米国:4月鉱工業生産はプラスに転じ回復トレンド強まる

~中東情勢が重石となる一方、AI関連、自動車が押し上げ~

桂畑 誠治

目次

1. 市場予想を上回って生産は拡大

26年4月の米国鉱工業生産は、前月比+0.7%と市場予想中央値同+0.3%(筆者予想:同+0.4%)を大幅に上回り、前月の同▲0.3%から力強いプラスへと転じた。イランを中心とした中東情勢の緊迫化に伴い先行きへの不確実性は高まっているものの、足元の生産拡大のモメンタムは確実に強まっており、26年入り後の生産活動は総じて活発化していると評価できる。

部門別の動向をみると、それぞれ特有の構造要因が影響した。まず鉱業部門は、前月比▲0.1%と3月の同▲1.6%からマイナス幅を劇的に縮小させた。シェール企業が慎重姿勢を崩さず、新規の油田・ガス田を掘る活動(前月比▲1.7%)の落ち込みが続いた一方、季節外れの暑さに伴う国内の電力需要や、海外需要の拡大を見越した天然ガス生産が大幅に増加し、全体を下支えした。また、公益事業は、3月の落ち込みに対する反動に加え、4月後半の気温上昇に伴う冷房需要の早期立ち上がりを背景に、同+1.9%(前月:同▲1.4%)と大幅なプラスを記録した。

さらに、全体の牽引役となった製造業部門は、自動車部門の拡大やハイテク部門の伸び率高まりなどを受け、同+0.6%(前月:同+0.1%)へと加速し、市場予想中央値の同+0.2%(筆者予想:同+0.3%)を大幅に上回る良好な結果となった。

図表
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2. 製造業部門はAI、自動車の拡大が支える一方、高金利・インフレが重石となり二極化

製造業部門の詳細をみると、強固なAI需要が強力な下支えとなる一方で、業種間での二極化が鮮明となっている。製造業全20業種のうち、4月に拡大したのは12業種と、3月の11業種から増加した。プラス成長となった業種では、旺盛なハイテク需要を背景にコンピューター・電子(+1.5%)が伸長したほか、データーセンターや送電網の増設ニーズを受けて非鉄(+1.3%)や一次金属(+0.9%)といった素材関連も総じて拡大した。さらに、ライトトラックなどの増産が目立った自動車・同部品(+3.7%)や、政府の国防支出の拡大に支えられた航空宇宙・その他輸送機器(+1.6%)が高い伸びを示した。次いで、印刷・同サポート(+1.3%)、石油・石炭製品(+1.0%)、食品・飲料・タバコ(+0.7%)、一般機械(+0.6%)、加工金属(+0.6%)、電気設備・機器・同部品(+0.4%)、木材製品(+0.4%)の計12業種(前月11業種)が拡大を記録している。

一方で、高金利やインフレの逆風を受けるアパレル・皮革(▲2.2%)、家具・同関連製品(▲1.8%)、化学(▲0.9%)、プラスチック・ゴム(▲0.9%)の落ち込みが目立ったほか、繊維(▲0.6%)、紙・パルプ(▲0.2%)、その他耐久財(▲0.2%)、その他製造業(▲0.1%)の計8業種(前月8業種)は縮小を余儀なくされ、マクロ経済の拡大基調が続く中で明暗が分かれる格好となった。

3. 生産基調の回復トレンドの加速も設備稼働率は依然として低水準

生産の基調を3ヵ月移動平均・3ヵ月前対比年率で確認すると、4月の鉱工業全体は鉱業および製造業の押し上げによって同+3.2%(前月+2.1%)へとプラス幅を拡大しており、拡大ペースの加速が明確に窺える。なかでも製造業生産は+4.0%(同+2.9%)へと増加ペースを速めた。同ベースでは、ハイテク関連が+12.2%(同+16.8%)と高い伸びを維持したほか、自動車も同+20.8%(同+17.4%)と増勢を大きく強めて全体の底上げに寄与している。

ただし、生産能力の拡大が続くなかで生産が増加したため、4月の設備稼働率は鉱工業で76.1%(前月75.7%)、製造業で75.8%(前月75.4%)とともに上昇したものの、依然として長期平均(1972~2025年平均)をそれぞれ3.3ポイント、2.4ポイント下回っている。足元の生産の勢いは強まっているものの、サプライチェーンにおける生産能力の余力は依然として大きいままである。

4. 2026年通期の製造業生産の加速予想

26年通期の製造業生産の見通しについては、今後さらなる加速が予想される。足元の前年同月比の伸びは製造業全体で+1.3%(前月+0.6%)まで拡大しており、通期では前年比+1.5%(25年+0.8%、24年▲1.0%)に達する見込みである。これは、減税に伴う個人消費の喚起や設備投資拡大に加え、旺盛なAI需要の急拡大、製造業の国内回帰、地政学リスクの長期化に伴う軍事装備品の需要増、そして歴史的に低い水準にある在庫を背景とした在庫補充活動などが、今後の米国製造業を強力に牽引すると期待されるためである。

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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