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2026.01.27
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GX需要創出に向けた政策と各主体の行動【後編】
~政策の横断的課題と各主体に期待される行動~
加藤 大典
- 要旨
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【前編】では、GX価値を5要素からなる概念として整理し、「GX製品等は高くて選ばれにくい」という構図を、3つの価格パターンと非価格要因に分けて捉え直した。その上で、4つの政策手段と7つのバリューチェーン区分を掛け合わせた政策マップとして可視化することの有用性を示した。
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【後編】は、【前編】で整理した政策マップを手がかりに、GX製品等の需要創出を妨げている横断的な課題を整理し、その後、大企業・中小企業・政策担当者・金融機関・国民それぞれに望まれる行動と行動変容の方向性を示すとともに、政策や実務への提言をまとめることを目的とする。
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GX需要創出のボトルネックは、施策の有無というより、「誰の、どの意思決定をどう変えたいのか」の設計の不十分さに起因している可能性がある。その現れとして、ターゲットとインセンティブのギャップや価格プレミアムと購買力・負担分担の曖昧さ、情報・ラベル・開示の分かりにくさ、公共調達・GX金融の呼び水機能の不足、中小企業・地域への波及の課題などが浮かび上がる。
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こうした課題を踏まえ、本稿では、次のような方向性を示す。
・大企業は、GXロードマップの検討や「伴走型GX」を通じてサプライチェーン全体の方向性を提示すること。
・中小企業は、自社の立ち位置と支援策の見える化、省エネ・省コスト型GXからの着手、「選ばれるGXサプライヤー」への準備を進めること。
・政策担当者は、ターゲット別の政策パッケージ化や、公共調達・自治体施策・GX金融を組み合わせた「地場GX市場」の形成等に取り組むこと。
・金融機関・投資家は、GX金融メニューの可視化やGX投資相談機能の強化、GX情報の評価への組込みを進めること。
・国民は、物価高の中でも長期的に家計負担を下げうるGX選択と、行政・企業のGXを暮らしとの両立の観点から後押しすること。
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- 目次
1. 【前編】の要点と【後編】の位置づけ
1-1 【前編】の簡単な振り返り
【前編】では、GX需要創出を考える前提として、次の3点を整理した。まず、GX価値について、脱炭素だけでなく、資源循環性、自然共生、レジリエンス、トレーサビリティ・透明性の要素を含む概念として定義した。次に、「GX製品等は高くて選ばれにくい」という直感を三つの価格パターンと非価格要因に分けて捉え直した。そして、複数省庁のGX関連施策を、「政策手段×バリューチェーン」のマップとして政策マップ(資料1)として可視化することの有用性を示した。

1-2 【後編】の目的と位置づけ
【後編】は、【前編】をベースに、施策を俯瞰したときに見えてくる横断的な課題を整理し、それを踏まえた主体別の行動と行動変容の方向性を提示し、最後に、政策・実務への提言をまとめることを目的とする。読者として特に想定しているのは、企業のGX/サステナ担当・経営層、中小企業の経営者、省庁・自治体の政策担当者であり、これらの読者が「自分は何をすべきか」を考えるための材料を提供することを目指す。
2. GX需要創出を妨げる横断的課題
まず、政策マップ全体を俯瞰したときに見えてくる横断的な課題を整理する。
2-1 ターゲットとインセンティブ(補助金・支援策)におけるギャップ
多くのGX関連施策は、「企業」「国民」「需要側」といった大きな粒度となっているが、実際に意思決定を行うのは、中小企業の経営者、工場長や設備担当、購買・調達担当、設計・商品企画担当、住宅取得者や車の購入者といった具体的な「顔の見えるターゲット」である。現状、企業や家計の側から「情報は多いが、自分に関係するものがどれか分からない」という声が聞かれるのは、「誰の、どの意思決定をどう変えたいのか」というレベルまで施策が細かく設計・発信されていないということを示唆している可能性がある。その結果、申請できるはずの補助金・支援策が活用されない、規制・基準の強化が「突然の負担」として受け止められる、といったミスマッチが生じていると考えられる。
2-2 価格プレミアムと購買力、分担設計の曖昧さ
ターゲット設計の課題に加えて、GX製品等の価格プレミアムと購買力の関係も、需要創出を左右する重要な要素と考えられる。
GX製品等の追加コストを、誰が(政府・大企業・中小企業・消費者・海外の取引先等)、どのタイミングで(初期投資時/利用期間/将来の炭素コストとして)、どのような手段で(補助・税・価格転嫁・カーボンプライス等)、負担・分担するのかが、政策・市場の両面で十分に整理されていないように思われる。さらに、物価高が続く中でGX製品等の追加コストを受け止められるかどうかは、企業や家計の購買力、すなわち価格転嫁と賃金・所得のバランスにも左右される。企業がGXコストを抱え込んで価格に転嫁できなければ投資余力が失われ、家計の賃金が物価上昇に追いつかなければ「少し高いが長期的に得なGX選択」をする余地は狭まらざるを得ないだろう。
2-3 情報・信頼・評価:GX価値が「伝わらない」「評価されない」
価格と負担の設計だけでなく、情報の伝え方や評価の仕組みも、企業や家計の行動変容を促す上で欠かせない視点であると考える。
ラベル・認証・スコアリング・GX価値指標が乱立し、どれが公的に信頼できる指標なのか、何を基準に比較すればよいのか、自社のGX価値を示すにはどれを使えばよいのかが分かりにくい状況がある。また、企業による統合報告書や有価証券報告書での情報開示の動きが広がりつつあるものの、開示負担の増加に比べて、それが資金調達条件や取引条件にどこまで反映されているかが見えにくいという指摘も多い。グリーンウォッシュへの懸念が高まる中で、先行企業ほど発信に慎重になり、「リスクを取って前に出た企業が叩かれる『やったもの負け』」になることを恐れる声もある。
2-4 公共調達・GX金融の「呼び水」機能の不足
さらに、市場の初期需要やリスクマネーの供給をどう確保するかという点では、公共調達やGX金融の役割が大きい。
公共調達(グリーン購入法、公共建築物木材利用方針等)は、本来、GX製品等の市場を先導しうる重要なツールであるが、対象分野や基準の水準が「最低限の環境配慮」にとどまったり、運用の温度差が自治体や部局ごとに存在すること等から、産業転換を牽引するレベルの「強いシグナル」としてはなお弱いとの見方もある。GX経済移行債、グリーンボンド、トランジションローン等のGX金融も、どのようなプロジェクトが対象になりうるのかが中小企業や地方企業に十分に伝わっていない可能性がある。結果として、「公共部門・金融部門がGXの先行需要や資金の通り道をつくり、市場リスクを一部吸収する」という期待される役割が、まだ必ずしも十分に発揮されていないのではないか、という問題意識もある。
2-5 中小企業・地域への波及不足:「一緒に取り組む」仕組みの不足
こうした制度面の課題は、とりわけ人材や時間に制約のある中小企業・地域企業において顕在化しやすい。
中小企業・地域企業は、GXに前向きに取り組もうとしても、情報にアクセスする時間・人材が限られ、事業計画や補助申請、GX開示のノウハウも不足している。こうした中で、大企業からのGX要請が、支援策や長期契約とセットではなく、「コスト増を一方的に押し付けられる話」と受け止められると、GXに対する心理的な抵抗感が高まるおそれもある。行政・大企業・金融機関が、中小企業と同じテーブルにつき、「一緒に取り組むGX」の標準モデルをつくっていくことが必要であろう。
2-6 GXが物価高・低成長への対策として寄与しうるものと認識されていない
個々の主体や制度の課題に加え、GX需要創出がマクロ経済や物価高との関係の中でどう受け止められているかも整理しておく必要がある。
GX需要創出は、省エネ・効率化によるランニングコスト削減、国産エネルギーや循環資源の活用による価格ショックへの耐性の向上、新産業育成による雇用・付加価値創出を通じて、中長期的には実質所得の底上げと物価高リスクの抑制に資する可能性を持つと考えられる。しかし、現状のメッセージが「環境のためにコストを負担する話」として受け取られ、中小企業や家計の懐事情と乖離して見えている可能性もある。政策設計とコミュニケーションの両面で、「GX=将来の物価高リスクを下げ、実質所得を守るための投資」という視点が、十分に共有されていないのではなかろうか。
以上のような横断的課題は、裏を返せば、どの主体がどのように動けばGX需要創出が進みうるかを示す手がかりでもある。次章では、この気づきを踏まえて、大企業・中小企業・政策担当者・金融機関・国民それぞれに望まれる行動と行動変容の方向性を整理する。
3. GX需要創出に向けた主体別行動と政策パッケージ
3-1 横断的課題と本章の位置づけ
第2章で見たように、GX需要創出のボトルネックは、ターゲットとインセンティブのギャップや価格プレミアムと購買力・負担分担の不明確さ、情報・信頼・評価の仕組みの弱さ、公共調達・GX金融の呼び水機能の不足、中小企業・地域への波及の難しさ、GXの位置づけに関する認識のずれなど、「誰の、どの意思決定をどう変えたいのか」が十分に設計されていないことに起因している可能性があると考えられる。本章では、こうした横断的課題を踏まえつつ、大企業・中小企業・政策担当者・金融機関・国民ごとに、望まれる行動と、それを支える政策・制度の方向性を整理する。
3-2 企業(大企業・中小企業):サプライチェーン全体でGX需要を創る
GX需要創出の現場を最も直接的に担うのは、大企業と中小企業から成るサプライチェーンであるといえよう。大企業はサプライチェーン全体の方向性を設計し、中小企業はGXを「コスト増」ではなく「生き残りの投資」として位置づけ直すことが求められる。
(1) 大企業:サプライチェーン全体の「設計者」として
大企業には、政策マップ(政策手段×バリューチェーン)に自社グループとサプライチェーンを重ね、どの段階でどの政策・支援が使えるかを把握した上で、GXリーグやGX率先実行宣言、GX-ETS(排出量取引制度)等を、経営・調達・設計・営業・財務をまたぐ統合的なGX戦略として位置づけていくことが一つの方向性と考えられる。調達・設計・営業など各部門が、「GXはコスト要因」ではなく「新たなビジネス機会」であるという前提で、自部門なりのGX貢献を具体化していくことが重要である(資料2)。

サプライチェーン上の中小企業に対しては、大企業は、要件だけを一方的に突きつけるのではなく、補助金・金融・専門家支援の情報提供、共同での省エネ診断・GX診断、共同応募によるGXサプライチェーン構築支援事業の活用等を通じて、一緒に投資計画を描く「伴走型GX」のアプローチを採ることも一案となろう。自然共生サイトの整備や農山漁村振興への貢献(注1)といった取り組みを、中小企業・地域団体とともに進めることで、脱炭素と自然共生、地域を含めたGX価値をサプライチェーン全体で高めていく方向性も考えられる。
こうした取り組みを踏まえ、自社とサプライチェーンを政策マップに重ねたGXロードマップを作成し、可能な範囲で対外的にも共有していくことは、取引先や金融機関との対話の共通基盤を整える上で有効であると考えられる。このロードマップが、「どの段階でどの施策を活用し、どのような支援と条件を中小企業に提示しうるか」を示すことで、サプライチェーン全体のGX投資の見通しを共有しやすくなることが期待される。
(2) 中小企業:GXを「生き残りの投資」に
サプライチェーン全体の設計者として大企業が動くことに加え、中小企業自身の行動変容もGX需要創出にとって重要な要素となる。中小企業はまず、自社が政策マップのa~gのどの区分(例:b 製造・設備投資の中小製造業、d 建築物の工務店等)に属するかを確認し、その上で、自社に関係しそうなセルに絞って施策一覧を作成し、「自社用GX支援リスト」を整えておくことが出発点となる。商工会・業界団体・自治体、地域金融機関、大企業からの情報も活用しながら、「どこに相談すればよいか」「どの施策が使えそうか」を自社なりに整理しておくことが重要と考えられる。
物価高の中で取り組みやすいGXとしては、省エネ・省コスト投資が挙げられよう。例えば、高効率設備、LED、断熱改修、高効率空調等について、省エネ診断・補助金・長期融資を組み合わせ、投資回収期間を把握した上で、「GX=光熱費削減と競争力維持のための投資」として社内の理解を得ていくことが考えられる。また、主要取引先のGX方針(GXリーグ参加状況、開示情報、調達方針等)を確認し、自社として応えやすい項目と、自社のGX要素(省エネ取組、環境認証、地域貢献等)を整理しておくことも、将来の取引環境を見据える上で有用と思われる。
一定のGX取組が進んだ中小企業にとっては、自社のGX方針やGX製品等の提供意欲を示す枠組みとして、GX率先実行宣言のような制度を活用することも一案となりうる。「これだけの支援があれば、ここまでのGX投資ができます」といった前向きな提案を取引先に持ち込むことが、長期的な関係づくりと「選ばれるGXサプライヤー」としてのポジション強化につながるのではなかろうか。
大企業と中小企業が、それぞれの立場からの取り組みを進めつつ、必要な制度整備や政策ニーズを国や自治体にフィードバックし、サプライチェーン全体でGX関連施策を活用していくことにより、社会全体のGX需要創出が促進されることが期待される。次節では、この企業側の主体的な動きを後押しするために、政策担当者に求められる主な役割を検討する。
3-3 政策担当者(国・自治体):ターゲット別に届く「使われる政策」へ
GX需要創出に向けて企業や中小企業の主体的な取り組みを広げるためには、それを後押しする政策側の環境整備も同時に進めることが重要と考えられる。
(1) ターゲット別の政策パッケージ化
中小製造業の工場長、経営者、調達担当、住宅取得者等を想定したターゲット別の政策パッケージを、縦割りではなく横断的に整備し発信することで、現場の意思決定に届くインセンティブ設計に近づけることができると考えられる。一例として、資料3のような政策パッケージの提供・随時の更新がありえるのではなかろうか。

(2)GX価値の見える化を「中小でも使える」仕様に
削減実績量(Reduced Emissions of Product, REP)・削減貢献量(Avoided Emissions of Product, AEP)といったGX価値指標については、代表的な業種・製品ごとの計算テンプレート、Excel等で動く簡易ツール、先行企業の事例をかみ砕いた解説資料をセットで提供し、中小企業が自力で概算できるレベルにまでハードルを下げることが重要である。同時に、表示・広告に関するルール整備等をこれまで以上に進めていき、企業が過度なグリーンウォッシュ批判のリスクや過剰な実務負担を負わずにGX価値をより積極的に発信できる環境をつくることも期待される。
(3)公共調達・自治体施策・GX金融を組み合わせた「地場GX市場」の形成
グリーン購入方針や公共建築物木材利用方針等について、中期的な数量目標や予算規模とあわせて公表することで、企業がGX投資・GX製品開発に踏み切りやすくなるのではなかろうか。また、GX経済移行債、グリーンボンド、トランジションローン等のGX金融と連動させつつ、GX投資と賃上げ・適正な価格転嫁を一体で考える視点も持ち、地域の中小企業・金融機関がGX投資・ビジネスに踏み出しやすい環境を整えていくことが、一つの重要な方向性として考えられる。こうした公共調達や地域プロジェクトを通じて、自治体が中小企業・地域金融機関・大企業をつなぎ、「地場GX市場」の方向性を示していくことも期待される。
以上のように、政策担当者には、ターゲット別の政策パッケージの整備、GX価値の見える化の「中小でも使える」仕様への落とし込み、公共調達・自治体施策・GX金融を組み合わせた地場GX市場の形成といった役割が求められる。次節では、これらの政策パッケージを実際に活用し、GX投資やGXビジネスの「資金の通り道」をつくる上で、金融機関・投資家に期待される役割を整理する。
3-4 金融機関・投資家:GX需要創出の資金の通り道
GXへの投資やビジネスの拡大には、資金の「通り道」をつくる金融機関・投資家の役割も大きい。企業側のGX投資意欲があっても、それを支える金融メニューや相談機能、評価の仕組みが整っていなければ、GX需要創出は広がりにくい。
(1) GX投資・GXビジネス向け金融メニューの可視化
金融機関・投資家は、企業側から見た融資条件の比較がしやすくなるよう、どのようなGX投資・ビジネス(省エネ設備、再エネ導入、GX製品事業、自然共生サイト整備等)に対して、どの条件(利率・期間・担保要件・保証スキーム等)で資金を供給できるのかを整理し、わかりやすいメニュー表として公表することが期待される。これにより、中小企業を含む企業側が、「どの金融機関に何を相談すればよいか」を具体的にイメージしやすくなる。
(2) 地域金融機関によるGX投資相談機能の強化
地域金融機関は、自治体・商工会・大企業のGX担当と連携し、中小企業向けにGX事業計画づくり、補助申請、融資審査を一体で支援する「GX投資相談窓口」を設けることで、GX需要創出の「資金の通り道」としての役割を強化しうる。こうした窓口が、政策マップや各種支援策の情報とも接続されていれば、中小企業は「施策の探し方」と「資金調達の進め方」を一体として相談しやすくなり、GX投資に踏み出す際のハードルを下げることができる。
(3) GX情報の評価への組み込み
金融機関・投資家は、有価証券報告書での開示やGXリーグのGXダッシュボード等の情報を、融資条件や投資判断(エンゲージメント方針等)に反映させることにより、GX行動変容を起こした企業が資本コスト面で報われる方向性を社会に示すことができる。削減実績量・削減貢献量といったGX価値指標や、サプライチェーン全体のGXロードマップなどの情報を評価プロセスに丁寧に反映させていくことで、GX需要創出に向けた取り組みが金融面でも適切に評価される方向性を示していくことが期待される。
金融機関・投資家は、GX投資・ビジネス向け金融メニューの可視化、地域に根ざしたGX投資相談機能の強化、GX情報の評価への組み込みを通じて、企業の行動変容と政策パッケージをつなぐ「資金の通り道」としての役割を果たすことが期待される。次節では、最終的な需要を担う国民が、物価高と暮らしの安定を意識しつつ、どのようにGX選択に関わりうるかを考える。
3-5 国民:物価高の中でも「得になるGX選択」を
最終的な需要を担う国民の選択も、GX製品等の市場拡大を左右する重要な要素である。物価高が続く中であっても、暮らしとGXを両立させる視点から、無理のない範囲でのGX選択を積み重ねていくことが望まれる。
(1) 長い目で見て得になるGX選択
国民は、物価高の中では無理はできないが、可能な範囲で、デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)に参加し、例えば、省エネ住宅・断熱改修、高効率家電、再エネ電力メニュー、地元産の旬食材の選択、公共交通・自転車利用等、長期的に光熱費や買い替えコストを下げるGX選択肢を意識することも、結果として家計の安定とGXの両立につながりうる。これらの選択が積み重なれば、需要側からGX製品・サービスの市場を支える力にもなりうる。
(2) 行政・企業への「後押し」としての役割
GX製品等を選び、その経験を周囲に共有すること自体が、企業にとっては需要のシグナルとなる。選挙やパブリックコメント、地域活動等を通じ、「環境と暮らしを両立するGX支援」を求める声を発信することで、行政や企業のGXへの取り組みを後押しする一助となりうる。国民がこうした形でGXに関わることは、前節までに見てきた企業・政策担当者・金融機関の取り組みと相まって、GX需要創出の好循環をつくる基盤となると考えられる。
4.結論と今後の方向性
【後編】では、【前編】で整理したGX価値と政策マップを手がかりに、GX需要創出のボトルネックが、「誰の、どの意思決定をどう変えたいのか」が十分に設計されていないことに起因する可能性を確認してきた。その上で、大企業・中小企業・政策担当者・金融機関・国民という主体ごとに、望まれる行動と、それを支える政策・制度の方向性を整理した。
今後は、ここで示した枠組みや政策パッケージ案を、具体の施策や実務のなかで試しながら、その妥当性や使いやすさを検証し、実効性の観点から継続的に改善していくことが期待される。
【前編】・【後編】で提示した枠組みや論点が、企業のGX/サステナ担当・経営層、中小企業の経営者、省庁・自治体の政策担当者、金融機関・投資家などの間で、GX需要創出に向けた対話と協働を深める一つの手がかりとなれば幸いである。
【注釈】
- 自然共生サイトの保全活動を支援した企業や、農山漁村の課題解決に取り組む企業に対して、国が公的な証明書を発行している。
https://www.dlri.co.jp/report/ld/512724.html
https://www.dlri.co.jp/report/ld/534513.html
加藤 大典
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

