インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~チリ・ボリッチ政権がリチウム国有化に舵、EV戦略に荒波か?~』(2023年6月号)

西濵 徹

目次

厳しい景気で政策見直しを余儀なくされる状況

南米チリでは、一昨年の大統領選で急進左派のボリッチ氏が勝利し、ここ数年中南米諸国に広がりをみせる『ピンクの潮流』とも呼ばれる左派政権が誕生するうねりが同国にも及んだ。同国は長きに亘り『小さい政府』を志向する新自由主義的な経済政策の下で高い経済成長を実現してきたが、その背後で社会経済格差が拡大してきた。事実、OECD加盟国のなかで最もジニ係数が高いなど経済格差が大きい。さらに、ここ数年はコロナ禍による景気減速が、社会保障が手薄ななかで貧困層や低所得者層を直撃し、左派政権が誕生する一因になった。

ボリッチ氏は、社会保障の全面的な充実に加え、財政運営面でも『大きな政府』への転換を図り、全方位外交を半ば国是としてきた通商政策の大転換を公約に掲げた。しかし、物価高と金利高の共存が長期化するとともに、複数の銅鉱山でストライキが発生し、昨年は1-3月から3四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥り、その後も景気は力強さを欠く展開が続く。さらに、公約の憲法改正も一度とん挫したほか、昨年末にはCPTPPの批准に動くなど政策の見直しを余儀なくされている。他方、環境保護を重点政策の一つに掲げるなか、社会保障財源の確保を目的に鉱山企業への課税強化に加え、環境保護を目的に国有化を目指す姿勢をみせてきた。

資源ナショナリズムの動きは資源確保に影響も

憲法改正案では、環境保護の観点から主力鉱物の銅やリチウムなどの国有化が可能となる提案が盛り込まれている。こうしたなか、3月にボリッチ大統領はリチウム産業を経済成長の促進と環境保護を目的に国有化する方針を明らかにした。昨年の同国のリチウム生産量は世界2位(30.2%)、推定埋蔵量も世界1位(35.8%)と存在感が高く、リチウムは電気自動車(EV)用バッテリーに欠かせず、世界的な需要拡大を受けて囲い込みの動きが活発化している。世界的に資源ナショナリズムの動きが広がるなか、同国もその波に乗ったと捉えることが出来る。

現在は民間企業が採掘権を有するが、将来的には国営企業が過半出資の官民連携で実施する見通しであり、民間企業の採掘権も何らかの形で国営企業に移管される可能性は高いと見込まれる。なお、政権与党は議会において少数派に留まるなど政策運営を巡って対立が続いており、国有化計画が現実に進展出来るかは現時点においてはハードルが高い。とはいえ、足下においては多くの資源国で『資源ナショナリズム』の動きが広がりをみせていることは将来的な資源確保に対する不透明要因となることは避けられない。翻って日本においては、炭酸リチウムの輸入の大宗をチリに依存しており、仮に国有化が進展すれば調達戦略に影響が出ることは必至であり、その動向を注視する必要がある。

資料1
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資料2
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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