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四半期見通し『アジア・新興国~中国のゼロコロナ終了が追い風となるか~』(2023年4月号)

西濵 徹

目次

中国はゼロコロナ終了で経済の安定を重視へ

中国経済を巡っては、長期に亘り当局が徹底した検査と隔離など行動制限を課す『ゼロコロナ戦略』に拘泥し、コロナ禍の当初こそ早期の封じ込めによる景気回復を果たす一方、感染拡大の度に行動制限が課され、その後は景気の足を引っ張る展開が続いた。しかし、ゼロコロナ戦略の長期化に伴う景気悪化に加え、若年層を中心とする雇用悪化を受けて不満が蓄積し、昨年11月に抗議運動が活発化したことから、昨年末に当局は一転してゼロコロナ戦略を終了させた。直後は感染動向の急激な悪化による経済活動の萎縮を招き、昨年10-12月の実質GDP成長率は前年比+0.4%、前期比年率ではゼロ成長となるなど景気は踊り場状態となった。

しかし、年明け以降の感染動向は落ち着きを取り戻しており、経済活動の正常化が進んでいることを反映して企業マインドは底打ちするなど、コロナ禍による実体経済への悪影響は一巡していると捉えられる。さらに、3月の全人代では今年の経済成長率の目標を「5.0%前後」に引き下げる一方、雇用創出による内需拡大を通じて経済の安定を目指す方針を強調する姿勢をみせている。経済成長率のハードルを下げる一方、着実な景気回復を通じた経済の安定を重視する意図がうかがえる。中長期的にみれば人口減少など課題が山積しているものの、短期的にはゼロコロナの終了により景気の足かせが外れることで底堅い展開が続くと予想される。

図表1
図表1

アジア新興国は中国景気の恩恵を受けるか

その他のアジア新興国では、感染一服を受けた行動制限の解除による経済活動の正常化を受けたペントアップ・ディマンドの発現に加え、欧米など主要国景気の堅調さを追い風に外需も押し上げられた。他方、中国のゼロコロナへの拘泥はサプライチェーンの混乱を通じて景気の足を引っ張った。さらに、ウクライナ問題に伴う商品高は生活必需品を中心とするインフレを招き、経済活動の正常化もインフレ昂進に繋がった。さらに、国際金融市場での米ドル高を受けた各国の通貨安は輸入インフレ懸念を招き、各国中銀は物価、及び為替の安定を目的に金融引き締めを迫られ、物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。

中国によるゼロコロナ終了は中国経済への依存度が相対的に高いアジア新興国の追い風となると期待される。他方、欧米など主要国景気の減速懸念が外需の足かせとなり得る上、中国景気の底入れは商品高を再燃させる可能性がある。さらに、欧米による金融引き締め長期化観測はアジア新興国にとり通貨安圧力となる上、商品高も重なりインフレが長期化する可能性も考えられる。また、穀物やエネルギー資源などを輸入に依存する国々にとっては対外収支の悪化要因となることも予想され、そのことを理由に資金流出懸念が強まることも考えられる。外需の不透明感に加え、内需には物価高と金利高の共存が足かせとなり得ることにも要注意である。

図表2
図表2

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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