株高不況 株高不況

問題は非製造業(日銀短観)

~一方デフレ圧力は強まっていないようにみえる~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年末までに資産購入を終了、23年後半に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場はまちまち。NYダウは+0.6%、S&P500は+0.1%、NASDAQは▲0.2%で引け。VIXは15.80へと低下。
  • 米金利カーブは小動き。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.337%(+0.4bp)へと上昇。実質金利は▲0.880%(▲0.9bp)へと低下。
  • 為替(G10通貨)はJPYが最弱。USD/JPYは111前半へと上昇、EUR/USDは1.18後半へと低下。コモディティはWTI原油が73.5㌦(+0.5㌦)へと上昇。銅は9374.5㌦(+40.0㌦)へと上昇。金は1771.6㌦(+8.0㌦)へと上昇。ビットコインは下落。

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経済指標

  • 6月ADP雇用統計によると雇用者数は前月比+69.2万人と市場予想(60.0万人)を上回った。一方、前月分は88.6万人へと9.0万人下方修正された。なおADP雇用統計はBLS雇用統計の先行指標としてよく知られているが、速報値ベースの予測精度は必ずしも高くない。

  • 5月米中古住宅販売成約指数は前月比+8.0%と2ヶ月ぶりに上昇。前年比伸び率は+13.9%へと鈍化も、これは20年5月に販売市場が急回復を遂げていたことによるもの。水準に着目すると依然パンデミック発生前のトレンドを上回った状態にある。

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注目ポイント

  • 日銀短観(6月調査)の業況判断DIは予想比やや弱め。企業が国内経済の回復を確信できていない現状が浮き彫りとなった。全体として方向感は改善も、その勢いは決して強くない。なお日銀短観をみるにあたって注意したいのは、ここで示される業況等は「単体」の回答であること。輸出型のビジネスモデルで成功する企業が多く含まれる業種は強く、国内向け事業を展開する企業が多く含まれる業種は強さを欠く。また海外子会社の業績改善が直接的に反映されるわけではない(※2020年6月以降は「海外での事業活動」が調査項目に加わっているが、データの蓄積が少ないこともあり現在のところ注目されていない)。

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  • 業況判断DIは大企業製造業が+14へと前回調査対比9pt改善。「先行き」は現況対比1pt悪化の+13となった。世界的なIT関連財の需要好調を背景に電気機械(+18→+28)の強さが続くなか、設備投資の復調を受けてはん用機械(+12→+34)、生産用機械(+8→+26)などが改善。他方、自動車は+3へと7pt悪化した。半導体不足による供給制約のみならず、新車需要の弱さが効いたとみられる。国内新車販売は依然2019年水準を大幅に下回っており、これは半導体不足だけで説明できないだろう。

  • 大企業非製造業は+1と2ptの改善に留まり、先行きも+3と回復期待は鈍い。現況は宿泊・飲食サービスが▲74、対個人サービスが▲31と、対面型やBtoC系の弱さが続いた。他方、通信(+31)、情報サービス(+26)、対事業所サービス(+31)など非対面やBtoB系の底堅さは不変。こうした構図は中堅や中小も同様でマクロ的。第三次産業活動指数でも同様の構図が示されている。

  • 株式市場(TOPIX)との関連の深い大企業全産業の業況判断DIは+8へと前回調査対比6pt改善し、大企業全産業の売上高経常利益率(2021年度計画)は+6.08%へと上昇した。改善が製造業に集中している点は要割引だが、双方ともアナリストの業績予想上方修正を正当化した。

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  • 企業の価格設定スタンスを推し量るために「企業の物価見通し(全規模全産業)」に目を向けると、3年後の物価全般の見通し(前年比)は+0.9%と前回調査対比0.1%pt.上昇した。経済正常化が期待されることに加え、最近のコモディティ価格上昇が見通しに影響を与えたとみられる。そうしたなか、販売価格見通し(現状の水準と比較した変化率)は+1.1%へと0.2%pt上昇し、パンデミック発生前の水準を上回った。大幅なマイナスの需給ギャップが生じているにもかかわらず、思いのほかデフレマインドが強まっていない印象だ。パンデミックに起因する販売不振に直面した企業は、値下げによって需要を掘り起こす戦略に距離を置き、マージン確保を優先したとみられる。実際、非製造業の販売価格判断DIは大企業と中小企業が共に上昇傾向にあり、そうした企業行動が販売価格見通しにも表れているように見える。そうであれば、リーマンショック後に観察されたような過度な値下げ競争は起きにくいのではないか。

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藤代 宏一


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