑えられて早期に景気回復を果たすとともに、不動産市況の急騰によるバブルが懸念されたため、中銀(NZ準備銀行)は昨年後半以降に量的緩和政策を縮小させるとともに、その後も断続的に利上げを行うなどタカ派姿勢を強める動きをみせた。ただし、年明け以降は感染力の強い変異株により感染が再拡大して感染爆発状態に陥ったものの、同国政府はワクチン接種の進展を理由に経済活動の正常化を優先する姿勢を維持する一方、最大の輸出相手である中国経済の減速懸念が外需の足かせとなる懸念が高まった(注1)。また、上述のように中銀はタカ派姿勢を強めたことによる住宅ローン金利の上昇加え、当局による住宅ローンの審査厳格化や税制改革なども重なり、上昇の動きを強めた不動産価格は一転頭打ちしており、足下では11年ぶりに前年を下回る水準に鈍化するなどすっかり沈静化している。その一方、幅広い商品高に伴い食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力が強まっているほか、米FRBのタカ派傾斜に伴う米ドル高はNZドル安を招いて輸入物価を押し上げるとともに、家計消費など内需の堅調さも重なり、直近4-6月のインフレ率は前年比+7.3%と32年ぶりの水準に加速しているほか、コアインフレ率も同+6.1%と過去最高水準となっている。なお、足下の世界経済はコロナ禍からの回復が続いた欧米など主要国が物価高と金利高の共存により頭打ちしており、世界経済の頭打ちを受けて商品市況は調整するなど、川上段階においてインフレ圧力が後退する動きがみられる。さらに、足下においては国際金融市場における米ドル高圧力も後退してNZドル相場は底打ちするなど、輸入物価を通じたインフレ昂進の懸念も幾分後退している。こうした状況ではあるものの、中銀が17日に開催した定例会合で政策金利(オフィシャル・キャッシュ・レート)を7会合連続で引き上げるとともに、4会合連続で利上げ幅を50bpとしており、政策金利は3.00%と丸7年ぶりの水準となる。会合後に公表された声明文では、今回の決定について「継続的な金融引き締め」とするとともに、「物価安定の維持とともに持続可能な雇用の最大化を支えるペースで金融引き締めを継続することが依然大切」とするなど、7月の前回会合の姿勢が維持された(注2)。その上で、世界経済について「世界的な金融引き締めに伴い弱含んでいる」一方、同国経済は「国内・外の逆風にも拘らず、堅調な雇用や財政支援、交易条件の改善、家計部門のバランスシートの改善を追い風に堅調な推移が続いている」ものの「労働力不足が物価上昇要因になっている」との見方を示した。ただし、議事要旨では「政策目標の実現にはさらなる利上げが必要」、「足下の利上げペースの維持が最善策」、「5月会合以降も幅広くインフレ圧力が強まる動きがみられるなど利上げの前倒しが必要になる」との見解が示されており、先行きの政策運営について「5月会合時点の想定を上回るペースでの利上げ」を見込む動きもみられる。上述のように足下の不動産市況は頭打ちの動きを強めるなど、先行きは利上げを維持するもペースは鈍化すると見込まれたものの、中銀内はタカ派傾斜を強めていることが確認されている。よって、当面のNZドル相場については米ドル高圧力の後退も影響して底堅い動きが見込まれるほか、日本円に対しても堅調な推移が続くと予想される。
注1 6月16日付レポート「ニュージーランド、景気は予想外に躓くも内需の堅調な推移を確認」
注2 7月13日付レポート「ニュージーランド中銀、金融引き締めの継続をあらためて強調」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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