仮想通貨プラットフォーム「DEX」の衝撃

~あなたのお財布が暗号資産の扉を開く~

柏村 祐

目次

1.CEXとDEX

暗号資産(仮想通貨)に注目が集まっている。

その要因として暗号資産(仮想通貨)の価格上昇が大きいことが挙げられる。暗号資産(仮想通貨)のトップランナーとして2009年に登場したビットコインの価格は当初1円以下であったが、2021年4月には700万円を超える局面もあり、投機対象として世界中で取引されている。

ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)を売買するための取引所は、CEX(Centralized Exchange)とDEX(Decentralized Exchange)に分けられる。CEXとは、暗号資産(仮想通貨)の取引所として現在主流となっている中央集権型取引所である。運営会社が存在するCEXは、運営会社自体が暗号資産(仮想通貨)を保有しており、利用者はその通貨を取引している。一方、DEXは、特定の取引の場がない分散型取引所であり、運営会社は存在しない。運営会社が存在しないDEXでは、契約の締結や履行がプログラムによって自動実行されるスマートコントラクトという仕組みが用いられている。

運営会社が存在するCEXの場合、秘密鍵の管理やサーバ運用など、取引にあたり必要となる機能や情報について管理者である取引所を信頼する必要がある。一方、管理者が存在しないDEXでは、暗号通貨(仮想通貨)の買い手と売り手をマッチングし、取引が行われるため、秘密鍵の管理は自分自身で行う。本稿では、新しい取引所形態となるDEXについて概観する(図表1)。

図表1
図表1

2.DEXが利用される理由

管理者がいるCEXがあるにも関わらず、なぜDEXが利用されるのだろうか。

実際に筆者がDEXを利用した経験を踏まえると、その理由は「本人確認不要」、「自分のウォレット(財布)の活用」にあると考えている。

CEXで暗号資産(仮想通貨)を取引するには、運転免許証やパスポートなど自分自身を証明する書類を提出する必要があり、それが管理者によって審査、承認されれば、取引できるようになる。一方、DEXは、暗号資産(仮想通貨)を保管するウォレット(財布)を持ってさえいれば、すぐに取引を開始できる。無料で提供されるMetaMask等のウォレット(財布)を利用するには、プログラムをインターネットサイトからダウンロードし初期設定を行う必要があるが、ウォレット(財布)とDEXを連携すれば「本人確認不要」で取引できるようになる。

また、DEXでは「自分のウォレット(財布)の活用」が特徴となっている。CEXの場合、自分自身の暗号資産(仮想通貨)を預けたうえで取引をする必要があるが、DEXの場合自分自身の暗号資産(仮想通貨)を預ける必要はない。DEXはあくまで買い手と売り手をマッチングする仕組みを提供しているだけで、自分の暗号資産(仮想通貨)はMetaMask等のウォレット(財布)に保管されている。そのため、ウォレット(財布)を開くためには、自分自身が手書きなどで管理する秘密鍵を無くさないように保管しておくことが重要となる。万が一紛失した場合、ウォレット(財布)を開けることは出来なくなり、永遠に取り出せなくなるため最大限の注意が必要となる。ちなみに自分の不注意により所持する暗号資産(仮想通貨)を引き出せないことをセルフGOXという。

3.DEXの雄Uniswap

世界に点在するDEXの利用状況を分析するDEXトラッカーを確認すれば、どのDEXの利用率が高いかを把握できる。2021年5月時点で最も利用されているDEXは「Uniswap v2(以下Uniswap)」が約83%、「IDEX」が約5%、「Ether Delta」が約3%、「Sushiswap」が約2%となっている(図表2)。

図表2
図表2

圧倒的なシェアを占める「Uniswap」の秘密はどこにあるのだろうか。

従来のDEXは、認知度が低いことから取引するユーザが少ないため暗号資産(仮想通貨)の流動性が低いことが最大の課題とされた。「Uniswap」が圧倒的なシェアを獲得している背景には、この課題を解決するために導入したインセンティブ設計にある。その内容は、利用者が保有する暗号資産(仮想通貨)を「Uniswap」に預けると、報酬としてUNIトークンをもらえるというものだ。UNIトークンは暗号資産(仮想通貨)であり、法定通貨や他の暗号資産(仮想通貨)と交換することができる。つまり、利用者は暗号資産(仮想通貨)を預けることにより、報酬としてUNIトークンをもらえると同時に、DEXである「Uniswap」側は、預けられた暗号資産(仮想通貨)をもとに取引における流動性の確保を実現している。「Uniswap」が最も利用率が高い理由は、このようなインセンティブを他のDEXに先駆けて設計し実装したことにある。

このUNIトークンの価値推移を確認すると、2020年9月時点で約100円だった価格は、2021年4月には約4,600円と上昇している(図表3)。

図表3
図表3

また、「Uniswap」の仕組みと似たものとして「Sushiswap」や「Pancakeswap」といったDEXも登場しており、UNIトークン同様、報酬として提供されるSUSHIトークンやCAKEトークンはその価値を上昇している。

「Uniswap」や「Sushiswap」はトークンを報酬としてもらいたい利用者からの暗号資産(仮想通貨)の預け入れを促進する効果を発揮しており、同時にDEXの流動性が向上するという好循環を実現している。

「Uniswap」をはじめとする最先端のDEXは、インターネットさえあればいつでもどこでも暗号資産(仮想通貨)の価値を交換できるプラットフォームとして進化し続けている。暗号資産(仮想通貨)の価値交換において管理者に依存しない自律分散型のDEXが創り出した取引形態は、伝統的な金融取引の常識に囚われた発想からは創造できなかった仕組みといえる。運営会社がいないことから責任の所在が不明確でリスクがあると捉えることもできるが、暗号資産(仮想通貨)のみならず、「モノ」や「価値」を取引する際に活用できるテクノロジーが創り出したイノベーションといえるだろう。

柏村 祐

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