多様性理解のカギは「知ること」にあり(続)

~外国人への情報伝達には英語が必須?~

水野 映子

目次

1.在留外国人に対する調査から

筆者はこれまで、日本に住む外国人や日本に来る外国人がみな英語を理解できるわけではないことや英語での情報提供・コミュニケーションを望むとは限らないこと、英語以外にも多様な情報提供・コミュニケーション方法があること、そのひとつとして「やさしい日本語」という方法もあることなどを示してきた(注1)。その背景には、英語などの外国語ができないと、外国人への情報提供や外国人とのコミュニケーションができない、という思い込みが一般に根強いことがある。

出入国在留管理庁は2020年度から毎年、日本に住む外国人を対象に「在留外国人に対する基礎調査」を実施している。先月(2023年9月)公表された同調査の最新版(2022年度版)では、「情報を入手する時に、情報提供される言語として、母語以外ではどの言語を希望しますか」という新しい質問が加えられた。英語や日本語などでの情報提供を望む外国人がどの程度いるかを裏付けるデータである。本稿ではこの調査の結果をもとに、日本に住む外国人に対してどのような情報提供が必要かを考える。

2.外国人の日本語能力は多様

まず、この質問への回答結果をみる前に、回答者(在留外国人)の日本語能力をみてみよう。「あなたは日本語でどの程度会話ができますか/文章が読めますか」という質問文に対し、回答者はそれぞれ図表1に示す6段階で自己評価をしている。

会話の能力は、「日常生活で必要な会話ができる」が29.6%であり、「流ちょうに自然に会話をすることができる」「どんな内容であっても相手や状況に合わせて適切に会話を進めることができる」と合わせると74.7%となる。すなわち、およそ4人に3人が日常生活レベル以上の会話ができると答えている。

一方、文章を読む能力に関しては、「日常生活でよく使われる言葉で書かれたEメールなどを読むことができる」「ある視点に基づいた新聞記事などを読むことができる」「どんな内容の文章でも容易に読むことができる」がそれぞれ約2割であり、合わせると約6割となる。会話の能力に比べると読む能力のほうが、日常生活レベル以上だと自己評価している人は少ないといえる。

日本での通算在住年数別にみると、当然ながら在住年数が長い人ほど会話の能力・読む能力ともに高い傾向にある。ただし、在住年数が10年以上でも、日常生活レベル程度に達していない人もいる。

図表1
図表1

3.母語以外で最も望む情報提供言語は日本語

次に、1で触れた「情報を入手する時に、情報提供される言語として、母語以外ではどの言語を希望しますか」という質問への回答結果をみる(図表2)。

全体では、「日本語」を希望する人の割合が52.7%と最も高い。次に、「英語」(37.6%)の割合が高く、「やさしい日本語」(34.2%)が僅差で続いている。それより下位はいずれも3%に満たない。母語以外なら日本語(通常の日本語またはやさしい日本語)での情報提供を望む人がかなり多いといえる。

また、回答者の母語別にみると、「英語」を望む人の割合が高い場合もあるが、「英語」より「日本語」や「やさしい日本語」を望む人の割合のほうが高い場合もある。母語以外なら英語での情報提供が最も望ましいとは限らないことが、これらのデータからもわかる。

なお、日本語能力別に分析したデータは公表されていないが、日本語能力によってもどの言語を希望するかは異なるだろう。また、この質問では「情報提供される言語」が書き言葉か話し言葉かは明記されていないが、どちらで情報提供されるかによっても望む言語は違うかもしれない。

図表2
図表2

4.「知ること」を通じて柔軟な対応を

以上をふまえ、外国人に情報を伝える際に考慮すべき点を改めて整理する。

まず外国人といっても、その母語は多様であり、日本語や英語などの能力も多様である。ゆえに、外国人がどのような言語での情報提供やコミュニケーションを望むかは、人によって異なる。そのことを認識したうえで、相手の意向や言語能力、情報の内容などに合わせて、日本語の難易度を調整したり、日本語以外で相手が使える言語(たとえば英語)を自分も使えるなら使ったり、あるいは通訳・翻訳を介したりすることなどが大切だろう。

前々回・前回の拙稿(注2)では、視覚・聴覚に障害のある人に接する場合を例にして、情報提供・コミュニケーション方法に関する知識を得て思い込み・誤解をなくすことや、相手の意向を知ることなどの重要性を示した。外国人に接する場合も基本は同じである。「知ること」が柔軟な対応、ひいては円滑な情報伝達やコミュニケーションの実現につながるといえる。


水野 映子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

水野 映子

みずの えいこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: ユニバーサルデザイン

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ