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2025.04.09
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AI(人工知能)
AIが予測するトランプ関税下における日経平均株価
~年初来安値更新!悲観確率55%の衝撃と年末予測~
柏村 祐
- 目次
1.未曾有の不確実性と市場の動揺
2025年4月初旬、トランプ米国大統領による広範な相互関税の発表は、世界経済と金融市場に甚大な衝撃を与えた。
特に、輸出依存度の高い日本経済への影響は大きく、発表直後から日経平均株価は急落し、市場は混乱の渦中にある。日経平均株価は、2025年1月7日に付けた年初来高値40,288.80円から下落基調にあったが、関税発表後の4月に入り下げ足を速め、本日4月7日には一時30,792.74円の年初来安値を更新し、高値からわずか3ヶ月で約23.6%もの大幅な下落を記録した。多くの投資家が先行きの不透明感から強い不安を抱いている状況である。この相互関税は、単なる貿易摩擦の再燃に留まらず、第二次世界大戦後の自由貿易体制そのものを揺るがしかねない構造的な問題を孕んでいる。関税の詳細、対象国・品目の広がり、そして各国の報復措置の連鎖がどこまで続くのか、現時点ではまったく予断を許さない。為替市場においても急速な円高が進行しており、企業収益への下押し圧力は日に日に強まっている。このように不確実性が高い未曾有の状況下で、従来の経験則や市場分析だけでは将来を見通すことが困難になっている。投資家は、感情的な判断に流されることなく、客観的なデータと分析に基づいた冷静な意思決定を行う必要がある。
本レポートでは、このような問題意識に基づき、AI(人工知能)を活用して最新の経済指標、市場データ、地政学リスク、関連ニュースのセンチメント分析などを統合的に解析し、今後の日経平均株価の動向を予測する。AIによる多角的な分析を通じて、投資家がこの難局を乗り越えるための一助となる情報を提供することを目的とする。
2.AIを活用した日経平均株価予測
1)直近の日経平均株価の状況整理
トランプ大統領による相互関税発表(2025年4月初旬)を受け、日経平均株価は急激な調整局面に入った。2025年1月7日には年初来高値40,288.80円を記録した後、上値の重い展開が続き、3月末終値は35,617.56円であった。相互関税発表後の4月に入ると市場心理は急速に悪化し、本日4月7日には年初来安値となる30,792.74円を付けた。これは年初来高値から約23.6%の下落水準であり、市場の深刻な動揺を物語っている。特に、自動車、電子部品、産業機械などの輸出関連セクターが軒並み売られ、全体相場を押し下げている。同時に、安全資産とされる円が買われる展開となり、輸出企業の採算悪化懸念が株価のさらなる下押し要因となっている。市場のボラティリティ(変動率)を示す日経平均VIも急上昇しており、投資家のリスク回避姿勢が鮮明である。関税の詳細や各国の反応に関する情報が錯綜する中、市場はきわめて不安定な状況にある。AIによるセンチメント分析では、関税発表以降、市場関連ニュースにおけるネガティブなキーワードの出現頻度が急増しており、極度の警戒感が市場を覆っていることが示唆される。
2)2025年末までのシナリオ別AI株価予測
AIに、過去の貿易摩擦事例、金融政策の動向、直近の株価データ(年初来安値更新を含む)、最新の経済指標、地政学リスク、企業業績見通し、為替変動シナリオなど多角的なパラメータを学習させたうえで、「悲観シナリオ」「中立シナリオ」「楽観シナリオ」の3つにもとづく予測を行った。
分析の結果、悲観シナリオでは市場の不確実性がいっそう高まり、投資家心理が継続的に悪化するケースを想定し、年末にかけて株価が27,000円まで下落する可能性を示している。一方、中立シナリオでは現在の市場動向が落ち着きを取り戻し、緩やかな回復基調に転じ、年末には33,000円程度まで持ち直すと予測している。最も楽観的なシナリオでは、関税問題の部分的解決や経済指標の改善により、市場センチメントが好転し、年末には36,500円まで回復すると見込んでいる。
予測値を時系列で見ると、6月末時点では悲観・中立・楽観シナリオにおいておのおの株価は30,000円、31,500円、33,500円となっており、短期的には依然として下値リスクが残存している。第3四半期以降、各シナリオ間の乖離が拡大し、12月末時点では最大9,500円の差異が生じる結果となった(図表1)。

3)AIによる各シナリオの発生確率と根拠
AIは、最新の市場環境と直近までに入手可能なデータを精緻に分析した結果、特に年初来安値更新という事実を重視し、市場の動揺が当初の予測を超える深刻さを示しているとした。また、関税問題の先行き不透明感がきわめて強いという状況を総合的に勘案し、現時点において悲観シナリオの発生確率が最も高い(55%)と結論付けている。
中立シナリオ(発生確率35%)と楽観シナリオ(発生確率10%)については、それぞれ可能性は残されているものの、市場のセンチメント悪化と政策対応の限界を考慮すると、実現の蓋然性は相対的に低いと評価されている。
AI分析では、各シナリオの発生確率を決定する際、国際貿易動向、主要国の政策対応、市場指標の動向、過去の類似事例などの複数の要素を包括的に検証しており、高い信頼性をもつ予測と考えられる(図表2)。

AIによる今回の予測結果は、年初来安値を更新した市場の深刻な動揺と、トランプ関税問題に端を発する先行きの極度の不確実性を、客観的なデータに基づいて浮き彫りにしている。特に、悲観シナリオの発生確率が55%と過半数を占め、年末の株価の予測値も27,000円と厳しい水準が示された点は、きわめて重く受け止めるべきである。6月末時点の予測値をみても、いずれのシナリオにおいても現状からの大幅な回復は見込みにくく、短期的には下値リスクへの警戒が引き続き必要であることが示唆されている。
ただし、これはあくまで現時点でのデータに基づいたAIの分析結果である。今後の国際交渉の進展、各国の金融・財政政策の発動、あるいは予想外の地政学的イベントなど、新たな要因が発生すれば、シナリオの発生確率や予測値は変動し得る。中立シナリオ(35%)や楽観シナリオ(10%)の可能性も依然として残されており、過度に悲観に傾倒することなく、冷静に状況の変化を捉え続ける姿勢が肝要である。このAI予測は、複雑な市場環境を読み解く上での有力なツールの一つであるが、その限界も認識した上で、次章で詳述する投資戦略の検討に繋げていくべきと考える。
3.不確実性の中で取るべき道
AIによる本日時点の分析と予測は、相互関税という未曾有のショックが日経平均株価に深刻な影響を与えており、年初来安値を更新したことで、先行きに対する極度の不確実性が市場を覆っていることを強く示唆するものである。特に、AIが悲観シナリオの発生確率を55%と最も高く推計し、予測レンジも下方にシフトした点は、投資家にとって重大な警戒シグナルと言える。貿易戦争の激化と世界経済のリセッションリスクは、現時点で最も考慮すべき主要なリスクファクターである。
しかし、AI予測は未来を確定するものではない。中立シナリオ(35%)や楽観シナリオ(10%)の可能性も残されており、今後の国際交渉の行方や各国政府・中央銀行の政策対応、企業自身の適応力次第では、状況が改善する余地もあるのである。
このようなきわめて不確実性の高い局面において、投資家が取るべき道は以下の通りである。第一に、冷静さと情報収集の徹底である。日々のニュースや市場の短期的な変動に一喜一憂せず、長期的な視点を維持することが重要である。信頼できる情報源から、関税政策の詳細、各国の対応、マクロ経済指標、企業業績などの情報を継続的に収集・分析し、冷静に状況を見極める必要がある。現時点では情報が錯綜しているため、情報の取捨選択が特に重要となる。第二に、リスク管理の強化である。ポートフォリオ全体のリスク許容度を再評価し、必要であれば資産配分の見直し(例:現金比率の引き上げ、ディフェンシブ銘柄へのシフト、分散投資の徹底等)を検討すべきである。特に、関税の影響を直接的に受けやすいセクターへの集中投資は避けるべきであろう。第三に、時間軸の分散である。市場の底が見えない現段階で一度に大きな投資判断を行うのではなく、時間軸を分散した積立投資などを活用し、市場の変動リスクを平準化することも有効な戦略である。第四に、AI予測の活用と限界の認識である(図表3)。

本レポートで示したAI予測は、客観的なデータに基づいた一つの参考情報として活用できる。しかし、AIは予期せぬ政治的判断や、市場参加者の非合理的な行動、新たな地政学リスクの発生などを完全に予測できるわけではない。AIの予測結果を鵜呑みにせず、常にその限界を認識した上で、最終的には自身で投資判断を行う必要がある。
トランプ関税下の市場は、まさに暗中模索の状態にある。しかし、このような混乱期においても、冷静な分析と適切なリスク管理、そして長期的な視点をもつことで、危機を乗り越え、将来の機会を捉えることが可能になる。本レポートが、不安を抱える投資家の皆様にとって、荒波を航海するための羅針盤となれば幸いである。
柏村 祐
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 柏村 祐
かしわむら たすく
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ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション
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