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2023.02.17
アジア経済
インドネシア経済
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~未加工鉱石禁輸に再び動くインドネシア~』(2023年3月号)
西濵 徹
インドネシア経済は、アジア有数の資源国故に資源価格の影響を受けやすい特徴があり、同国政府は2014年に加工されていない鉱物の輸出禁止に動いた。これは経済の資源依存からの脱却、関連産業のすそ野拡大を狙ったとみられる。しかし、その後に中国など需要国が調達先を切り替えるなど輸出が下振れしたため、政府は2017年に条件付での禁輸緩和に追い込まれた。他方、ニッケル鉱石については2020年から再び輸出禁止に動いた。
こうした『朝令暮改』的な政策変更は予見性低下により直接投資の足を引っ張ることが懸念されたが、現実には直接投資が拡大して足下の景気を下支えしている。これは、同国がニッケルの埋蔵量、生産量の両面で優位性が高く、代替的な調達先を得ることが難しかったことが影響している。さらに、ニッケルは近年電池材料として需要が急拡大しており、世界的なEV普及の動きも大きく後押ししている。さらに、政府は同国内でのニッケルの一次加工に加え、EVバッテリー、EV、バッテリーのリサイクルというエコシステムの構築という壮大な目標を描いている模様である。他方、鉱石の精製や精錬には大量の電力が必要となるが、足下の同国は一時エネルギーの6割を石炭が占めるなか、政府が掲げる温室効果ガスの排出量の大幅削減、そして2060年のカーボンニュートラル実現という目標のハードルは極めて高いなど画餅に帰す可能性に注意する必要もある。

こうしたなか、ジョコ・ウィドド大統領は来年6月からボーキサイト鉱石の輸出を禁止する方針を明らかにしており、先行きも銅鉱石や錫鉱石が段階的に禁輸されるほか、スケジュールが前倒しされる可能性もある。政府はニッケル同様に直接投資の拡大を期待している模様だが、ボーキサイトは2014年に禁輸に動いた際に中国が調達先を変更した結果、足下では埋蔵量、生産量ともにシェア面での優位性を失っている。さらに、脱炭素の流れを受けて石炭火力発電所の稼働が困難になるなか、先行きは大量の電力を要する精製、精錬産業そのものが困難になる可能性も予想される。
同国政府の朝令暮改を巡っては、昨年も石炭やパーム油について輸出が禁止されるも、その後に撤廃される動きがみられた。これらの措置は国際価格が急騰するなかで国内供給を優先する観点で実施された。当面は中国のゼロコロナ終了の動きが輸出を押し上げることが期待される一方、資源ナショナリズムを追い風にした朝令暮改が繰り返されれば、政策の予見性低下が輸出のみならず、投資活動などに幅広く悪影響を与える可能性はくすぶる。事実、2014年の未加工鉱石の禁輸措置では輸出に下押し圧力が掛かるなど、政策変更による副作用が顕在化する動きがみられた。その意味では、インドネシア政府による朝令暮改も含めた一挙一動を注視しつつ、その悪影響の極小化に向けた取り組みがこれまで以上に必要になっている。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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