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内外経済ウォッチ『アジア・新興国~マレーシアの政局は再び動き出すか~』(2022年10月号)

西濵 徹

マレーシア政界を巡っては、ナジブ元首相が関わる政府系ファンド(1MDB)を舞台にした巨額の汚職事件が大きなうねりを招いてきた。2018年の政権交代はこの問題がきっかけとなる一方、マハティール元政権は与党連合内の政局争いを受けて2年足らずで崩壊した。その後に与野党の合従連衡を経て誕生したムヒディン前政権も、与党連合内の政局争いを受けて1年半ほどで崩壊した。なお、その後は前政権と同じ与党連合の枠組を維持しつつ、ナジブ元政権下の与党(UMNO)のイスマイルサブリ氏が首相となる形で新政権が発足した。ただ、政権発足後も政局の混乱は続き、国王の調停でコロナ禍対応を理由に政局争いを一時休戦する異例の動きがみられた。結果、政権はコロナ禍対応に注力する環境を得ることが出来た。

UMNOではナジブ氏が影響力を有する上、イスマイルサブリ氏は首相ながら党内序列は3位に過ぎず発言力は大きくない。また、ナジブ氏は昨年陣頭指揮を執った地方選で圧勝し、党内での影響力は拡大した。しかし、昨年末に汚職事件を巡る控訴審では控訴が棄却されるとともに、一審判決が支持され禁錮12年と2.1億リンギの罰金刑が下され、禊を経た政界復帰シナリオが難しくなった。一方、イスマイルサブリ氏にとっては、コロナ禍からの景気回復が遅れる展開が続いており、総選挙を経た政権維持が難しくなるなか、選挙の先延ばしに動くとみられた。

図表1
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こうしたなか、連邦裁判所(最高裁)は8月、ナジブ氏による控訴を棄却するとともに、昨年末の二審判決を支持して禁錮12年と2.1億リンギの罰金刑とする判決を下し、ナジブ氏は即日収監された。この判決を受けてナジブ氏の有罪が確定するとともに、次期総選挙に出馬することが不可能となる上、ナジブ氏を巡っては今回の判決で有罪が確定した罪以外にも計35の罪で起訴されており、仮に有罪判決が続けば収監期間や罰金額が大幅に膨れ上がる可能性がある。他方、与党内ではナジブ氏の影響力が依然高いなか、今後は国王からの恩赦による釈放などを通じて政界復帰を模索する可能性は高いと見込まれる。

他方、足下の同国経済は経済活動の正常化に加え、国境再開なども重なり底入れの動きを強めている。こうしたなか、イスマイルサブリ氏は一転して景気の先行き不透明感を理由に総選挙の前倒しを模索している模様である。先行きの景気を巡っては、国内外双方で下押しに繋がる材料は山積している。仮にすぐ次期総選挙が実施されれば現政権及び与党連合の追い風となる材料は多い一方、その時期によっては一変する可能性も予想されるなど、神経戦の様相を強めると見込まれる。一方、野党ではマハティール元首相やアンワル元副首相が捲土重来を期すほか、与党連合内でもムヒディン前首相は意気軒高であるなど、与野党を問わず再び政局が激化する可能性もある。

図表2
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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