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AIが予測する「もしトラ」の衝撃

~AIは2025年以降の日米関係をどのように予測するのか?~

柏村 祐

目次

1.注目される「もしトラ」

本年11月の米国大統領選挙が近づくにつれ、再選を目指すバイデン大統領とその対抗馬の戦いが日本でも注目を集めている。選挙の結果次第では、日米関係を含む国際情勢や経済に大きな影響を与える可能性があるためだ。特に、トランプ前大統領の再登場の可能性が高まるなか、「もしトラ」(もしトランプ氏が大統領選に勝利したら)と呼ばれるトランプ政権復活のシナリオについて、様々な議論がなされている。

前回のトランプ政権下で、日米同盟のあり方や貿易問題などをめぐり、日米間に一定の緊張が生じたことは記憶に新しい。そのため、「もしトラ」後の日米関係がどのように変化するのかについて、多くの専門家や評論家が予測を試みている。これらの予測は個人の知見や経験に基づくものだが、近年注目されているのが、AIを活用した予測である。機械学習や自然言語処理技術の進歩により、AIが膨大なデータから複雑なパターンを抽出し、未来を予測することが可能になりつつある。

そこで本レポートでは、最新のAI技術を用いて、「もしトラ」後の日米関係がどのように変化するのかを予測する。はたしてAIは、「もしトラ」後の日米関係をどのように予測するのか。その予測結果と、それが意味するところとは何か。本レポートでは、これらの問いに迫りたい。

2.AIが予測する「もしトラ」後の世界

ここからはトランプ前大統領の実績から想定される彼の思考パターンをAIに読み込ませ、「もしトラ」後の世界を予測する。まず、トランプ前大統領の政策決定や国際関係でのアプローチを分析し、その思考を明らかにする。次に、それをもとに、日米関係が友好的な場合と敵対的な場合の2通りの将来を予測する。この2つの工程を経ることで、「もしトラ」後の米国の政策や国際関係の変化、そして日米関係の行方について、AIならではの多角的な分析が可能となる。

まず、トランプ前大統領の政策決定や国際関係でのアプローチを分析し、その思考パターンを明らかにするために、AIに対して「トランプ前大統領の政策決定や国際関係でのアプローチを分析し、その思考を明らかにしてください」と指示をした。するとAIは、「分析したい政策領域を選択してください」と筆者に逆質問してきた(図表1)。

図表 1
図表 1

そこで選択肢として提示された経済政策、外交政策、移民政策、環境政策すべてにチェックを入れ、AIに回答を促した。その結果、AIはウェブ上に公開されている様々な情報からトランプ前大統領の政策決定や国際関係におけるアプローチについて「アメリカ・ファースト」の姿勢をはじめとする5項目の見出しを作成したうえで、その特徴を「「アメリカ・ファースト」の理念に基づき、アメリカの利益を最優先するものだった。同盟国との関係も金銭的な観点を重視し、国際協調よりも単独行動を好む傾向があった。ビジネスの世界で培った交渉術を外交にも持ち込み、強硬姿勢で臨むスタイルだったと言える」と結論づけた(図表2)。

図表 2
図表 2

次に、「もしトラ」後の友好的な日米関係の変化を予測するために、トランプ前大統領の特徴を改めてAIに読み込ませたうえで、「「もしトラ」後の友好的な日米関係の未来について2025年、2026年、2027年の動向を予測してください」と指示をした。その結果、AIは総論として「トランプ大統領の下での日米関係は、同盟関係を維持しつつも、アメリカの利益を優先する不均衡な状態が続く可能性が高い。日本は、対米関係と対中関係のバランスを取りながら、自国の国益を守るための外交努力が求められるだろう。ただし、トランプ大統領のビジネス的な交渉スタイルを踏まえると、粘り強い交渉によって、ある程度の妥協点を見出す余地はあると考えられる」と回答し、2025年、2026年、2027年にかけての日米の友好的な動向を予測した(図表3)。

図表 3
図表 3

さらに、「もしトラ」後の敵対的な日米関係の変化を予測するために、トランプ前大統領の特徴を改めてAIに読み込ませたうえで、「「もしトラ」後の敵対的な日米関係の未来について2025年、2026年、2027年の動向を予測してください」と指示したところ、AIは、前提条件として「トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の姿勢が極端に表れ、日本の利益が大きく損なわれる敵対的なシナリオです。日米同盟の形骸化、日本の外交的・経済的孤立など、日本にとって非常に厳しい状況が想定されます。ただし、これはあくまで可能性の一つであり、実際の日米関係の展開は、両国の外交努力や国際情勢の変化などによって左右されるでしょう」と回答し、2025年、2026年、2027年にかけての日米関係の動向を予測した(図表4)。

図表 4
図表 4

ただし、これらの予測はあくまで過去のデータに基づいているため、予期せぬ事態を想定していないことに留意が必要だ。トランプ氏の予測不可能な言動や、日本政府の対応次第では、予測とは大きく異なる展開も十分にありうる。また、AIによる予測は、現実の政治や国際関係の複雑さをすべて反映できているわけではない。トランプ氏の再選が及ぼす影響を多面的に把握するには、専門家の知見や現場の情報と組み合わせて総合的に判断することが不可欠である。とはいえ、AIを活用することで、「もしトラ」後の日米関係の行方について、一定の客観的な視座が得られたことは意義深い。

3.AIが示唆する「もしトラ」後の世界観

AIによる「もしトラ」後の予測実験は、私たちに大きな示唆を与えてくれる。トランプ前大統領の再選が現実のものとなれば、それは単なる政権交代以上の意味をもつことになるだろう。「アメリカ・ファースト」の理念に基づく自国優先の政策は、国際協調より単独行動を重視する傾向を一層強め、同盟国との関係にも大きな変化をもたらすことが予想される。

特に日米関係に目を向ければ、日本の防衛費負担の増加や貿易不均衡の是正を求める圧力が高まり、両国間の緊張が高まるリスクがある。それは、戦後日本の外交の基軸であった日米同盟のあり方そのものが問われる事態ともいえる。さらに、AIによる予測では、「もしトラ」後の日米関係の変化が世界経済や地政学的な勢力図に影響を与える可能性が示唆されている。

ただし、日米関係だけでなく、トランプ政権の復活は他の国際関係にも大きな影響を及ぼす可能性がある。たとえば、中国との関係では、貿易戦争の再燃や台湾問題をめぐる緊張の高まりが懸念される。また、イランや北朝鮮などの「敵対国」に対して強硬姿勢で臨むことが予想され、地域の不安定化を招くリスクがある。一方で、米露関係については、プーチン大統領との個人的な関係を重視するトランプ氏の姿勢から改善される可能性もあるが、それが同盟国との関係にどのような影響を与えるかは不透明である。

以上のようなAIが示唆する「もしトラ」後の世界観は、今後の日本の立ち位置について改めて考えるきっかけを提供してくれる。それを手がかりに、不確実性の高まる国際関係のなかで、日本としての戦略的な方向性を模索していくことが求められるだろう。

本レポートでAIを活用して試みた分析は、「もしトラ」後の国際関係の変化を見通すうえで一定の示唆を与えてくれた。重要なのは、この知見を踏まえて、日本の国益を守りつつ、国際社会の平和と繁栄に貢献する外交・経済戦略を構築していくことである。たとえ不確実性の高い時代にあっても、検討のための1つの材料としてAIを活用しつつ、人間自らが思考実験をしっかりと行うことで、国益にかなう戦略を立案・展開していくことが求められるのである。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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