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ドイツで与党支持が一段と低下

~緑の党が率いる左派連立政権の誕生も視野に~

田中 理

  • ドイツの与党・キリスト教民主同盟(CDU)の支持率低下が止まらない。14日の州議会選挙後を回答日に含む6調査でCDUの支持率は何れも30%を割り込み、年初の30%台後半から急速に支持を落としている。最新調査に基づく連立組み合わせ別の獲得票率は、有力視されるCDUと緑の党の連立と、ダークホースとなる緑の党・社会民主党(SPD)・自由民主党(FDP)の左派連立との差が一段と縮まり、両者が同率の調査や後者が逆転する調査も出始めている。

14日の州議会選挙で歴史的な敗北を喫した後、ドイツの連邦政府を率いるキリスト教民主同盟(CDU)の支持率が一段と低下している。ドイツでは8つの調査機関が定期的に政党別の支持率を発表している。州議会選挙後を回答日に含む調査が4機関から6つ公表されているが、何れの調査でもCDUの支持率は30%を割り込んでいる(図表1)。年明け直後は30%台半ばから後半を維持していたが、ラシェット新党首の就任後にやや支持を下げ、その後、ワクチン接種の伸び悩みやマスク調達を巡る与党スキャンダルの発覚で一段と支持を落としている。

図表1
図表1

CDUが失った支持は、州議会選で躍進した緑の党、中道リベラル政党の自由民主党(FDP)、連立を組む中道左派の社会民主党(SPD)、極端な主張が目立つ右派ポピュリスト政党のドイツのための選択肢(AfD)などに広く分散する。今のところ秋の連邦議会選挙でCDUが最大政党の座を失う可能性は低いが、このまま党勢立て直しに失敗すれば、政権の座を明け渡す可能性も出てくる。州議会選後の世論調査を発表する4機関の最新調査に基づき、連立組み合わせ別の予想獲得票率を計算したところ、有力視されるCDUと緑の党による連立と、緑の党・SPD・FDPによる左派連立政権との差が一段と縮まり、1つの調査で両者が同率に、1つの調査で後者が逆転した(図表2)。

図表2
図表2

与党が早急に党勢を立て直すことができなければ、連邦議会選挙後の政界引退を示唆するメルケル首相に代わる首相候補の座を狙うCDUのラシェット党首にとって逆風となろう。その場合、バイエルン州で活動する姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)のゼーダー党首が有力候補となる。与党の統一候補の行方に注目が集まりがちだが、左派連立政権の誕生も視野に入るなか、その最大勢力となる緑の党の首相候補にも注目が集まる。近く首相候補を決める予定で、共同党首を務めるハーベック氏とベアボック氏が有力候補として名前が挙がる。何れも国政での閣僚経験がなく、政治手腕は未知数だ(与党の2候補も州首相で国政経験がない)。左派連立政権が誕生する場合、SPDの首相候補で現政権で副首相兼財務相を務めるショルツ氏がバランサー役として期待される。どういった組み合わせの連立政権が誕生し、誰が首相に就任しても、国内外でメルケル首相と同様の信任と評価を得ることは難しい。政権発足当初はドイツのリーダーシップが不安視されよう。

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済

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