パウエル議長がテーパリングの議論開始は時期尚早と明言 (21年4月27、28日FOMC)

~FRBは景気・インフレ判断を上方修正も大規模金融緩和を継続~

桂畑 誠治

目次

21年4月27、28日に開催されたFOMCで、FRBは政策金利であるFFレート誘導目標レンジの0.00~0.25%への据え置き、月額最低1,200億ドルの資産購入の継続のほか、政策金利、資産購入に関するフォワードガイダンスの維持を全会一致で決定した。
 FOMC声明文では、現状の景気判断とインフレ判断を上方修正したほか、見通しの下振れリスクが軽減したとの見方を示した。ただし、パウエルFRB議長は「FRBの目標からかなり乖離しており、一段の顕著な進展が達成されるまでには時間がかかるとみられる」としたうえで、「金融緩和策の出口について議論する時期ではない」とテーパリングについてまだ対話を始める時期ではないと説明した。目標に向けて一段と顕著な進展を目にするまでしばらく時間がかかるとの見方を示し、市場で警戒されている早期のテーパリング対話開始を否定した。

景気の現状判断に関して声明文では、「ワクチン接種の進展や大型の政策支援によって、経済活動と雇用に関する指標は力強さを増している。パンデミックで最も深刻な打撃を受けた部門は引き続き低迷しているが、改善が見られる」と前回の「回復ペースが鈍化した後、経済活動と雇用に関する指標が足元で上向いている。ただし、パンデミックで最も深刻な打撃を受けたセクターは脆弱なままである」から上方修正された。声明文では、21年1-3月期の雇用、消費の回復ペースの加速を受け、景気判断を上方修正したものの、FRB議長は「経済の回復は想定よりも早いが、依然として不均衡で完全な回復にはほど遠い」との認識を示した。

インフレの現状判断について声明文では、「インフレ率は主に一時的な要因によって上昇している」と前回の「インフレ率は引き続き2%を下回って推移している」から上方修正されたものの、大部分が一時的な要因による上昇との見方を示した。また、議長も「インフレ圧力の上昇は一過性のものにすぎない」と金融緩和の縮小に影響するような持続的なインフレ率の上昇ではないとの認識を示した。

景気の先行きに関して、声明文では前回同様「経済の道筋はワクチン接種の進展など、ウイルスを巡る状況に大きく左右されるだろう」と見通しはワクチン接種、新型コロナウイルスの感染拡大やその対応で変化することを指摘するだけにとどめたが、見通しのリスクについて「現在進行中の公衆衛生の危機は引き続き経済に重くのしかかり、経済見通しに対するリスクは残っている」と前回の「現在進行中の公衆衛生の危機は引き続き経済活動、雇用、インフレ率に重くのしかかり、経済見通しに著しいリスクを呈している」から、下振れリスクが弱まったとの判断を示した。

市場で高まっている早期の資産購入額の縮小(テーパリング)の議論開始について、議長は「まだ話し始める時期ではない」との考えを改めて強調した。FRBは、完全雇用と物価安定目標に十分に近づくまで、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドルのペースで購入するとしており、議長は「経済活動や雇用は回復しているが、本格回復にはしばらく時間がかかる」と目標である完全雇用や物価安定の実現には時間が必要との考えを示した。

以上のような状況を踏まえ、今回のFOMCでFRBはこれまで実施・導入してきた大規模な金融・信用緩和策の継続、政策金利と資産購入のフォワードガイダンスの維持を決定した。

政策金利のフォワードガイダンスに関しては、新しい長期目標と金融政策戦略に基づき「労働市場環境が委員会の考える最大雇用に整合する水準に達するとともに、インフレ率が2%に達し、2%をやや上回る水準で当面推移する見通しになるまで、この目標レンジを維持することが適切になると想定している」と2%をやや上回る水準で当面推移する見通しとなるまで事実上のゼロ金利政策を維持する方針が示されている。
 資産購入のフォワードガイダンスについては、「FRBは目標である最大雇用と物価安定に向けてさらに大きな進展が見られるまで、米国債を少なくとも月800億ドル、モーゲージ担保証券を少なくとも月400億ドルのペースで増やし続ける」と資産購入を雇用の大幅な回復が確認されるまで続ける方針を示している。

今後の金融政策に関して、FRBは声明文で引き続き「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることに強くコミットメント」し、今後も「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と追加の金融緩和に柔軟な姿勢であることを強調している。一方、テーパリングについてパウエル議長は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況も考慮しつつ慎重に行うことを改めて強調した。

21年前半の米国では、ワクチン接種の増加や新型コロナウイルスの感染拡大ペース鈍化を受けた行動規制の緩和のほか、昨年12月に成立した9,000億ドル規模の経済支援策、21年3月に成立した1.9兆ドル規模の経済支援策によって、個人消費主導の経済成長の加速が見込まれる。 21年後半は、経済支援策の効果が減退するものの、多くの成人がワクチン接種を完了すると見込まれており、経済成長を抑制する要因が弱まることで、景気拡大・雇用回復が持続すると予想される。このような中、夏場に新型コロナウイルスの感染が拡大しなければ、FRBは22年中のテーパリング開始に向けて、市場との対話を始めると見込まれる。

FOMC参加者による経済・金利予測:21年3月

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、21年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+6.5%と大型の経済支援策の成立を受け、前回12月の+4.2%から大幅に上方修正された。22年は+3.3%(前回+3.2%)に小幅上方修正、23年は+2.2%(前回+2.4%)に小幅下方修正された。失業率の予測(10-12月期の平均値)は、成長率見通しの大幅上方修正により、21年4.5%(前回5.0%)、22年3.9%(前回3.5%)、23年3.5%(前回3.7%)と下方シフトした。
 インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)は、21年にPCEデフレーターが+2.4%、PCEコアデフレーターが+2.2%と大幅に上方修正されたが、22年はともに+2.0%に小幅低下し、23年はともに+2.1%と小幅上昇すると予想された。
 ドットチャートでは、大部分のFOMC参加者が引き続き23年末まで現在のFFレート誘導目標レンジである0.00-0.25%を維持することが適切と予想している。21年末18人全員(前回全員)、22年末18人中14人(前回16人)、23年末18人中11人(前回12人)がFFレート誘導目標レンジを0.00-0.25%に維持することが適切と予想。

図表
図表

FOMC委員のFF金利予想
FOMC委員のFF金利予想

為替、株式
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ドル・円
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ユーロ・ドル
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米ドル・豪ドル
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ポンド・ドル
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NYダウ
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S&P500
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株式、金利
株式、金利

NASDAQ
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ラッセル3000
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米10年国債利回り
米10年国債利回り

米2年国債利回り
米2年国債利回り

米30年国債利回り
米30年国債利回り

米5年国債利回り
米5年国債利回り

桂畑 誠治

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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