内外経済ウォッチ『米国~トランプ大統領誕生でもFRBは当面利下げ継続~』(2024年12月号)

桂畑 誠治

目次

トリプルレッドの可能性が高まる

米国では、24年11月5日に大統領・議会選挙が実施され、共和党のトランプ前大統領が312人の選挙人を獲得、民主党のカマラ・ハリス副大統領の226人を上回り、再選が確定した。同時に実施された議会選挙では、11月8日時点で上院の全100議席のうち共和党が改選・非改選を含めて53議席を獲得し、過半数を上回った。民主党は45議席にとどまっている。一方、下院では、全435議席(過半数218議席)のうち共和党が212議席、民主党が201議席を獲得しており、議会は共和党が多数党となる可能性が高い。

資料1 実質GDPの推移(前期比年率)
資料1 実質GDPの推移(前期比年率)

FRBは短期的には利下げ継続

大統領選直後の11月6、7日に開催されたFOMCで、FRBは政策金利を予想通り25bp引き下げ、FFレート誘導目標レンジを4.50~4.75%とすることを全会一致で決定した。7-9月期の実質GDP成長率が前期比年率+2.8%と潜在成長率と推測される同+1.8%を大幅に上回り堅調な経済成長が持続する中、10月の失業率は4.1%と低い水準ながら昨年の3%台から上昇し労働市場の軟化を示している。インフレが目標に向けて低下する可能性が高まるもと、高い政策金利によって労働市場が更に軟化することを回避するため、FRBは利下げを決定した。パウエルFRB議長は、政策金利が「かなり制約的な水準からの再調整の過程にある」と説明し、利下げ継続を示唆した。

トランプ前大統領が再選された影響に関して、パウエル議長は、短期的にはFRBの政策決定に「影響しない」と説明した。大統領が変わることで「経済に影響を与える要因は多いものの、いかなる政権が及ぼし得る経済的影響も推測したり、臆測したり、仮定したりすることはない」とし、政策の実現可能性が高まるまで、FRBの経済モデルに反映させず、利下げの妨げにはならないとの見方を示した。ただし、トランプ政権の公約である全輸入品に対する10%の関税引き上げ、環境規制の緩和などは大統領令で早期に実施できるため、短期的に長期金利を押し上げ、ドル高が進み、経済成長は押し下げられよう。同時に、インフレ圧力はドル高によって緩和される可能性が高い。景気減速、インフレの鈍化が続くもと、労働市場の更なる軟化を回避するために、FRBは当面利下げを継続すると予想される。

大統領がトランプ氏、共和党が上下両院で過半数を握るトリプルレッドでは、法人税率の15%(現在21%)への引き下げ、チップ減税のほか、1期目の富裕層向け減税の継続など大規模減税法が成立する可能性が高く、26年の経済成長やインフレを押し上げるとみられる。ただし、米国経済が25年中にソフトランディングに成功していれば、労働需要の過熱によって、コアインフレが押し上げられる可能性が高い。FRBが大幅な利上げに追い込まれれば、米経済は26年に景気後退に陥る恐れがある。

資料2 失業率の推移
資料2 失業率の推移

桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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