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2024.06.20
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AIが提言する少子化対策とは?
~少子化問題解決への新たな示唆~
柏村 祐
1.深刻化する少子化問題とAIによる分析の可能性
日本の少子化問題は年々深刻さを増しており、社会の持続可能性や経済成長への影響が懸念されている。政府はさまざまな少子化対策に取り組んでいるが、いまだ出生率の回復には至っていない。少子化の原因は複雑で多岐にわたり、未婚化・晩婚化の進行、子育てと仕事の両立の難しさ、子育ての経済的負担などが複合的に作用している。この問題を解決するには、長期的な視点に立った総合的な取組みが不可欠である。
そのような取組みを検討する際には、進化著しいAIを活用することも一案である。AIは膨大なデータを分析したうえで、将来を予測し、解決策を提言することができる。このようなAIによる分析・提言は、少子化対策の立案や評価に役立つ可能性がある。そこで本レポートでは、AIが予測する2030年、2040年、2050年の出生数、およびAIが提示する新たな少子化対策シナリオを検討する。
2.AIが描く2050年までの出生数予測とシナリオ
本節では、AIを活用して将来の出生数を予測し、考えられるシナリオについて検討する。はじめに国が発表している統計データを詳細に分析し、現状の出生動向を把握する。次に過去のデータをもとにAIを用いて未来の出生数を予測し、2030年、2040年、2050年の出生数がどのように変化するのかを明らかにする。これらの予測結果を踏まえ、最後に3つのシナリオを提示する。1つ目は、出生数が回復に転じる「反転シナリオ」、2つ目は、現在の傾向が継続する「継続シナリオ」、3つ目は、出生数が急激に減少する「急落シナリオ」である。これらのシナリオを比較検討することで、少子化問題の将来像を多角的に捉えることができる。
まずAIに厚生労働省が発表している人口動態統計の最新版を読みこませ、「内容を洞察してください」とたずねてみた。その結果、AIは概要として「このPDFは、明治32年から令和5年までの日本の出生数、死亡数、自然増減数、婚姻件数、離婚件数、死産数、周産期死亡数などの統計データを示しています。このデータから、日本の社会構造の変化や人口動態の推移を分析することができます」と解説したうえで、主な内容と分析ポイントを回答した(図表1)。

続いて過去のデータをもとに未来の出生数を予測するために「過去のデータから想定される2030年、2040年、2050年の出産数を予測してください。予測は、反転シナリオ、継続シナリオ、急落シナリオに分けて示してください」とAIに指示したところ、前提条件として「すべてのシナリオにおいて、日本の人口は今後も減少していくと仮定します。各シナリオは、社会状況の変化を異なる形で考慮します」という留保をつけ、過去の出生数データをもとに将来の出生数を予測した。予測結果は図表2の通りだが、実際には様々な要因によって変化する可能性があるという前提条件をつけたうえで、2030年、2040年、2050年それぞれの反転シナリオ、継続シナリオ、急落シナリオの出生数予測とシナリオの詳細を回答した。

この予測では、今後の出生数について厳しい状況が示されている。そこで、「専門家や研究機関が想定しないような反転シナリオを作成してください」とAIにたずねたところ、AIは「このシナリオは、従来の価値観や社会制度に大きな変化をもたらすため、実現には時間がかかる可能性があります。しかし、テクノロジーの発展や社会意識の変化は、予測不可能なスピードで進んでいます」としたうえで、出生数を大きく反転させる「ニューファミリーの台頭」というシナリオを提示してきた(図表3)。これは、従来の夫婦中心の家族形態に縛られず、個人が自分の選択に基づいて多様な家族形態を築き、子供を産み育てるという社会の姿である。
AIが提唱する家族形態は、結婚せずに子供を産み育てるシングルファミリーや、高齢者・子供・親世代などが共同生活を送り、互いに支え合う多世代ファミリー、複数の人々が共同で子供を育てる共同養育ファミリー、そして遺伝子工学やAIを活用し、子供を産むこと、育てることを選択的に行うテクノロジーを活用したファミリーなど、多様なものとなっている。

AIが予測するまでもなく、日本の出生数は今後も厳しい状況が続くと各方面で予想されている。しかし、AIが提示した「ニューファミリーの台頭」というシナリオは、従来の価値観や社会制度に大きな変化をもたらすものの、注目に値するのではないか。このシナリオでは、多様な家族形態が認められる社会の到来が想定されている。このような社会の実現にはさまざまな改革を要するが、テクノロジーの発展や価値観の変化によっては早期に実現する可能性もある。筆者は、AIが提示した「ニューファミリーの台頭」シナリオは、少子化対策を考えるうえで重要な視点を提供していると考える。多様な家族形態を認め、個人の選択を尊重する社会の実現は、出生率の回復にもつながる可能性があるといえよう。
3.「ニューファミリーの台頭」が示す社会の変革
AIが提示した「ニューファミリーの台頭」シナリオは、少子化問題の解決に向けた新たな視点を提供している。このシナリオが示唆するのは、多様な家族形態を認め、個人の選択を尊重する社会の実現である。従来の夫婦中心の家族観にとらわれず、シングルファミリーや多世代ファミリー、共同養育ファミリーなど、様々な形態の家族が共存する社会を目指すことが重要である。また、遺伝子工学やAIなどのテクノロジーを活用し、子供を産み育てることを選択的に行う新たな家族のあり方も視野に入れる必要がある。
こうした多様性を認め、「ニューファミリーの台頭」シナリオを実現するには、法制度の整備や国民の意識変革が不可欠である。現行の社会制度は一般に結婚による家族形成が前提となっており、シングルファミリーや多世代ファミリー、共同養育ファミリーなどの新たな家族形態が制度上の不利益を被らない法整備が求められる。
また、国民の意識変革も重要な課題である。伝統的な家族観が残る日本社会において、多様な家族形態を受け入れる意識の醸成には時間を要するだろう。さらに、テクノロジーを活用した新たな家族形態については、倫理的な議論が不可欠である。遺伝子工学やAIの利用には慎重な対応が求められ、社会的な合意形成のプロセスが重要である。
このように、「ニューファミリーの台頭」シナリオの実現には、法制度、国民の意識、倫理的課題などさまざまな課題があるが、これらに丁寧に向き合い、官民を挙げた取組みを進めていくことが求められるのではないか。
AIによる予測は、少子化問題の解決に向けた長期的な視点の重要性を示した。出生率の回復には、単なる経済的支援だけでなく、社会全体のあり方を見直し、多様な生き方や家族形態を認める価値観の醸成が不可欠である。そのためには、政府や企業、地域社会が連携し、包括的な少子化対策を推進していく必要がある。その際には、AIを活用した継続的なデータ分析は、施策の効果測定や改善策の立案に役立つと期待される。
少子化問題は、日本の将来を左右する重大な課題である。AIの提言にもあるように、社会のあり方を根本から見直し、多様性を認める包摂的な社会の実現に向けて、官民を挙げた取組みが求められるのではないだろうか。
柏村 祐
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 柏村 祐
かしわむら たすく
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ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション
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