Global Trends Global Trends

時事雑感(2025年9月号)

嶌峰 義清

先の参院選では、与党が議席を大幅に減らして過半数を割り込んだ。最大の争点は物価高への対応と言われていたことから判断すれば、与党がこれまで取ってきた対策や、新たに打ち出した給付金の支給に対する世論の支持は十分には得られなかったということだろう。

これに対し、野党が打ち出していた物価高対策は消費税率の引き下げであった。ただし、その内容は各党のバラツキが大きい。議席数を勘案すれば、消費税減税を実現するためには野党案を一本化する必要があるが、それは困難ではないかと言われている。与党が提示する給付金が野党によって廃案となる一方で、野党も対抗策を打ち出せないのであれば、選挙の争点となっていた問題の解決に向けて何も動きがとれないことになる。これでは民意とかけ離れている。

今回の選挙では、総じて既存政党が議席を減らし、新興の政党が議席を増やした。メディアなどの調査によれば、前回衆院選と比べると若い年代の投票率が上昇し、全体を押し上げたとされている。各党の公約などをみると、総じて既存政党はバランスが取れた現実的な政策を列挙しているのに対し、新興政党はそうしたものに縛られない、よく言えば大胆な、悪く言えば財源問題や国際関係などに影響を来しかねない尖った主張が目立つ。

IMF(国際通貨基金)の予想によれば、日本の経済規模は今年インドに抜かれ、世界5位となる。この先も、人口減少から抜け出せないまま、日本は世界の成長について行けなくなる可能性がある。それは一線を退く者には仕方の無いことで済むのかもしれないが、これからを担う若い層には厳しい未来を示唆するものだ。バランスの取れた政策では抜け出せない厳しい未来を拒絶するのであれば、大胆な政策も選択肢となり得る。このように考えると、今回の選挙の争点は物価高対策ではなく、これまでの政治のあり方そのものということになる。「党」ではなく、与野党問わず知恵を絞った政策の議論が求められる。

(嶌峰 義清)

嶌峰 義清


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ