- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 内外経済ウォッチ『米国~トランプ関税のインフレ懸念でFRBは後手に回る恐れ~』(2025年5月号)
- 第一生命経済研レポート
-
2025.04.17
米国経済
米国金融政策
トランプ関税
内外経済ウォッチ『米国~トランプ関税のインフレ懸念でFRBは後手に回る恐れ~』(2025年5月号)
桂畑 誠治
大規模なトランプ関税発動
トランプ2.0では、一方的な関税賦課、いわゆる“トランプ関税”の発動が続いている。2月に、中国からの製品輸入に10%の関税を賦課した。3月に、中国からの製品輸入に10%上乗せした他、カナダ、メキシコからの一部の輸入製品に25%、鉄鋼・アルミニウム輸入に25%の関税を課した。4月3日に自動車に25%の関税、5日に10%の相互関税、9日に上乗せ関税を課した。これらの関税賦課に対して、中国など一部の国は報復関税や輸出規制などの対抗措置を取った。今後、相互関税の上乗せ分に関しては、交渉で引き下げられる可能性がある一方、交渉決裂によって相手国が対抗措置を取れば、米国は関税をさらに上乗せする可能性が高い。また、トランプ政権は、自動車部品、半導体、医薬品、木材、銅などへの関税賦課を予定しており、当面不透明感の強い状況が続こう。
米経済は、悪天候や不確実性の高まりを受けた採用や投資の抑制などによって減速しているものの、基調としては堅調さを維持している。労働市場は、3月の非農業部門雇用者数が前月差+22.8万人と堅調さを維持し、失業率は4.2%と低い水準にとどまった。一方、インフレは、2月にPCEコアデフレーターが前年同月比+2.8%(1月+2.7%)と下げ渋っている。
このような中、FRBは、1、3月の2会合連続で政策金利を据え置いた。トランプ2.0で不確実性が高まっていることで、様子見姿勢が適切と判断した。

FRBは労働市場の悪化後に利下げ再開か
パウエルFRB議長は、相互関税公表後の講演で「不確実性は依然として高い状態だが、関税引き上げは想定よりもかなり大幅になることが明らかになりつつある」と説明したうえで、インフレ率の上昇や成長率の鈍化が想定よりも大きくなるとの見方を示した。それでも、FRBは政策スタンスの調整を検討する前に、状況がより明確になるまで様子見できるとの見方を維持した。
パウエル議長は、「FRBの責務は長期のインフレ期待をしっかりと安定させ、価格水準の一時的な上昇が持続的なインフレの問題に発展しないようにすること」と、関税がインフレ率を押し上げ、景気を悪化させる可能性が高いが、インフレ率の上昇を一時的なものにとどめることが重要との見方を示した。
インフレ率が上昇するもとで、利下げを急げば早期に景気が強まり、高インフレが定着するリスクがあるため、今局面でFRBは予防的な利下げを実施できないだろう。このため、利下げは後手に回り、景気や労働市場の悪化後となる可能性が高く、FRBは大幅な利下げを実施せざるを得ないだろう。

桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
-
経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
執筆者の最近のレポート
-
米国:利下げ選択肢が消滅、インフレ高止まりで利上げへ ~7月FOMC議事要旨~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:高い不確実性の中、7月鉱工業生産は拡大継続 ~自動車低下(▲2.1%)も、AI関連や他業種の好調がカバー~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:増減を繰り返すも基調は低調(26年7月住宅着工) ~着工は▲12.4%、許可件数は持ち直すも高金利と政策不透明感で底位推移~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:7月小売売上高は反動で減少も、基調は巡航速度を維持 ~FRBのタカ派的な据え置き政策を支持~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:予想に一致した7月CPIとインフレ圧力の減速傾向 ~FRBによる9月の政策金利据え置き観測を後押し~
米国経済
桂畑 誠治
関連テーマのレポート
-
米国:利下げ選択肢が消滅、インフレ高止まりで利上げへ ~7月FOMC議事要旨~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国経済マンスリー:2026年8月 ~やや弱めの消費・雇用指標~
米国経済
前田 和馬
-
米国:7月小売売上高は反動で減少も、基調は巡航速度を維持 ~FRBのタカ派的な据え置き政策を支持~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:予想に一致した7月CPIとインフレ圧力の減速傾向 ~FRBによる9月の政策金利据え置き観測を後押し~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:予想外の雇用者数減少と失業率の低下(26年7月雇用統計) ~FRBは据え置きへ。トランプ2.0の供給制約と根強い需要で失業率は低位安定~
米国経済
桂畑 誠治