FRBは75bpの利上げを決定したうえ大幅利上げ予想を公表 (22年6月14、15日FOMC)

~FOMC参加者は22年末のFF金利を3.375%まで引き上げることが適切と判断~

桂畑 誠治

22年6月のFOMCで、FRBは1994年11月以来27年7カ月ぶりとなる75bpの大幅利上げを決定した。5月のCPI統計の上振れと家計の期待インフレの上昇を受け、利上げペースの加速を決定した。また、新たに公表されたドットチャートでは、FOMC参加者(18人)の22年末のFF誘導目標の予想中央値は3.375%(前回1.875%)と今後の4会合で合計1.75%の利上げを予想しており、大幅上方シフトした。この水準は、中立金利(FOMC参加者推計2.5%)を上回っていることから、インフレを低下させるためにFOMC参加者は早期に金融引締めを強化し、景気・労働市場を減速させる必要があると判断していることを示している。

金融市場では、パウエルFRB議長が記者会見で次回7月のFOMC会合では50bp、あるいは75bpの利上げの可能性が高いが、75bpの非常に大幅な利上げが一般的になることはないとも発言したことで、FF先物市場で7月の75bpの利上げの織り込み度合いが低下し、株が上昇した。

6月14、15日に開催されたFOMCで、FRBは、政策金利であるFFレート誘導目標レンジを1.50~1.75%に引き上げることを賛成10人、反対1人の賛成多数で決定した。エスター・ジョージカンザスシティー地区連銀総裁が50bpの利上げを支持し、反対票を投じた。今回、堅調な経済成長、労働市場の過熱が続くなか、5月CPI統計の上振れ、家計の期待インフレの上昇を背景に、94年11月以来27年7カ月ぶりとなる75bpの利上げを決定したうえ、継続的な利上げが適切になるとの見方を示した。

FRBは、最大雇用と長期的に2%のインフレ率を目指しており、この目標達成のために今回の75bpの利上げ、継続的な利上げが適切になるとの見方を示したことに加えて、インフレ高進が続き、家計の長期の期待インフレが上昇するなどFRBへの信認が低下していることを背景に、声明文に今回「FRBはインフレ率2%の目標達成に強くコミットする」との文言を加え、期待インフレが落ち着くことを促した。

FOMC声明文の景気判断は、今回「第1四半期に経済活動が全体で若干落ち込んだ後、加速したようだ」と前回「第1四半期に経済活動が全体で若干落ち込んだものの、家計支出と企業の設備投資は力強さを維持した」から上方修正された。米経済が堅調な拡大を続けているとの判断を維持した。

雇用情勢について声明文では「ここ数カ月の雇用の伸びは堅調で、失業率は低水準にとどまっている」と前回の「ここ数カ月、雇用の伸びは堅調で、失業率は大幅に低下した」から修正なく、労働市場が逼迫しているとの認識を維持した。ただ、声明文から「労働市場が力強さを維持する」とのFRBの予想を削除したほか、パウエル議長は労働市場が堅調なままでインフレを低下させることは困難になっており、労働市場の現状からの悪化は避けられないと、前回から見方を修正した。

インフレについて声明文で前回同様「パンデミック、エネルギー価格の上昇、幅広い物価圧力に絡む需給の不均衡を反映し、インフレ率は高止まりしている」との判断を維持した。

ロシアによるウクライナ侵略戦争の影響に関して、声明文で前回同様「ロシアのウクライナに対する軍事侵攻は甚大な人的・経済的な苦しみをもたらしている」と指摘したうえで、今回「侵攻と関連事象がインフレのさらなる押し上げ圧力を生み出し、世界の経済活動の重しになる可能性が高い」と前回の「米国経済への影響は極めて不明確なものの、侵攻と関連事象がインフレのさらなる押し上げ圧力を生み出し、経済活動の重しになる可能性が高い」から、米国だけでなく世界経済の重しになると表現を変更し、悪影響が大きくなっているとの認識を示した。

中国のロックダウンの悪影響について、声明文では前回同様「さらに、中国での新型コロナウイルス感染症に関わるロックダウンがサプライチェーンの混乱を悪化させるとみられる」と中国の新型コロナウイルス対策がサプライチェーンの混乱を悪化させ、インフレ圧力となることが指摘された。

リスクとして、前回同様「委員会はインフレリスクを注意深く観察している」とFRBがインフレ動向を注視していることを強調した。

今後の金融政策運営に関して、声明文で「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と金融政策を柔軟に運営する方針であることを強調した。

パウエル議長は、7月の次回のFOMCでは、現在の状況を踏まえると「50bpか75bpの利上げの可能性が高いと思われる」と非常に大幅な利上げが継続する可能性を示したが、今回決定した75bpの利上げは非常に大幅と評価したうえで、こうした非常に大幅な金利引き上げが一般的になるとは思っていないとも発言した。

バランスシートの縮小策について、5月に公表した計画通り継続する方針が示された。保有証券の圧縮を月額475億ドル、9月から月額950億ドルに増額する。内訳は、米国債の上限が300億ドル、9月から600億ドルに拡大する。エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の月間上限は、175億ドル、9月から350億ドルに増額する。

今後、新型コロナウイルスのパンデミックの継続、ロシアへの経済制裁の強化等による悪影響が続く一方、行動制限の緩和や雇用・所得の増加等を背景に、潜在成長率を上回る経済成長が持続すると予想される。インフレでは、PCEコアデフレーターが5月に前年比+4.7%(2月前年比+5.3%)まで低下し、その後も緩やかな低下傾向を辿り、FOMC参加者の22年の予想中央値(+4.3%)を下回るとみられる。

このような経済情勢のもと、FRBは、7、9月にそれぞれ50bp、11、12月にそれぞれ25bpの利上げを実施し、FFレート誘導目標を22年末にFOMC参加者の推計したターミナルレートである2.5%を上回る3.25%まで引き上げると見込まれる。23年には、金融環境の引き締まり、ねじれ議会による政策の停滞、世界経済の減速等による米経済成長の鈍化、コアインフレの低下等を背景に、FRBは利上げを停止すると予想される。

【FOMC参加者による経済・金利予測:22年6月】

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、22年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+1.7%と前回3月の+2.8%から大幅に下方修正された。23年+1.7%(前回+2.2%)、24年+1.9%(前回+2.0%)と引き下げられたが、利上げが継続されるもとで潜在成長率程度の成長を維持できると予想している。

失業率の予測(10-12月期の平均値)は、22年3.7%(前回3.5%)、23年3.9%(前回3.5%)、24年4.1%(前回3.6%)と上昇し、労働市場の逼迫が緩和すると予想されている。

インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)では、PCEデフレーターが22年に+5.2%(前回+4.3%)と今回も大幅に上方修正されたが、23年は+2.6%(前回+2.7%)、24年は+2.2%(前回+2.3%)と小幅下方修正された。エネルギー、食品価格の見通しは未公表。一方、PCEコアデフレーターは22年+4.3%(前回+4.1%)、23年+2.7%(前回+2.6%)と小幅の上方修正にとどまり、24年は+2.3%(前回+2.3%)と変更はなかったが、24年もFRBの目標を上回った状態が続くと予想された。

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、22年は3.375%(前回1.875%)、23年は3.75%(前回2.75%)、24年は3.375%(前回2.75%)と予測期間を通じて上方シフトした。22年に大幅な利上げを行う一方、24年に利下げが適切になると予想された。また、長期は2.5%(前回2.375%)と中立金利が小幅上方シフトした。

桂畑 誠治

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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