- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 四半期見通し『アジア・新興国~中東情勢の緊迫化の行方に左右される展開が続く~』(2026年7月号)
- 第一ライフ研レポート
-
2026.06.22
アジア経済
新興国経済
アジア経済見通し
四半期見通し『アジア・新興国~中東情勢の緊迫化の行方に左右される展開が続く~』(2026年7月号)
西濵 徹
2026年の中国経済は良好なスタートを切った
中国当局は2026年3月に開催した全人代において、2026年の経済成長率目標を「4.5~5.0%」に引き下げる方針を示した。背景には、トランプ関税の本格発動による世界経済への悪影響が外需の足かせとなることが懸念されるほか、不動産不況の長期化や若年層を中心とする雇用不安が内需の重しとなるなど、国内外双方で景気の下押し圧力が山積しているためである。
しかし、1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.0%と前期(同+4.5%)から伸びが加速し、3四半期ぶりに5%台の成長となった。前期比年率ベースの成長率も+5.3%と前期(同+4.9%)から加速し、5四半期ぶりの高い伸びを記録した。この結果、2026年の中国経済は良好なスタートを切った。外需が堅調に推移する一方、内需は力強さを欠くなど、両者の動きは対照的であり、足元の景気は外需依存をさらに強めている。
中国経済は外需への依存を強める展開が続く
5月の米中首脳会談は、金融市場の期待を大きく下回る内容になったと考えられる。一方で、米中摩擦が一段と激化する事態は回避されており、今後の貿易・投資に関する協議を経て米中貿易がさらに持ち直せば、中国経済にとって外需を下支えする要因となると期待される。
一方、不動産市況は一部の大都市で持ち直しの動きがみられるものの、地方都市を中心に底打ちの兆しは依然として乏しい。中東情勢の緊迫化を受けた原油をはじめとする商品市況の上昇により、中国でも企業部門はインフレ圧力に直面している。一方で、個人消費の先行きに不透明感が残るなか、最終製品への価格転嫁は進まず、収益環境の悪化という課題に直面している。先行きの中国景気は、引き続き供給サイドがけん引役となる一方、需要は内需を中心に力強さを欠くなど「K字型」の様相を呈し、業種や主体による格差を伴う不均衡な成長が続く。
AI関連需要の拡大がアジア新興国経済を支援
アジア新興国の多くは構造的に外需依存度が相対的に高く、輸出全体に占める対米輸出比率が高い国を中心に、トランプ関税による悪影響が懸念されていた。しかし、各国に対する米国の関税率はおおむね同水準にとどまるなど、関税率の差が競争力に大きな影響を及ぼす事態は回避されている。米中摩擦の緩和も、構造的に外需依存度が高いアジア新興国にとって追い風となり得る。さらに、世界的なAI関連投資の拡大を追い風として輸出が押し上げられるなど、景気を下支えする動きも確認されている。このため、アジア新興国を取り巻く外需環境は改善に向かっている。
中東情勢はアジア新興国に悪影響を与える懸念
一方で、中東情勢の緊迫化を受けた原油などエネルギー資源価格の上昇は、それらの輸入を中東に依存するアジア新興国経済にとって大きな下押し要因となっている。
原油高はインフレの進行に加え、対外収支の悪化を警戒した資金流出が通貨安を招き、輸入インフレ圧力も高まっている。さらに、化学肥料価格の上昇は農業生産に悪影響を与えることが懸念されている。2026年はスーパーエルニーニョの発生が予想されており、異常気象の発生による悪影響も重なり、食料インフレも警戒されている。したがって、生活必需品を中心にインフレが進行する可能性が高まっている。これを受け、中央銀行は金融引き締めを迫られている。内需依存度の高いアジア新興国にとっては、インフレと金融引き締めが併存し、景気の足かせとなる材料は少なくない。一方、中東関連の貿易活動の停滞は、中東向け輸出比率が高い国々の景気を下押しすることが避けられない。中東からの移民送金への依存度が高い南アジア諸国などでは、移民送金の減少による悪影響が顕在化する可能性にも注意が必要である。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
OPECプラスは増産見送りを継続、2027年の生産枠設定が次の焦点 ~足元の供給不足と将来的な供給過剰の双方をにらむ難しい舵取りが続く~
新興国経済
西濵 徹
-
韓国・9月鉱工業生産も半導体をけん引役にした拡大が続く(Asia Weekly) ~半導体のほか、自動車・電装品、電気機械関連など外需が生産を押し上げる~
アジア経済
西濵 徹
-
中共5中全会閉幕、次期党大会を見据えて党・軍への統制強化を加速 ~経済政策の実効性と日中関係の行方にも注目~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ中銀、インフレ加速も景気支援を重視して4会合連続で金利据え置き ~原油高やバーツ安など物価上昇リスクがくすぶるなか、難しい政策運営が続くであろう~
アジア経済
西濵 徹
-
RBNZの予想外の利上げ見送りで、NZドル相場は一段と弱含むか ~追加利上げの時期や総選挙を巡る不透明感が重なり、豪ドルとの対照的な動きが続くか~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
AI・半導体で韓国景気は堅調も、「K字型」の様相が一段と鮮明に ~家計部門の低迷が李政権の重しとなる可能性~
アジア経済
西濵 徹
-
韓国中銀、株価急落などで利上げ休止も、金融引き締めの長期化を示唆 ~景気に楽観も、インフレを警戒して追加利上げに含み、申総裁は一段のウォン高を志向~
アジア経済
西濵 徹
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年10月 ~AI特需の加速とインフレの再燃~
アジア経済
阿原 健一郎
-
中国・7-9月 GDP は前年比+4.5%に加速も、外需依存の構図は変わらず ~供給サイドが成長をけん引する一方、個人消費と不動産は力強さを欠く展開が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
足元の中国経済は、物価の二極化と外需依存が一段と鮮明に ~企業部門のインフレと家計部門のディスインフレが共存、輸出好調による人民元高の行方は~
アジア経済
西濵 徹

